大手キャリア販売店における端末の“単品販売” 実態は?(1/2 ページ)

» 2021年04月26日 20時50分 公開
[井上翔ITmedia]

 総務省は4月26日、「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」の合同会合において、携帯電話端末販売に関する「覆面調査」の結果の概要を発表した。携帯電話の通信(回線)契約とひも付かない端末販売について、応じない携帯電話販売店が少なからず存在する実態があったという。

 この記事では、調査に至るまでの経緯と、調査結果について解説する。

調査の経緯

 2019年10月に改正された電気通信事業法では、端末販売における利益提供(値引き)を以下のように規制している。

  • 通信契約とひも付く(セット)販売:税別2万円まで
  • 端末単品販売:自由(規制なし)

 ただし、端末の販売条件を単品販売時と“同一”とする場合に限り、セット販売時でも値引き制限をなくす例外規定も設けられている。大手キャリアが提供する現行の端末購入サポートプログラム(※1)は、この例外規定を活用して提供されている。

(※1)NTTドコモの「スマホおかえしプログラム」、au(KDDIと沖縄セルラー電話)の「かえトクプログラム」、ソフトバンクの「トクするサポート+」

 つまり大手キャリアが端末購入サポートプログラムを“合法的に”提供するには、その販売代理店(キャリアショップ、家電量販店、併売店)が端末の単品販売に応じる必要がある

規律 携帯電話の通信契約と端末をひも付けて販売する場合は、原則として割引が税別2万円までに制限される。ただし、端末を単品販売する場合と条件をそろえる場合に限り、この制限によらず値引き(購入補助)を行えるようになっている(総務省資料より:PDF形式)
規律 NTTドコモ、au、ソフトバンクが提供している現行の端末購入サポートプログラム。いずれも回線契約を条件としていないため、税別2万円を超える補助が可能となっている(総務省資料より:PDF形式)

 しかし、端末購入サポートプログラムを巡って、以下の大きく2点が問題として指摘されている。

  • 通信契約の有無によってサポートプログラムの提供条件が異なる
  • 端末の単品販売に応じない販売代理店が存在する

 これを受けて、総務省は2020年5月29日、ドコモ、au、ソフトバンクに対して「割賦により端末を販売する際の販売手法に係る要請」を行い、サポートプログラムの提供条件に関する周知の再徹底と、状況報告を求めた。

要請 総務省が2020年5月29日に行った要請の概要(総務省資料より:PDF形式)

 同省は、2020年10月27日に公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」において、上記の問題点が解消したかどうか確認するために覆面調査を実施することを盛り込んでいた。今回、結果の概要が公表された覆面調査は、プランに基づく取り組みということになる。

調査の概要と結果

 総務省による覆面調査は、2020年12月から2021年2月にかけて行われた。結果、対象店舗のうち販売拒否(端末購入サポートプログラムの提供拒否を含む)が確認された店舗の割合は以下の通りだったという(調査した店舗の実数は公表されていない)。

  • NTTドコモ:22.2%
  • KDDI(au):29.9%
  • ソフトバンク:9.3%

 この結果を受けて、同省は3社に端末販売拒否事案の有無について調査を依頼した結果、拒否した事実を確認できた店舗数の割合(※2)は以下の通りだったという。なお、一部のキャリアは現在も調査を継続しているため、比率は変わる可能性もある。

  • NTTドコモ:3.3%(2482店舗中)
  • KDDI(au):1.3%(2547店舗中)
  • ソフトバンク:2.3%(2641店舗中)

(※2)同時に3人以上の契約手続きを受け付けられる店舗を分母として算定

 同省が覆面調査を行った店の実数(分母)が分からないため、比率の乖離(かいり)について評価することは難しいが、端末の単品販売を断る代理店が少なからず存在し、大手キャリアの指導(統制)が不十分であることは間違いない。

調査結果 総務省の覆面調査の結果と、キャリアの報告には比率面で乖離が見られる。ただし、総務省側の調査では調査を実施した店舗数が分からないことには注意したい(総務省資料より:PDF形式)

 覆面調査では、主に以下のような「理由」で販売を断っていたという(要約して掲載)。

  • キャリアの方針で、他店でも購入できない
  • 店舗の方針で受け付けできない
  • 端末単品での販売は物理的に不可能である
  • 店舗ではそのようなサービスはやっていない
  • 量販店では受け付けておらず、できるとしてもキャリアショップのみ

 現行の法令を踏まえると、いずれも明確な誤案内である。端末単品購入者に対する端末購入サポートプログラムの提供を拒否した事例では、主に以下のような説明があったという(要約して掲載)。

  • 回線契約をした人を対象としたプログラムである
  • 店舗ルールで分割払いでの購入を受け付けていない(故にサポートプログラムにも加入できない)
  • 端末購入だけの分割購入は、上長に確認した上でできない
  • (友人は単品購入できたと言ったら)ショップの独自キャンペーンではないか。自分の店舗ではできない
  • 端末の単品購入はアクセサリーと同じ扱いとなるため、分割払いを利用できない

 これらは全て、各キャリアのサポートプログラムの条件と矛盾する説明である。

総務省の説明 販売拒否時の店員の説明の例。「iPhoneはAppleから直接買った方が安い」という理由で断った事例もあるようだ(総務省資料より:PDF形式)

 同省が代理店を監督する大手キャリアにヒアリングを行った所、誤案内の原因としてドコモは「スタッフの誤認」と「受付業務繁忙による他店舗案内」を、KDDIとソフトバンクは「スタッフの知識不足」を挙げたという。ただ、SNSでは、ユーザーから以下のような声も寄せられている。

  • 「セット購入と単品購入で端末の在庫を分けていて、単品購入用の在庫がない」と言われた
  • 機種変更(または新規契約)で予約して、店頭で単品購入(通信契約とのひも付けを行わない旨)を申し出たら「それはできない」と断られた

 これらの説明は、果たして「誤認」や「知識不足」によるものなのだろうか……?

キャリアの言い分 覆面調査の結果に対する3社の説明
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