インタビュー
» 2011年02月16日 12時10分 UPDATE

あきらめるのはまだ早い:失われたデータを求めて――HDDサルベージ探訪(前編) (1/2)

PCが広く普及した現代において、数年分の写真や動画が一瞬にして失われるHDDクラッシュは最も身近な悲劇の1つだ。バックアップもなく、復旧ソフトを使ってもダメなら泣く泣くあきらめるしかない、とも限らないのだった。

[後藤治,ITmedia]

HDDって壊れるんですよ、ええ

og_hdd_001.jpg 問題のHDD。シーゲイト製「Barracuda 7200.11」

 HDDの大容量化、低価格はとどまるところを知らない。今や特価販売でなくても2TバイトHDDが7000円を切る価格で店頭に並び、ギガバイトあたりの単価はわずか5円を下回る。その一方で、個人が日々消費するデータ容量も、10年前とは比べものにならないほど増加した。

 例えば、最近のデジタルカメラを見ると、コンパクト機でさえ“1000万画素超え”は当たり前で、有効1610万画素のCCDを搭載する製品まで登場している。高画素なぶん写真1枚のデータ容量も大きく、子どもの運動会などで1日撮影していれば数Gバイトの大容量メモリはあっという間に埋まってしまう。また、写真に限らずビデオや音楽、そして書籍と、さまざまなコンテンツがデジタルメディアとして流通しており、それらすべてを1台のPCで管理している人も少なくないはずだ。

 ここに大きな落とし穴がある。PC USERの読者であれば(実際に行っているかはともかく)、バックアップの重要性は十分認識しているだろう。しかし、PCが広く一般に利用されるようになり、「HDDは消耗品、壊れるもの」という、いわば“常識”を知らないユーザーが増えた。OSが再起動を繰り返す、液晶のバックライトが切れた、インターネットに接続できない、日本語が入力できなくなったなどなど、あらゆる不具合を「パソコンが壊れた」の一言で表現する人があなたの回りにもいるはずだ。

 彼らは例えばこんなふうに言う。「パソコンが壊れた。まだ買ってから3年しか経ってないのに」と。もし“パソコンに詳しいあなた”に相談してそのPCを購入したのなら、その言葉には非難の響きさえ含まれるかもしれない。「今まで撮った写真が見られなくなった。どうしてくれるんだ!」。しかしご存じの通り、3年という月日はHDDが壊れるには十分な時間なのだ。

真夜中の訪問修理

og_hdd_002.jpg BIOSのS.M.A.R.T情報を見ると、SATA 4ポートにSLAVE接続した問題のHDDは、壊れかけているのでバックアップしてね、という表示

 筆者もこういう仕事柄、親類の間では「PCに少しだけ詳しい人」と思われている(実際、少しだけ詳しいのだが)。そしてPCを購入する際にはなぜか相談されることが多い。これはかなりまずい状況である。これがどのくらいまずい状況かは、真夜中に電話でたたき起こされ、親せきから“パソコン訪問修理”を依頼された経験がある人なら共感してくれるはずだ。しかし逆にいえば、彼らは「今が何時か分からない」ほど気が動転しているともいえる。HDDクラッシュは現代のライフスタイルにおいて最も身近な悲劇の1つなのかもしれない。

 さて、前置きが長くなってしまったが、ここからはつい最近、実際に体験したことだ。年が明けてすぐに「パソコンが起動しない、写真が見られなくて困る、なんとかして」という典型的な依頼で、ある親類のPCを診断することになった。

 早速PCケースを開けて各種ケーブルを確認し、マザーボードに通電ランプが光っていることを確かめてから電源ボタンを押すと、PC自体は起動するのだがやはりHDDが認識されない。システムファイルが壊れた可能性を考慮して、あらかじめ用意した別のPCにHDDをSLAVE接続し、ソフトウェアを使って正常なHDDにクローンイメージを作成しようとするも、そもそも目的のHDDがマウントできない。S.M.A.R.T情報を見ると不良セクタが発生しているようで、これ以上いじくり回せば破壊が進み、取り返しがつかなくなりそうでもある。そして背後では、心配そうな声で「孫の写真が……孫の写真が……」という言葉が幾度となく繰り返されている……。

og_hdd_003.jpg サルベージ企業ならきっとなんとかしてくれる、というわけでデータ復旧.comに依頼してみた

 このとき筆者は、もっともらしくPCの画面を見つめて「ほう」とか「うん」とかうなずきつつ、差し出されたヨウカンに手を伸ばしながら、「もうぼくおうちかえりたい」などと考えていたのだが――つまりまったくのお手上げ状態だったわけだが、親せきの間では一応“パソコン関係の仕事をしている人”として知られている手前、簡単に引き下がることは許されそうもない。

 そこで、なんとか威厳を保ったまま口をついた言葉が「ちょっとお金がかかりますが、それでもいいですか?」というものだった。そう、データサルベージの専門企業に丸投げしてしまおうというわけである。案の定、金額は問題にならなかった。人は本当に大事なデータのためであれば多少の費用には目をつぶる。それが数年分の孫の写真であればなおさらだろう。

 翌日筆者は、無料診断してくれるデータサルベージ会社を探し、「直らなければタダ」という文言にひかれて、データ復旧.com(日本データテクノロジー)に電話をかけてみた。

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