mineoの「通信の最適化」は何が問題なのか?(2/2 ページ)

» 2018年05月15日 13時00分 公開
[田中聡ITmedia]
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何が問題なのか

 今回の騒動は、「事前の告知なしで通信の最適化を行ったことで、不信感を抱いたユーザーがいたこと」「通信の秘密に抵触し、通信の改ざんにもつながる可能性があること」という大きく2つの問題点をはらんでいる。

 前者については、自分の知らないところで通信の内容がいじられているのは、心地よいものではない。ただ、通信品質の改善につながるというメリットがあるのも事実なので、今後も丁寧に説明をしてユーザーの信頼回復に努めるしかない。ブログだけでなく、mineo公式サイトやプレスリリースなど、より多くのユーザーが分かる場所での説明も求められる。

 後者の通信の秘密については、議論の余地が残されている。通信の最適化は、電気通信事業法第4条の「通信の秘密」に抵触するが、ユーザーが個別に同意している場合や、同意しない場合でも「正当業務行為」と認められた場合は、違法性が阻却される。mineoの場合は現在、ユーザーに同意を取っていないため、通信の最適化が「正当業務行為なのか」が論点だ。

mineo 通信の最適化を行うには、ユーザーの同意を取るか、正当業務行為に該当する必要がある。図版は「帯域制御ガイドラインのポイント」から

 日本インターネットプロバイダー協会や電気通信事業者協会などが策定した「帯域制御の運用基準に関するガイドライン(※PDF)」では、帯域制御の正当業務行為が認められるケースとして、P2Pファイル交換ソフトでネットワークを過度に占有する場合、一部のヘビーユーザーが大量に通信をすることで一般ユーザーの通信品質に影響が出る場合、災害時にユーザーの利用を一律に制御する場合……を挙げている。

 これらのケースに照らし合わせると、mineoの件が正当業務行為だと言うのは厳しいようにも思える。単に回線が混んでいるだけなら、「帯域を増強すればいいのでは?」という話になるからだ。また、当初は土曜日と日曜日には通信の最適化を実施していたが、途中から土日は最適化を適用しないよう変更したことを5月8日にスタッフブログへ追記している。ケイ・オプティコムの中でも、正当業務行為のポリシーが定まっていないように見受けられる。

mineo 土日は通信の最適化を行わないよう変更している

 一方、通信の最適化は「BIGLOBEモバイル」や「nuroモバイル」など、他の一部事業者も実施しており、mineoだけの問題ではなく、業界全体で考えるべき問題でもある。現行のルールやユーザーの納得感を考えると、通信の最適化については個別に同意を取り、最適化を解除する選択肢を用意するのが妥当ではないだろうか。ちなみにBIGLOBEモバイルとnuroモバイルでは、最適化を解除することはできる(nuroモバイルの場合、最適化を解除できるのは2017年9月30日以前にサービスを利用開始したユーザーに限られる※2018年5月15日20時5分追記)。

mineo BIGLOBEモバイルでは、APN設定を変更することで、通信の最適化を解除できる

 ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏は、4月中旬に実施したインタビューで、mineoの一番大きな課題は「混雑時の通信品質」と話していた。また業績については「2018年に黒字化して、累損(累積損失)が解消するという計画がある」とも話していた。今回導入した通信の最適化は、通信品質を解決し、黒字化達成のために必要な手段だと考えているのだろう。逆に、そこまでしなければ、MVNOで利益をあげるのが難しいのか……とも感じられた。

 スタッフブログでは5月7日に公開した「通信の最適化の実施内容について」の記事に、「告知方法、通信の最適化の仕様に関すること、企業姿勢など、種々の課題について網羅的に対策の検討を進めております。来週(5月14日週)中にはマイネ王だけでなくmineo公式サイトでも公表できるものと思います」と追記している。近日中に何らか発表されるものと思われるので、続報を待ちたい。

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