中国政府が“ネットカフェPC”に求めるスペックとは山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2007年07月23日 11時00分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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これはびっくり中国ローカルのネットカフェ事情。“北の国”にもネットカフェですって

 中国のポータルページには「ネットカフェ」コンテンツがわざわざカテゴリーとして用意されている。そこでは、新たに発表されたネットカフェガイドラインや、ネットカフェ経営のQ&A、ネットカフェにまつわる事件、ネットカフェ向けPCの新製品紹介などが掲載されている。中国全土のネットカフェ訪問リポートという記事も頻繁に掲載されていて、「今回は上海のネットカフェに行きました。次回は大連のネットカフェに行ってきます」といった感じで各地の店が紹介される。筆者は、中国全土どこのネットカフェもそう変わらないように感じているので、「結局同じじゃないの」と思えるのだが、「ぶらりネットカフェの旅」的なコンテンツは国を問わず人気があるようだ。ときには、ベトナムや韓国、日本など近隣諸国のネットカフェを取材することもあり、そのときは大々的に掲載される。

 なんと、中国の隣国「北朝鮮」のネットカフェだって興味の対象となる。中国語版百度で「網バ 朝鮮」(「網バ」は「wangba」と入力してから中国語表記に変換する)と入力して画像検索をかければ、北朝鮮のネットカフェ潜入リポートと思われる画像が大量に表示される。外国メディアが報じた記事の引用が多いようだが、一部には北朝鮮まで旅行したついでにネットカフェに潜入した中国人による報告もあるようだ。

 2007年5月には、中国のネットカフェ関連著名企業による「中国著名ネットカフェフォーラム」が開催され、ネットカフェに関わる多くのメディアがこのイベントを詳細に紹介した。このフォーラムでは著名ネットカフェチェーン企業のトップが、「私はいかにしてビジネスを成功させたかを」それぞれ熱く語っているが、その何人かは「利用料金をひたすら安くして競合他社に勝つというのではなく、少し高くても、いや、むしろ、かなり高くてもいいから、大画面ディスプレイを用意したり、コンシューマーゲームが快適に遊べるといった付加価値をつけることによって、ビジネスが成功した」と口をそろえて訴えていたのが印象的だった。これからのネットカフェは、ひたすらコストを追求する激安店と、高付加価値をつける高級店の両極端になるかもしれない。

 フォーラムでは、ネットカフェを展開する企業だけでなく、ネットカフェPC向けの周辺機器やPCパーツでシェアを取った会社が、ネットカフェ市場に向けた製品開発についてスピーチを行っている。ネットカフェPCが重要なポジションにある中国ならではの現象といえるだろう。

中国人も気になる日本のマンガ喫茶事情

 筆者は中国のメディアで、この連載とは逆の「日本のIT事情を中国のIT系のWEBメディアに紹介する」連載を書いている。その記事で読者の反応が最もすごかったのが、日本のネットカフェ、つまりマンガ喫茶の紹介記事だった。ほかの日本IT事情紹介記事では「だからどうした!」といったものや「日本人は金持ち、中国人は貧しいから仕方がないんだ!」という、逆ギレぎみの内容で埋め尽くされがちのコメント欄も、この記事だけは、日本のネットカフェを褒めたたえ、中国のネットカフェを嘆くコメントが多かった。

 寄せられたコメントには「日本のネットカフェはキレイだ。それに比べて中国のネットカフェはあまりにタバコ臭くて汚い」「日本のマンガが見られるのはうらやましい」というものが多かった。なかには「1時間に数百円なんて高すぎる!」というコメントもあったが、その意見には「給料が日本人と中国人とではぜんぜん違うんだぞ」とフォローが入っている。

タバコ臭くて汚い、と自国民に言われてしまった中国のネットカフェ。どことなく「集会場」という雰囲気があるのは否めない

 総じて、「日本のマンガが読み放題」に中国のユーザーは魅力を感じているようだ。店の中を見ただけで分かるが、中国のネットカフェ利用者の平均年齢は、日本のマンガ喫茶より低い。中国の若い世代は日本の漫画にも親しんでいるので、そういった意味でも日本のマンガ喫茶をうらやむ声が多くなる。中国のネットカフェでも、ジュースやコーヒー、ときにコーンポタージュまで飲み放題なんていうサービスが紹介されているが、これを評価する中国人のコメントはなかった。

 日本のネットカフェ事情に興味を持っている読者の要望に応えるため、中国のIT系メディアではネットカフェで寝泊りし日雇い労働を行う、いわゆる「ネットカフェ難民」事情も紹介している。これもネットカフェがITに興味を持つ中国人にとってとても興味深い内容だからだろう。

 自分で日本のIT事情を紹介し、中国で紹介される日本のITニュースを見ていると、中国人で日本のPC事情に興味を持つ人は少数派だが、日本のネットカフェの事情に興味を持つ人はかなりいる。中国人の若者の知り合いがいるなら、日中のネットカフェについて熱く語り合うことができるだろう。

 そんな彼らが利用している中国のネットカフェがいかなるものか。筆者がネットカフェに“じっくり”と潜入したときの話を近いうちに紹介したい。

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