「VAIO Pro」の“超軽量ボディ”を丸裸にするVAIO完全分解&開発秘話(前編)(5/5 ページ)

» 2013年08月09日 15時45分 公開
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VAIO Pro 13とVAIO Pro 11の中身は何が違うのか?

注意!

製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません。



実機の分解は機構設計を担当した渡村氏が行った

 それでは、VAIO Proの内部構造をチェックしていこう。

 まずは本体を裏返し、底面のネジを外していく。VAIOロゴとWindowsロゴがプリントされた底面は、1本のネジも露出していない美しい外観だが、パームレスト手前にあるゴム足の下に7本、ディスプレイの左右ヒンジ部にあるゴム足の下に2本ずつ、そして拡張バッテリー接続端子のカバーの下に1本と、合計12本ものネジが隠されている。

 分解時はこれらのゴム足(シールで接着)やカバーをすべて手で剥がし、ドライバーでネジを外していく。すべてネジを外せば、底面のUDカーボン製カバーを開けることができ、VAIO Pro 13の内部構造が明らかになる。VAIO Pro 11の底面カバーも同様の手順で開けることが可能だ。渡村氏は「VAIO Pro 13と11は、画面サイズによってパーツの配置を多少変えている部分もあるが、基本的なコンセプトも製造方法も共通化し、横展開している」と説明する。

VAIO Pro 13の底面にはネジが1本も露出していないが、ゴム足の下や拡張バッテリー接続端子のカバー内に、ネジが隠されている(写真=左)。取り外したゴム足と、拡張バッテリー接続端子のカバー(写真=右)

ネジをすべて外し、VAIO Pro 13本体から分離した底面カバーの表(写真=左)と裏(写真=右)。底面はUDカーボンの板、底面奥と側面は樹脂となっており、異なる素材を組み合わせているが、見た目に違和感はない

 VAIO Pro 13の内部構造は、大型のバッテリーが手前にあり、上部に基板部、左側面にCPUクーラーを配置している。VAIO Proが採用する第4世代CoreのUシリーズは、CPUパッケージに、CPUのダイとチップセットのダイを実装しているため、システムの省スペース化がより容易になった。SSDモジュール(長さ80ミリ)と、無線LAN/Bluetoothコンボモジュール(長さ30ミリ)は、いずれも新しい横幅22ミリのM.2(旧称NGFF)ソケットを採用する。

VAIO Pro 13の内部構造

 一見するとUltrabookで標準的なレイアウトに思えるが、液晶ディスプレイのヒンジ部周辺に、左右非対称の形をした大きなステレオスピーカーを内蔵しており、左スピーカーの上をCPUクーラーのヒートパイプがまたいでいるのはユニークだ。タッチパッドの下にはNFCのモジュールを搭載し、側面のSDメモリーカードスロットを避けるようにバッテリーを内蔵しているのも目を引く。

 実はステレオスピーカーの下には、IEEE802.11a/b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HSの共用アンテナも配置しており、ボックス型スピーカーの樹脂の部分を活用し、アンテナと共存させて無駄なスペースを省く工夫も見られる。キーボードフレームは樹脂製なので、ここにアンテナを内蔵しても電波が通る仕組みだ。アンテナを本体側に内蔵したため、ディスプレイ側に搭載しているのは、タッチパネル付きの液晶とWebカメラのみとなる。

 アンテナをディスプレイ側の上端に内蔵する設計と比較した場合、感度は少々不利になるものの、天面にアンテナ内蔵部分の継ぎ目がなく、側面の角を削ぎ落した美しいフォルムや、狭額縁のディスプレイを実現できているのは見逃せない。

 VAIO Pro 11の内部構造は、基本的にVAIO Pro 13と共通だ。底面中央の拡張バッテリー用端子は同じ位置に搭載し、各パーツのレイアウトもかなり近いが、SDメモリーカードスロットを前面に、ステレオスピーカーをバッテリー左右のスペースに内蔵している点が大きく異なる。

VAIO Pro 11の内部構造

 また、VAIO Pro 13はSSDをつなぐM.2ソケットの先の基板を切り落とし、厚みがある両面実装のSSDモジュールを載せられる設計になっている一方、VAIO Pro 11はメイン基板とSSDモジュールを重ねて配置する構造なので、片面実装のSSDモジュールしか物理的に搭載できない。

 したがってVAIO Pro 11で選択できるSSDは、128Gバイト/256GバイトのSerial ATA SSD(片面実装)に限られる。VAIO Pro 13では、128GバイトのSerial ATA SSD(片面実装)に加えて、256Gバイト/512GバイトのPCI Express(PCIe)接続SSD(両面実装)も選択可能だ。このPCIe SSDはPCIeを4レーン使用し、理論値で20Gbpsのデータ伝送速度に対応している。Serial ATA SSDの6Gbpsをはるかに上回る伝送速度だ。VAIO Pro 11はメモリの容量も4Gバイト固定(VAIO Pro 13は最大8Gバイト)で、スペックに差が付けられている。

VAIO Pro 13(写真=左)とVAIO Pro 11(写真=右)の内部構造比較。SDメモリーカードスロットとスピーカーの位置が大きく異なる。VAIO Pro 13はM.2ソケットとバッテリー用コネクタの先の基板を切り落とし、パーツが重なって厚みが出ないよう工夫している。CPUクーラーのヒートパイプはVAIO Pro 13が2本と、VAIO Pro 11より多い
VAIO Pro 11/13(直販VAIOオーナーメードモデル)で選択できるSSD
製品名 SATA(6Gbps) PCIe(20Gbps)
VAIO Pro 13 128Gバイト 256Gバイト、512Gバイト
VAIO Pro 11 128Gバイト、256Gバイト

 以上、今回はVAIO Proの開発コンセプト、ボディデザイン、キーボード、内部構造を中心に話を伺った。後編では、VAIO Pro 13をさらに分解し、各部のこだわりに迫る。

・→VAIO完全分解&開発秘話(後編):「VAIO Pro」を“徹底解剖”して見えた真の姿

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