液晶ディスプレイの動画表示性能を高めるには、いわゆる“動画ブレ”の低減が高いハードルになる。ここ数年で応答速度はかなり高速化され、オーバードライブ回路の採用例も増えてきたが、決定打にはなっていない。液晶ディスプレイの表示は「ホールド型」(次の画面が描かれるまで前の画面を表示し続ける)という仕組み上、どんなに応答速度を速めたとしても、人間の目では動画ブレを感じやすいのだ。
動画ブレを低減する機能の次の一手としては、家電の液晶テレビで既に多くの採用実績がある「倍速駆動」と「倍速補間」が注目されている。従来の液晶ディスプレイは60Hzのリフレッシュレートで画面を描画(60分の1秒ごとに画面を描き換え)していたが、これを120Hzに高速化したのが倍速駆動だ。画面のフレームレートにいい換えると、60fpsを120fpsに倍増させることを意味する。もう1つの倍速補間は、60fpsの映像で前後フレームの差分を計算して新しく中間フレームを作って挿入し、120fpsの映像として表示する機能だ。倍速駆動と倍速補間によって、内容が異なる1画面(1フレーム)が2倍の速さで切り替わるため、動画ブレが減ってより滑らかに表示される。
前置きが長くなったが、今回レビューする三菱電機の「RDT232WM-Z(BK)」は、PC用の液晶ディスプレイとして初めて倍速駆動と倍速補間の両方に対応したモデルだ(国内販売のスタンドアロン型PC用液晶ディスプレイにおいて業界初。2010年5月18日現在、三菱電機調べ)。
はじめに基本的なスペックや外観をまとめておこう。TN方式の液晶パネルを採用し、画面サイズは23型ワイド、画面解像度は1920×1080ドットのフルHD、画面の表面処理はグレア(光沢)タイプだ。輝度は300カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1(CRO有効時は5000:1)、グレーからグレーの応答速度は3ms(オーバードライブ搭載)、視野角は上下/左右とも160度となる。
最大表示色は約1677万色(約10億6433万色中)で、8ビット入力した映像を10ビットに多階調化して階調表現力を高める「10ビットガンマ」機能も搭載する。
液晶パネルがTN方式なので、上下方向の視野角による色度変化は大きいが、寝ころんで画面を見上げる場合など、下から見た状態での色変化をガンマ補正で改善する「ルックアップ」モードも備えている。画面を見る角度に応じて補正の強度が違うルックアップ1/2の設定を選択可能だ。
そもそも、画面サイズが23型ワイドとパーソナルユースを想定した大きさなので、ほとんどの場合は視野角の問題が気にならない正面から画面を見ると思う。静止画の色再現性を追求したディスプレイではなく、動画視聴用であることも考えると、視野角に関しては神経質に考えることはないだろう。また、グレアタイプの画面は外光の反射が目立ちやすいものの、蛍光灯などの光源が直接映り込まなければ、それほど気にはならない。
なお、120Hz駆動の液晶パネルを搭載しているが、これは倍速補間のためであり、高リフレッシュレート信号の入力や、NVIDIAの3D Visionをサポートするわけではない。
映像入力は充実している。PC用はDVI-DとアナログRGBのD-Subが1系統ずつ、ビデオ用はHDMIが2系統とD5が1系統だ。HDMIの2系統はPC入力もサポートしている。本体には出力3ワット+3ワットのステレオスピーカーを内蔵するため、PC用のステレオミニ音声入力1系統と、D5用のRCAステレオ音声入力も持つ。もちろん、HDMI入力ではケーブル1本で映像と音声を入力し、内蔵スピーカーから音声を出力できる。
本体サイズは546(幅)×230(奥行き)×453(高さ)ミリ、重量は約6.1キロだ。スタンド機能はなかなか個性的で、上20度/下5度のチルト調整に対応するほか、ブロックネック式の高さ調節機能を備えている。3個のブロックネックが付属し、1個のブロックネックを取り付けると、画面の位置が30ミリ高くなる仕組みだ。
また、スタンドの後方部分が取り外せる構造になっており、本体の背面を壁にほぼ密着させた状態で設置することも可能だ。設置上の奥行きを約10センチほど稼げるので、机上のスペースを少しでも確保したい場合に助かる。
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