―― 今後、m17とTONE SIMの売り分けはどうしていくのでしょうか。
石田氏 トーンモバイルのユーザーは、基本的にSIMとは何かが分からない層です。SIMカードで何かするには、特殊な能力が必要だと思っています(笑)。iPhone向けのSIMカードも、分かる人には完全解に近いものですが、そうじゃない人もたくさんいます。端末をパッと買うだけでいいという方もいます。逆に、ユーザーが成長するに従って、iPhoneを使いたいというニーズが出てくることもあります。
そのニーズに応えるために、SIMを(トーンモバイルの端末からiPhoneに)挿し替えると、「iPhoneにしますか?」とアラートが出るようにしていきます。SIMカードは基本的に共通で、番号で管理しているだけですから、iPhoneに挿せばTONE SIM(for iPhone)と同じようにすることができます。これは、ゴールデンウイーク明けから対応していくつもりです※。
―― その場合、料金はiPhone用に上がるのでしょうか?
石田氏 そうですね。挿し替えると、MDMを利用する分の料金は上がることになります。
―― 比率はどうなっていくのでしょうか。
石田氏 まずは1:1まで、すぐに持っていきたいですね。売りやすさや市場性でいえば、SIMの方が上です。退会率(解約率)が分からないとマーケティングコストも見えてきませんが、その辺も含めて、早期にやっていきたいと思います。知ってもらうためのコストが一番高いので、そこがどのくらいになるかというところですね。
―― 直近の状況を伺いたいのですが、業績はいかがでしたか。
石田氏 マーケティングコストを除けば、今期に入ったぐらいのところで黒字化しそうです。そこ(マーケティングコスト)まで含めた黒字化も、今期内に達成すると見ています。
―― 春商戦の手応えを教えてください。
石田氏 春商戦は、読みがピッタリでした。退会率の読みもほぼピッタリで、そこもよかったです。最初にCMを打ったのがちょうど2年前だったので、退会率が上ってしまうことを心配していましたが、そこまでは出なかったですね。通常が1%を切るぐらいですが、特殊要因も含めて1.5%ぐらいでした。
―― サブブランドの影響はいかがでしょうか。
石田氏 あることはありますが、違うところに来ています。子ども用のスマホだと、オーガニックに検索でも上ってきているので、すごくありがたいですね。
垂直統合を志向していたトーンモバイルだが、日本のスマートフォン市場はiPhoneのシェアが特に高く、出荷台数ベースでも半数近くを占める。トーンモバイルが狙っている若年層は、さらにこの比率が高い。ターゲットを子どもとシニアに定めた以上、SIMカードの単体提供をするのは自然な流れだ。アプリとMDMを組み合わせて、子ども向けサービスを実現したのも、トーンモバイルの色が強く出ている点といえるだろう。
気になるのは、子どもにiPhoneを持たせるために、親がSIMカードを単体で買うのかというところだ。インタビューの中で石田氏も語っていたように、日本では、まだまだSIMカードを単体で購入する人は少なく、MVNOが伸びるにつれ、端末とのセット販売比率も上がっている。割賦など、購入のハードルを下げる施策も含め、何らかの対応が必要になってくるのかもしれない。
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