今回発表された新モデルを見渡すと、らくらくスマートフォンやあんしんスマホだけではなく、スタンダード(ミドルレンジ)モデルもシニア層を意識した機能を盛り込んでいる。
例えばFCNT製の「arrows We F-51B」では、文字やアイコンを大きくした「シンプルモード」など、らくらくスマートフォンに由来の機能を幾つか搭載している。シャープ製の「AQUOS sense6 SH-54B」にも、文字やアイコンを大きく表示する「かんたんモード」を備えている。
サムスン電子製の「Galaxy A22 5G SC-56B」では、かんたんモードに加えて、使い方を無料で電話相談できる「Galaxy使い方相談」を搭載した。
スペック重視ならAQUOS sense6を、丈夫さを求める人はarrows Weを、そして価格の安さやシンプルさを求める人にはGalaxy A22 5Gを――といった具合に、手頃な価格の中でも選択肢が充実している。シニアユーザーとの親和性も高いことが魅力といえる。
ドコモがスタンダードモデルを拡充する理由はいくつか考えられる。そのうち、もっとも最も大きいのはFOMA(3G)から5Gへの移行を促進したいという事情だろう。
年代別に見ると、シニア層はドコモにとって契約者の“ボリュームゾーン”である。現時点でもFOMA契約でケータイやスマホを使い続けている人は少なからずいると思われる。2026年3月31日に迎えるFOMAのサービス終了までに、シニア層のスマホへの移行を強力に推進しなければならないという事情を抱えているのだ。
今回ドコモが発表した5G対応スタンダードスマホは、先述の通りシニア層を意識した機能が盛り込まれている。しかも、税別で2万円を切る手頃なモデルもある。これをトリガーとして、FOMAユーザーの「巻き取り」を促す流れが本格化すると見られる。
2021年6月末時点において、モジュールを除くFOMAの契約数は約827万9000回線、FOMAケータイのネット接続サービス「iモード」の契約数は約381万6000件となっている。同時期における5G契約数は535万1000件で、iモードの契約数を“逆転”したとはいえ、かなりのユーザーがFOMAにとどまり続けていることは間違いない。
FOMAとiモードのサービス終了は、他キャリアの3Gサービスの終了よりも遅い(※)。とはいえ、巻き取りは早く進めるに越したことはない。
(※)auは2022年4月30日、ソフトバンク(Y!mobileを含む)は2024年1月31日をもって終了予定
らくらくスマートフォンには、根強い固定ユーザーがいる。しかし、らくらくスマートフォンではリーチできないFOMAユーザーをすくい取る意味でも、あんしんスマホの導入は合理的な判断といえる。
らくらくスマートフォンとあんしんスマホに加えて、先述のスタンダードスマホ3機種が加わることで、「一目でシニア向けと分かるスマホはちょっと……」という人にも選択肢が広がる。
今回のドコモの新モデルのラインアップからは、3G契約からの移行を活発化する狙いが透けて見える。その背景には、安価な5Gスマホを製造できるようになったという要因がある。いよいよ5Gが本格的な普及期を迎えつつあることを象徴しているといえるのかもしれない。
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