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» 2010年08月19日 11時00分 UPDATE

牧ノブユキの「ワークアラウンド」:「あのメーカーはハズレが多い」って本当?

「このメーカーの製品は二度と買わない」とは、製品の不満を訴えるも門前払いをくらったときに発せられるセリフ。でも、それって意味のある行動なのか?

[牧ノブユキ,ITmedia]

同じメーカーの製品にはハズレが多いのか

 買った製品が何かしらの不具合や問題を抱えていて、期待はずれだったとき、程度の強弱はあれど、裏切られた怒りは製品とそのメーカーに向かうことになる。「このメーカーの製品を二度と買うものかあああぁぁぁ!」となるパターンだ。ただ、あるメーカーの製品を買って、それがいわゆる“ハズレ”だったとき、そのメーカーのほかの製品はやはりハズレである確率は本当に高いのだろうか。

 一口にハズレといっても、個人的に使いづらい、相性が合う合わないといった主観的な感覚に起因するものから、実際に品質が低いといった客観的な事実として認定できるものまで多種多様だが、まずは、全部まとめて「購入者の期待を裏切っちゃった製品を出したメーカー」としよう。

 果たしてハズレ製品をリリースしたメーカーは、ハズレモノを出し続けてしまうのか。この問題をメーカーにおける組織の成り立ちや、そのなかで実務に携わる担当者の個人レベルで何とかできる範囲はどこまでかといった観点で考えてみたい。

「1人の担当者」が製品にどれだけ影響する?

 どの業界のメーカーでも共通するのは、最初に「こんな製品を作りたい」と発案する企画担当者の存在がある。企画担当者はマーケティングの担当者と連携しながら、自分が考えた製品が市場で需要があるかを検討する。過去の製品の売れ行きが参考になる場合もあるし、前例のない新しい製品である場合は想定するユーザー層へのアンケートやインタビューを行って、市場で求められる製品であるのかを見極める。海外の似た事例が参考になる場合もある。

 これとは別に、ライバルメーカーのヒット製品に影響されて、トップダウンで製品企画が降りてくることもあれば、なんらかの部材が大量にデッドストックになっていて、それらを用いた製品を作らなければ在庫がはけないといった「ニーズ<シーズ」といった切実な事情が絡むケースもある。ハードウェアであれ、ソフトウェアであれ、また衣料品や生活用品、食料品にしても、こうした流れはほぼ共通だ。

 製品企画が正式に承認されると、複数のメンバーでチームを編成して開発がスタートする。家電製品であれば、ある担当者がハードウェアの設計をしつつ、別の担当者がファームウェアデザインを行う。もう少し後の工程になると、取扱説明書やパッケージデザインなどを立案するメンバーも参加する。

 製品が最終的に店頭に並ぶまでには、販促や広報の担当者も含めて十数人、多ければ何百人ものスタッフが関わることになるが、開発段階では“個人”が分業制で製品に関わるため、それぞれのステップで“個人技”が色濃く影響することになる。

 複数の製品を扱う多くのメーカーでは、上記のようなプロジェクトが同時に複数進行するが、1人の担当者が関わる範囲はメーカーによって、また、それぞれの担当者やプロジェクトの状況によって異なる。社内のどの部署が担当する製品であっても、内蔵する通信モジュールだけは社内で決まったエンジニアが担当しているケースはよくあるし、逆によく似た製品なのに別々のエンジニアが設計するため「ぜんぜん別物」という場合もある。

設計と開発は意外と属人的

 このため、「このメーカーの製品はもう買わない」は、開発ベースに限って考えると、ハズレを買わないための自己防衛手段としては、あまり適切ではないことが分かる。買った炊飯器がハズレだったからそのメーカーの次期モデル炊飯器を買わないというのは、まだ理にかなっている。製品の企画担当者はもちろん、開発に携わるスタッフも同じであるため、次期製品も同じ問題を抱える可能性が高いからだ。しかし、これが別のカテゴリー、例えば同じメーカーでも冷蔵庫なら携わっているスタッフがまったく異なるので、同じようにハズレとなるとは限らない。

 もっとも、「このメーカーの製品はもう買わない」という判断が功を奏する場合もある。それは品質管理や販売方法に不満を感じた場合だ。

 メーカーが製品を企画し、設計を経て完成させるまでのプロセスは、会社という組織で行っているにもかかわらず、実際にはさまざまな面で「個人」に依存する場合が多い。半面、製品の品質検査や流通、そして販売方法については、会社創設以来のノウハウが積み上げられてきており、それらが毎回踏襲するケースが多い。

 こうした理由から、品質レベルでそのメーカーの製品に不満を持ったのであれば、今後も、そのメーカーの製品に似たような不満を持つ可能性は高いことになる。会社が蓄積したノウハウを捨てて再構築することは、合併などで別のノウハウが流入することがない限り、まずあり得ないからだ。こうした部分で不満を抱いたのであれば、「このメーカーの製品はもう買わない」という判断は正しいことになる。

 とはいえ、これがどのメーカーにもあてはまるわけではないのが難しい。組織規模の大きいメーカーであれば、事業部や工場ごとに品質管理チームは異なるし、それまで内製していたマニュアルや製品パッケージの制作を、社内のデザイン部門の廃止にともなって外注したところ、飛躍的にレベルが向上したという例もある。

 なお、OEMが主体のメーカーであれば、話は複雑になる。なぜなら、開発手法から品質管理、販売手法などが完全に異なる製品を1社が取りまとめて扱っていることになるからだ。ただし、それでも、不満を感じるのが個人に起因するプロセスなのか、企業で共通した要因なのかを見分けることによって、その後に購入するメーカーの判断がより正しくなるはずだ。

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