ケイ・オプティコムが提供する格安SIM「mineo」が、2018年4月に100万契約を突破した。100万契約は本来、2018年3月までの達成を見込んでいたそうだが、順調に成長している。第三者機関の調査では、mineoが最も満足度が高いサービスという結果も出ており、名実ともに“優良格安SIM”への階段を上りつつある。
MVNOのサービスは、なかなか黒字化をするのが難しい業態ではあるが、mineoは2018年の黒字化が見えてきたという。mineo好調の要因はどこにあるのか。そして課題は? モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏に聞いた。
―― 4月10日に100万回線を突破しました。まずは手応えを教えてください。
上田氏 本当は年度末で達成したかったのですが、少し遅れてしまいました。(サービス開始から)3年10カ月で達成できたことは、ファンの皆さまのおかげだと思っています。100万回線がゴールではなく、今後の150万、200万を見据えて成長していきたいです。
―― 法人契約やプリペイドも含んでいるのでしょうか。
上田氏 法人は5%未満で、プリペイドは入れていません。
―― au回線とドコモ回線の比率はいかがですか?
上田氏 au回線が6割弱、ドコモ回線が4割強です。最近の傾向として、ドコモ回線のプランを選ぶ方が多いですね。
―― その要因はどこにあるとお考えですか?
上田氏 そもそもドコモのユーザーが多く、お持ちの端末がそのまま使えること、そしてテザリングが使えることですね。
―― 月額900円を半年間割り引くなど、かなりアグレッシブなキャンペーンを打っています。そこまでしないと、契約獲得は厳しいのでしょうか。
上田氏 常時CMやキャンペーンを打つのは、体力的に難しいところがあります。新生活が始まる春は、生活を見直すタイミングでもあり、格安スマホを検討する方が増えます。中高生のファーストスマホというところも意識しています。あとは、iPhoneが発売される時期も、キャンペーンを打つべきタイミングかなと。
2017年から2018年にかけて、MVNOの市場自体は伸びていますが、伸び方が緩やかになっています。特に2017年度の下期ぐらいから、そういう傾向が続いていますが、格安スマホに乗り換えたいという人は、まだ一定層はいらっしゃいます。その中で、選択肢にmineoを思い浮かべないと来てもらえません。いかに選択しに入れてもらえるかを意識しています。
―― 伸びが緩やかになったのは、mineoも同様だったのでしょうか。
上田氏 もともと計画していた数よりも契約数が少なかったのは事実で、それが年度末に100万回線を超えられなかった要因になりました。
―― UQ mobileやY!mobileなどのサブブランドが勢力を伸ばした影響もあったのでしょうか。
上田氏 サブブランドに加え、MNOさんが低料金プランを出したことの影響もありました。
―― その対抗策の1つとしてキャンペーンを打っていると。しかしキャンペーンで入っても、割引期間が終わったら解約してしまう人も多いのではないでしょうか。
上田氏 mineoでは2018年1月からキャンペーンを打ち、葵わかなさんのCMも1〜3月に打ちました。そこで知っていただいて、来ていただいたお客さんもいらっしゃいます。キャンペーン終了後、キャンペーンがきっかけで入った人が継続するのか解約するのかを見たところ、思ったほどたくさん解約していないことが分かりました。
きっかけがキャンペーンでも、満足していただけないと、やめる要因になります。KPI(業績目標達成の指標)となるお客さま満足度はきっちり取って、プラスアルファの満足を感じていただけるかが、継続いただける上で重要になります。最近はそれだけでなく、他人への推奨度を示すNPSもウォッチしています。
―― 確かに、MMD研究所が実施している格安SIMの調査では、mineoは顧客満足度調査で1位を獲得しました(関連記事)。その要因はどこにあるとお考えですか?
上田氏 一番大きいのが、シンプルで分かりやすい料金体系だと思います。キャリアだと2年縛りや料金明細の分かりにくさがありますが、mineoは2年縛りはしません。あとは、これまで使っていた端末がそのまま使えることや、(ユーザーのパケットをシェアできるフリータンクなど)パケットを有効活用できるサービスも支持されています。
―― コミュニティーサイトの「マイネ王」も活発です。
上田氏 弊社には、情報を開示してオープンにするという企業姿勢があります。(それを体現した)マイネ王ではファンも含めたコミュニティーができています。mineoを使い始める前は、なかなかその良さが分からなかったけど、使い始めるとマイネ王に夢中になって、マイネ王があるから使い続けようという方もいらっしゃいます。自ら発信したい、ユーザーやスタッフとコミュニケーションをしたいという方が多いんですね。
あとは「応援したい」という声もよく聞きます。100万契約が達成間近の時に、「もうちょっとで100万なら、今日99万いくつなのかを表してほしい。応援するよ」という要望が出ました。ユーザーと事業者というよりは、「自分たちもmineoの一部なんだ」という感覚のようです。
―― もうちょっとで100万なら、自分が追加で契約するという人もいたり……?
上田氏 はい(笑)。100万達成を早めるために「+何回線契約しました」という方もいらっしゃいました。
―― それはすごいですね。Y!mobileやUQ mobileは、キャリアから乗り換える格安SIM初心者の方が多いので、満足度が相対的に低いという話も聞きましたが(関連記事)、mineoは格安SIMのメリットとデメリットをしっかり理解した、リテラシーの高い人が多いという印象があります。
上田氏 Y!mobileとUQ mobileは、CMを見たから契約したという人が多いようです。mineoもきっかけはCMかもしれないけど、自分で検索したり聞いたりして、それなりに情報を収集してから契約している人が多いですね。
―― 最近のユーザー属性も教えてください。
上田氏 一番多いのは30〜40代男性で40%ほどです。男女比は7:3ほどですが、女性ユーザーがじわじわと増えています。最近は20代の若年層も増えています。家族で乗り換える方も増えていますね。30〜40代の男性が入って、良いと思ったから奥さんや子ども、自分の親を巻き込んで……という形で広がっています。
―― ARPUはどれぐらいでしょうか。
上田氏 ARPUは公表していません。社内の指標とはにらめっこしていますが……。データARPUと音声ARPU、どこをどう伸ばすかは常に見ています。
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