11月2日、7.9型液晶ディスプレイを採用した「iPad mini」の販売が始まった。PC USERでは林信行氏による詳細なレビューを掲載済みだが、その魅力にいち早く触れようと、多くのアップルファンが直営店のアップルストア銀座につめかけた。
開店前は行列が300人まで伸び、iPhone 5の再入荷とも重なったことで、午後12時を回った店内は歩くスペースを探すのも苦労するほど。iPad miniだけでなく、第4世代iPadや13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデルを並べたテーブルにも人だかりができていた。
実を言うと、今回iPad miniがRetinaディスプレイを採用しなかったことで、記者もこの製品に懐疑的になっていた側のひとりだ。普段からアップル製品に囲まれ、iPhoneもiPadもMacBook ProもすべてRetinaディスプレイ搭載モデルを利用しているため、今さらXGAの解像度に満足できるだろうかという思いはあった。しかし、実際にiPad miniを触ってみると、確かにこれは魅力的な製品だと考えを改めると同時に、この魅力を伝える難しさも感じた。
例えば、最初にiPad miniを持ったときの軽さ。これは冷たいガラスとマットな質感の外装を指先に感じながら、本体をすっと持ち上げたときの“軽さの体験”であって、308グラムという数字や他社製品との重量比較では表せない。ガラスの板と呼ぶにふさわしい、iPad史上最も薄いボディも、7.2ミリという数字ではなく、ダイヤモンドカットで美しく面取りされたエッジ部分が手のひらに触れたときに実感する薄さだ。自分がそうあるべきと思う通りの非常になめらかな描画や、本体を持つ指が画面の端に触れても誤操作しない仕組みなどは、あまりにも自然すぎてそれを意識することすら難しい。
アップルがiPadで目指しているのは、ユーザーが望むあらゆるものに姿を変えてくれる「魔法の板」だ。Webサイトを見るときは手のひらにWebサイトそのものがあり、写真を眺めるときは写真そのものが、本を読むときは本そのものが、誰かと話すときは相手が目の前にいる――そこにデバイスの存在を意識させないこと。この“意識させない”という点において、片手サイズのiPad miniは歴代iPadの中でも群を抜いていると感じた。
もっとも、「実際に体験してみなければ分からない魅力」は、裏を返せば「触りさえすれば瞬時に理解できる魅力」でもある。そういう意味では非常に分かりやすい製品と言えるかもしれない。是非1度、店頭で実機を触ってみてほしい。
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