―― 販路を拡大した成果もあると思いますが、一方で、MNO4社の中で、唯一ドコモにだけ端末を供給できていません。これについては、どうお考えですか。
河野氏 仮に3年前に参入した当時、キャリアからオファーをもらっていたとしても、キャリアをガッカリさせてしまっていたと思います。日本のお客さまは非常に細かい。これはコンシューマーもそうですが、B2Bでもそうです。製品の企画から開発、製造、流通、納品、販売、アフターサービスに至るまで、どこか1つでも50点ではダメ。全てを80点、90点以上に底上げしていくことが求められます。例えば海外と何が違うかと言えば、箱つぶれがあります。日本では、箱がつぶれていると、基本的には納品できません。海外ではOKですが、日本でははねられる。その体制を3年前に確立できていたかというと、できていませんでした。
これは、顧客のニーズをつかめていなかったということです。バリューチェーンの最初から最後まで90点を取り続けていないと受け入れてもらえない市場であれば、これを経営課題として解決し、100点に近いバリューチェーンを構築する。開発、製造、ロジスティクスやアフターサービスは、日々改善を続けてきました。コールセンターもメールでやってほしいという声があり、メールの受付も開始しました。今はチャットも導入し、今後はAIのbotも入れていきます。今は日本市場にマッチした、期待を裏切らない体制を確立できています。
質問に話を戻すと、ドコモに関しては、われわれとしての準備はできました。扉は開かれています。後は、ドコモと折衝を続けていきながら、ベストなタイミングで発表していただければと思っています。
―― 河野さんは日本生まれですし、そういった細かさは分かっていたと思いますが、それでもやはり大変だったのでしょうか。
河野氏 私は生まれも育ちも日本で、大学や一部の仕事でアメリカにいたこともあるので、グローバルな感覚はある程度持っていると自負しています。英語であれば、通訳を介さず意思疎通もできます。
ところが、本社の人たちに経営戦略として話をすると、「それは本当なのか」と信じてもらえないことがあります。当然ですよね。例えば、エアコンは、日本だと静かであることが当然のように求められますが、サウジアラビアだとバキバキ音が鳴る。自分も「マジかよ」と思いました(笑)。ただ、仮に現地の人間、しかも英語でしかコミュニケーションできない人間が、本社が日本の会社に「音を出すエアコンを作ってくれ」と言っても、最初は「は?」と思いますよね? それと同じで、僕が「おサイフケータイを作ってくれ」と言っても、「20%しか使っていない」となるんだと思います。
われわれはグローバルメーカーではありますが、目指しているのは「グローバルからローカルへ」です。どう説得するかは非常に泥臭い交渉や駆け引きが必要ですが、海外のものをそのまま持ってきても売れないというデータはあります。より日本企業にならなければいけない。そういったメッセージを込める意味で、われわれはローカルな日本企業になっていくというメッセージをあえて打ち出しています。
―― スマートフォンに加え、OPPO Watchやワイヤレスイヤフォンなどのアクセサリーも広げています。こちらの反響はいかがでしょうか。
河野氏 ニーズの移り変わりが面白いですね。昨年、「OPPO Watch」を発売しましたが、反応はイマイチでした。ところが、4月に出した「OPPO Band Style」は、血中酸素濃度が分かることもあり、飛ぶように売れています。これが何を示しているかというと、やはり真のニーズをきちんと捉えていないとダメということです。値段だけで勝負してもダメですが、機能だけで勝負してもダメです。すべてをちょうどいいところに落とし込まないと、特に新参者のブランドは見向きもされません。
―― そういう意味では、改善サイクルが非常に速いように見えます。
河野氏 PDCAサイクルをどう回すのかということは、いろいろな経営者が言っていますが、OPPOの本分という理念は、もっと上にある概念だと思っています。自らの責任をどう全うするかを心に刻んでおけば、PDCAサイクルなんていらない。自分の本分を社員一人一人が認識することが、スピード感につながっていると思います。
―― 最後に、目標を教えてください。シェア何%という数字はないと伺いましたが、何か別の数値的な目標はありますか。
河野氏 ないです。ないですが、BCNでは3四半期連続1位で、顧客満足度も非常に高かった。AndroidのSIMフリースマートフォンというカテゴリーで1位になれたということは、少なくとも日本のスマホ市場で10%の枠のお客さまのお腹を満たせたということです。では、残りの90%をどう満たすのか。90%の方に「OPPOっていいメーカーだな」と言われるよう、これからも語りかけていきます。
SIMロックフリーのAndroidスマートフォンでシェア1位になったOPPOだが、auやソフトバンクに端末を供給するなど、キャリアでの取り扱いも徐々に増えている。中でもReno Aシリーズは評価が高く、日本のユーザーの使い方にもマッチしている。最新モデルのReno5 Aも完成度高く、価格もお手頃なため人気が出ることは間違いないだろう。エントリーモデルとして、A54 5GもサブブランドやMVNOで売れやすい端末といえる。
一方で、その人気は、まだSIMフリー市場の枠を出ていない印象も受ける。KDDIやソフトバンクは2020年から取り扱いを始めているが、キャリアのラインアップの中で明確なポジションが築けていないのはその一因と見ていいだろう。ドコモに販路を広げるだけでなく、目玉となる端末を各キャリアに供給するなど、次の一手が必要になりそうだ。
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