対するKDDIは、「通信の付加価値にライフデザインを加えて、総合ARPAの上昇を目指していく」(高橋誠社長)方針だ。通信事業者からライフデザイン企業への“変革”を強調していた田中社長時代とは異なり、高橋氏は「通信とライフデザインの融合」をキャッチコピーに掲げ、その両方を重視していく方針だ。
中心になるのが、「お客さまにひもづいたIDと、お客さまの財布でもあるau WALLET」(高橋氏)だ。また、その財布で支払う先となる物販事業も強化。同社の通販サイトである「Wowma!」も強化していく。au WALLETやauかんたん決済などの決済サービスを軸にしたau経済圏は、流通総額が1.89兆円に拡大。「今期で2兆円をクリアしようというのが当初の目標だったが、順調に伸びているため、今期予想は2.46兆円に拡大した」と、もくろみを上回る伸びを示す。売上高も5600億円に増加。2019年度は7300億円を目指す。
KDDIもドコモと同様、営業利益は9628億円と増益だが、内訳を見ると、モバイル通信料収入の増益はわずか15億円にとどまっており、付加価値ARPA収入の195億円増がそれを補っている格好だ。通信はこの先も軸にはなるが、大きな伸びは期待できず、成長をライフデザイン側に求めている構図といえるだろう。
ただし、KDDIは屋台骨になる通信が、まだ回復の途上にある。先に挙げたドコモや後述するソフトバンクとはやや状況が異なり、2018年度は通信事業の“止血”に追われていたようにも見える。auブランドにMVNOのユーザー数を加えた「モバイルID数」は、2646万9000に拡大したが、内訳はauが2469万1000と、前年同期の2514万2000から減少している。UQ mobileやBIGLOBEなど、傘下のMVNOがこの現象を補った格好だ。
サブブランドやMVNOへの流出を防ぐため、2017年7月には「auピタットプラン」「auフラットプラン」を導入。この効果が徐々に出ており、解約率は「第2四半期から徐々に改善トレンドが出てきており、第4四半期では前年同期比で大きく改善している」(高橋氏)という状況になった。傘下のMVNOと新料金プランの2本立てで、ユーザーを引き留めている状況といえる。
ただ、auブランドの減少が止まるのは、もう少し先になりそうだ。「(auと傘下のMVNOを)合算してプラスをキープしていければいいと思っている」と語る高橋氏だが、MVNOにはauのサービスが提供されておらず、先に挙げたau経済圏を拡大できない問題も課題といえるだろう。
今後はサービスのオープン化も必要になってくるはずだ。高橋氏は「MVNOの上に、われわれのライフデザインの経済圏を乗せていくことは、当然考えていかなければならない」と語っていたが、具体案はまだ示されていない。「検討は進めている」というだけに、高橋体制下での新たな展開にも注目しておきたい。
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