SoftBank Vision Fundを設立し、投資事業を拡大しているソフトバンクも、大きな枠組みとして見ると、ドコモやKDDIに戦略は近い。傘下の米Sprintは米T-Mobileとの合併に合意し、米国当局からの承認を得られれば出資比率が下がる見通しだが、通信事業を担うソフトバンクだけは「何でもありではない」(ソフトバンクグループの孫正義社長兼CEO)と重視している。
孫氏は「日本は根源の国。その限られた地域への造詣が深く、組織としての強みを持っていて、ヤフーもあるし、他にもたくさんのグループ会社がある」と、その理由を語る。通信事業を担うソフトバンクは、ソフトバンクグループの“稼ぎ頭”でもある。2017年度の営業利益は6830億円。2016年度の7196億円と比べると減少してはいるが、これは「顧客獲得で経営基盤をしっかりしようと、先行投資や販売プロモーションをした」ためだ。
実際、その先行投資の効果は純増数に表れている。2017年度のスマートフォン純増数は169万に拡大。内訳の実数は公開されていないが、グラフの比率を見ると、ソフトバンクの割合が上がり、逆にY!mobileが減少しているように見える。50GBの「ウルトラギガモンスター」や、最大2000円の割引を受けられる「みんな家族割」を導入したことが功を奏した格好だ。ソフトバンクとY!mobileを併売する店舗を増やしているのも、プラスに働いていると見ていいだろう。
MVNOに対抗するため、料金を抑えたY!mobileよりも「ソフトバンクの方がサービス設計上、より利益が出る」(孫氏)。孫氏が「新年度以降は増益すると自信を持っている」と語るのはそのためだ。一方で、増益に転じたとしても、その伸び率は低くなりそうだ。ただ、孫氏は「ソフトバンクは単なるキャッシュカウ(稼ぎ頭のビジネス)で成長はないのか」という見方を否定する。
ここで鍵となるのが、先に挙げたSoftBank Vision Fundだ。このファンドで投資した企業と日本法人を作り、その受け皿をソフトバンクにするというのが孫氏の描く青写真といえる。孫氏は「(SoftBank Vision Fundで投資した)30数社をわれわれは日本に持ってくる。そのときのジョイントベンチャーのパートナーは、ソフトバンクとヤフーになる」と語る。
投資先の海外有力パートナーを日本に上陸させ、ソフトバンクとのシナジー効果を出すというのが、ソフトバンクの成長戦略だ。通信事業の上に乗る新規領域に活路を見いだしている点は共通しているが、それをゼロから作ったり、国内のパートナーと協業したりする他社とはアプローチの仕方が少々異なる。孫氏の“群戦略”は、投資事業に積極的なソフトバンクらしい戦略ともいえそうだ。
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