大切な思い出の写真を守る「JewelryBox」担当者インタビュー(2/2 ページ)

» 2013年07月03日 20時55分 公開
[後藤治,ITmedia]
前のページへ 1|2       

「実際に使ってみると手放せなくなるはず」

執行役員Consumer CBU統括部長兼コンシューマービジネス統括本部コンシューマーマーケティング部統括部長の吉田健史氏

 セキュリティベンダーのトレンドマイクロがハードウェア製品を発売する、しかも年間1万8000台の販売目標を掲げるというのは、同社のコンシューマー事業戦略にとってかなり大きな決定のように思える。同社吉田健史統括部長に気になった点を聞いてみた。

―― トレンドマイクロがハードウェアを販売するということで少し驚いています。製品投入の背景を教えてください。

吉田氏 大事なデータを守りたいと考えたとき、ただ「バックアップという方法がありますよ」と提示するだけでは実現できないことがユーザーの利用実態を見れば分かります。ユーザーに「面倒だ」と思わせないためには、もう1歩踏み込む必要がありました。そうしたわずらわしさの解消は、ソフトウェアだけでは実現できません。ハードとソフト、そしてサービスを1つにまとめあげてこそ、よりシンプルで使い勝手のよいものを提供できると考えました。JewelryBoxはハードウェアという「モノ」ではなく、あくまでもデータを保護するためにクラウドを融合したサービスです。

―― 写真を保存すると自動的にリサイズされてしまいますが、オリジナルデータをバックアップできない仕様になったのはなぜでしょうか。

吉田氏 これについては社内でも意見が分かれ、何日も議論を重ねました。私もデザインの仕事をしていたので、オリジナルがないと気持ち悪い、というのはよく分かります。ただその一方で、データが大きいと動作が緩慢になり、使い勝手は下がってしまいます。また、オンラインストレージの価格も安くはないので、容量をとればそれだけ製品の価格に反映されてしまいます。

 こうしたトレードオフを考慮し、プリント品質を保ちつつ、写真を活用する際に快適さを感じられる容量を何度も検証した結果、200万画素相当というサイズに落ち着いています。

―― 16Gバイトという本体容量を考えると高価な印象を受けてしまいますが。

吉田氏 単なるストレージとして容量対費で見れば、そう感じてしまう人もいるかもしれません。ただ、実際にJewelryBoxで何が解決できるかを考えれば、安いと感じる人もいるはずです。製品開発にあたっては、小さな子どもを持つ母親といった、写真は撮るけれどもPCには詳しくないという層にも試用してもらいましたが、この価格で今までのわずらわしさから解放されるなら是非欲しいという声を頂いています。

カラーバリエーションは白と黒の2色。「インテリジェント」「シンプル&クリーン」といったデザインコンセプトから、囲碁の碁石に着想を得て2色のデザインになったという。和室に置いても不自然じゃないかも

―― 容量の大きな上位モデルなどを展開する予定はありませんか?

吉田氏 今後そうしたモデルを検討する可能性はありますが、現時点ではありません。16Gバイトという容量は、(リサイズ後のファイルサイズで)約4万枚の写真を保存できる容量です。我々が300人を対象に行った調査では、多くの一般的なユーザーが1カ月に撮影する写真は数十枚、年間にしても1000枚程度でした。つまり4万枚の写真が保存できれば数十年は十分な計算になります。

―― 大切なデータを安全に守る、という点では、非常に御社らしいアプローチですが、写真管理という側面から見ると、例えば保存した写真の検索が基本的に日付ベースに限られる点など、やや見劣りするようにも思います。顔検出による人物ごとのソート、位置情報やイベントごとの検索、あるいは露出やホワイトバランスを自動的に補正するといった機能は検討しませんでしたか?

吉田氏 そうした機能は今後ファームウェアのアップデートで対応することが可能です。ただ、ユーザーの手をわずらわせるものはできるだけ排除する、という方針から、ばっさりと切り捨てている部分もあります。例えば、Exifに位置情報を保持するのは主にスマートフォンなどで撮影した写真ですが、そうすると情報を持つものと持たないものが混在することになり、かえってユーザーが混乱する原因にもなります。ユーザーにとって何が使いやすいのかは、慎重に検討する必要があると思います。

―― クラウド連携のフォトストレージでは、6月にHPの「Snapfish」が国内から撤退しましたね。Snapfishが提供していたようなプリントサービスや、フォトブック、コップ、Tシャツといったフォトプリント製品などを販売する予定は?

吉田氏 実はそうしたサービスも検討しておりましたが、今回は実現はしませんでした。JewelryBoxは海外展開するので、そうしたサービスをグローバルでカバーできるパートナーが見つかれば提供できると思います。

―― JewelryBoxのアピールポイントをお願いします。

吉田氏 何よりもまず、JewelryBoxを実際に使って体験してみてくださいと言いたいですね。写真管理にまつわるいろいろな作業を、「それしかないから」という理由で続けていた人たちは、シンプルなJewelryBoxを体験すれば、これまで非常に面倒な作業をしていたんだということに気付くでしょう。百聞は一見にしかずで、1度でもこの快適さを体験すればJewelryBoxを手放せなくなるはずです。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー