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独自のスライド機構に目を奪われがちな「VAIO Duo 11」だが、ボディの熱設計にも並々ならぬこだわりがある。「キーボードモード」と「タブレットモード」の2つのスタイルを効率よく利用できるように、「cTDP」(Configurable Thermal Design Power:設定可能な熱設計電力)を活用した熱設計が導入されているのだ。
cTDPとは、状況に応じてCPUのTDP(熱設計電力)を可変させる機能のこと。TDPは本来、ボディや放熱システムを設計する際の目安となる電力だ。VAIO Duo 11が搭載する第3世代Core i5/i7の「U」型番はTDPが17ワットなので、これを搭載するノートPCは17ワットぶんの発熱を安定して放熱できるよう設計されている必要がある。
普通に考えれば、製品ができあがってからCPUのTDPを変化させても関係はない。しかし、インテルのCPUにはTurbo Boost(Turbo Boost 2.0)機能がある。これはCPU自身が、CPU/内蔵GPUコアの負荷状態と電力状態、温度状態を自動で判断し、「安全な範囲内」でCPU/内蔵GPUの動作クロックを一時的に上昇させる機能だ。
この電力状態の「安全な範囲内」を判断するため、TDPが利用されている点に注目したい。CPUはリアルタイムの電力状況とTDPを参照しながら、動作クロックをコントロールする。リアルタイムの電力がTDPよりも低ければ動作クロックを上げ、TDPを超えて電力が高くなりそうならば動作クロックを下げるという要領だ。
そこで、cTDPの出番である。cTDPを利用し、状況に応じてTDPを任意に切り替えれば、同じCPUで同じ負荷状況であっても「安全な範囲内」が変化するため、動作クロックの挙動を変えることが可能になるのだ。
具体的には、TDPを高くするTDP Upの状態ではTurbo Boost 2.0の「効き具合」がよくなり、消費電力は高くなるが、性能も上がる。逆にTDPを低くするTDP Downの状態ではターボしにくくなるぶん性能が下がるが、より省電力になり、バッテリー駆動時間を延長できる。ただし、TDP Upに対応するのはCore i7のみで、Core i5を搭載した構成では利用できない。
このcTDPは、Ivy Bridgeこと第3世代CoreのCPUから導入されたものだ。開発段階から話題になっていた機能で、過去にPC USERの記事でも取り上げてきた。
VAIO Duo 11では、ユーザーが状況に応じてこのcTDPを活用できるのがポイントだ。キーボードモードとタブレットモードのスタイル切り替え、そして「VAIOの設定」ユーティリティに用意された「本体の冷却とパフォーマンス」の変更に、cTDPが連動する仕様になっている。変形機構とソフトウェアの設定が連動していて少々ややこしいため、仕様は下表にまとめた。
VAIO Duo 11のConfigurable TDP対応状況 | ||||
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VAIO Duo 11本体の状態 | 本体の冷却とパフォーマンス設定 | TDP Up対応 | TDP Down対応 | その他条件 |
キーボードモード | パフォーマンス優先 | 25ワット | − | Core i7のみ |
タブレットモード | パフォーマンス優先 | 17〜25ワット(具体的な数値は非公開) | − | Core i7のみ |
キーボードモード/タブレットモード | 冷却優先/静かさ優先 | − | 14ワット | Core i3/5/7の全モデル |
キーボードモード/タブレットモード | 標準 | − | 14ワット | Core i3/5/7の全モデル+バッテリー駆動 |
ソニーでは、TDP Upの状態においてグラフィックス負荷の高い環境で約5%の性能向上が確認できているという。ただし、室内温度などの動作環境によって、性能は左右される |
キーボードモードの場合、「パフォーマンス優先」設定が25ワット(TDP Up)、「冷却優先」と「静かさ優先」の設定が14ワット(TDP Down)となっている。「標準」の設定は、ACアダプタ接続時が17ワットと標準値、バッテリー駆動時が14ワット(TDP Down)だ。キーボードモードと比較して、本体内部に熱がこもりやすくなるタブレットモードではTDP Upの上昇が抑えられている。
VAIO Duo 11のように利用シーンに合わせて変形しながら使うハイブリッドPCでは、ノートPC形状とタブレット形状で放熱性能に差が生じる。cTDPは、それぞれの形状に適したパフォーマンスと省電力のバランスをもたらすのにも一役買っているというわけだ。
次のページでは、実際にcTDPによってパフォーマンスがどのように変化するかテストしてみよう。
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