連載
» 2010年07月01日 17時00分 UPDATE

山谷剛史の「アジアン・アイティー」:「限りなく透明に近い日本」がITで貢献する (1/2)

この連載で4回にわたって「キルギス」と「ウズベキスタン」のIT事情を取り上げた。動乱に揺れる両国で実感じた“日本の存在感”とは。

[山谷剛史,ITmedia]

アニメキャラすら知られていない日本

 「キルギス」は中国の西隣にある国で、ウズベキスタンはさらにその西に位置する。中国にいると、日本のニュースはどこかのニュースサイトでいつも報じられているが、国境を越えてキルギスに入った途端、日本のニュースも日本の製品もほとんど見ることができなくなる。それどころか、キルギスで多数流通している中国製品でも、“日本が元ネタ”のキャラクター製品はほとんど見ない。

 この状況は、ウズベキスタンでも同様だ。両国において日本の存在感というのは甚だ希薄で、日本に対して「ハイテク製品を生み出す技術国」という認識がないどころか、そもそも日本という国家がアジアに存在することすら知らない人が多数であったりする。

 キルギスもウズベキスタンも中央アジアの国であるが、流通している工業製品やコンテンツ、さらに宗教などはロシア(というか旧ソ連)の影響が強い。中国の影響が少ないため、中国で流行している日本のサブカルチャーもほとんど知られることがない。

 街で販売している“海賊版”DVDビデオに収録されているのは、ロシアの映画とドラマ、そしてハリウッド映画だ。ウズベキスタンになると、これらに加えてウズベキスタンの映画やドラマを収録した“海賊版”DVDも流通している。日本のコンテンツは、NARUTOをはじめとした“ニンジャ系”“サムライ系”のアニメと“成人限定”アニメくらいしかない。プレイステーションシリーズやXboxシリーズの“海賊版”ゲームタイトルを扱うショップの品ぞろえは、完全に欧米タイトルだけ。中国のゲームショップが日本製ゲームの海賊版ばかりを扱っていたり中国のビデオショップが(洋画ですら)日本向けパッケージをコピーした海賊版を販売していたりする状況とは完全に異なる。

 キルギスやウズベキスタンの人々にとって、日本のイメージは「ニンジャ」「サムライ」「武術」で完結する。ウズベキスタンの首都タシケントには日本庭園があって、デートスポットや結婚写真の撮影場所として大変人気がある。日本という国は知らなくても、庭園が醸し出す“ワビ”“サビ”の雰囲気がウズベキスタンの人々に好まれているのだろうか。

 ウズベキスタンで日本語を学ぶ人に会う機会もあったが、さすがに彼らはアニメなどのサブカルチャーで日本の存在を知っていて、それらに興味を持って日本語を学ぶというケースが多い。中には「サムライと手合わせしたい」と本気で望んでいる人もいる。ただ、彼らがいうサムライもニンジャも日本の映画で知るのではなく、ハリウッド映画の「SAYURI」や「ラストサムライ」の影響が大きい。キルギスの人もウズベキスタンの人も、ハリウッドが作る日本を題材にした映画を通して日本をイメージする。NARUTOが両国で人気なのも、その内容やスピード感、動きがハリウッドのニンジャ映画で描かれる日本に近いからだ。

kn_yamaya03_01.jpgkn_yamaya03_02.jpg 「コスプレはしてみたいがHENTAIには興味はない」といいつつも、“一騎当千”を大事にするロシア系キルギス人(写真=左)。キルギスの人にとって日本といえば武道でありサムライでありニンジャである(写真=右)

SONYであってSONYでない

 日本という国と人を知らずとも日本の製品は知っている、というのが世界でよくある「日本の存在感」だ。しかし、キルギスでもウズベキスタンでも、「SONY」、「Panasonic」、「CANON」というロゴはあれど、そこには「正しいブランドイメージ」はない。例えば、SONYの看板を掲げる店の実態は、プレイステーションを修理しつつ“海賊版”ソフトを売る店だ。

 安価な製品が多数流通するバザールでは、いまもブラウン管テレビやDVDプレーヤーを販売する店がある。その店の商品をよく見てみると「SONY」「PIONEER」「KANWOOD」(明らかな誤植)といったロゴを掲げたDVDプレーヤーやブラウン管テレビがどっさりと売られている。ほかにも韓国メーカーのロゴが張られた家電や、携帯電話メーカー「NOKIA」ロゴのDVDプレーヤーもある。いずれもMade in Chinaだ。このように、中国の名もなきメーカーによって日本メーカーの名前がキルギスとウズベキスタンで認知されているのが実態だ。

 先ほども紹介したように、キルギス人もウズベキスタン人も日本に「ハイテク産業国」という印象を持っていないため、「日本メーカーの製品」という要素が製品を選ぶ指標にはならない。彼らにとっては日本製であることより、「少々古い(=中古の)1スピンドルノートPCだがNetbookより安い」とか「地元で売られている2スピンドルノートPCよりさらに安い」といった価格面が最も重要なファクターだ(日本で中古のノートPCを調達してウズベキスタンで安く販売する男たちの事情はウズベキスタンで日本の中古PCを売る男を参照のこと)。

kn_yamaya03_03.jpgkn_yamaya03_04.jpg 自称「ノキアのEVDプレーヤー」もある。EVDとは中国の独自に開発した次世代光ディスクの規格だ(写真=左)。キルギスにある海賊版ショップの品ぞろえ(写真=右)

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