インタビュー
» 2013年08月22日 12時45分 UPDATE

「FMV LIFEBOOK UH90/L」分解&開発陣インタビュー(前編):IGZO液晶+第4世代Coreの“日本製”Ultrabookはこうして生まれた (1/4)

「刀」を開発コンセプトに掲げたUltrabook「FMV LIFEBOOK UH90/L」は、高画素密度のIGZO液晶ディスプレイと第4世代Core、上質な薄型ボディが特徴だ。そのこだわりを開発陣が語り尽くす。

[前橋豪(撮影:矢野渉),ITmedia]

・→「FMV LIFEBOOK UH90/L」分解&開発陣インタビュー(後編):“画素密度No.1”の国産Ultrabookを徹底分解して秘密に迫る

富士通の「刀」をたたき上げた開発陣にロングインタビュー

 PCメーカー各社が注力する「第4世代Coreプロセッサー」(開発コード名:Haswell)搭載のUltrabookにあって、異彩を放つのが富士通の「FMV LIFEBOOK UH90/L」だ。14型ワイドで3200×1800ドットの超高解像度に対応したIGZO液晶ディスプレイを搭載し、画素密度は約262ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)と、ノートPCで随一の高精細表示を誇る。

tm_1308uh_iv1_01.jpg 富士通の14型Ultrabook「FMV LIFEBOOK UH90/L」

 富士通は昨年(2012年6月)、同社初となるUltrabookの「FMV LIFEBOOK UH」シリーズを投入。上位機種の「FMV LIFEBOOK UH75/H」は、13型クラスのボディに一回り大きな14型ワイド液晶ディスプレイを詰め込み、HDD搭載ノートPCで世界最薄(※1)となる洗練されたスリムボディを実現し、細部までこだわった製品だった。

 2013年夏モデルではこの流れを受け、シリーズ最上位に位置する新モデルのUH90/Lを発売。HDD搭載ノートPCで世界最薄(※2)、14型ワイドの画面サイズといった特徴はそのままに、解像度を従来比で約5.5倍まで一気に引き上げ、CPUを第4世代Coreに刷新することで、実に先進的なUltrabookに仕上げている。

 今回はUH90/Lの開発コンセプトをはじめ、ボディデザインや内部構造の秘密に迫るべく、開発陣にロングインタビューを行った。話を伺ったのは、開発を統括した山田徹氏、機構設計を担当した立神一樹氏、デザイナーの岡本浩平氏と太田真利亜氏、そして商品企画を行った松本修一氏と安藤賢一氏の6人だ。

※1 最厚部(突起部除く)の寸法が15.6ミリ厚(2012年5月9日現在、富士通調べ) ※2 最厚部(突起部除く)の寸法が15.5ミリ厚(2013年6月5日現在、富士通調べ)

tm_1308uh_iv1_02.jpg 今回話を伺ったFMV LIFEBOOK UH90/Lの開発陣。前列左から太田真利亜氏(富士通デザイン サービス&プロダクトデザイン事業部 システムプロダクトデザイン部 デザイナー)、山田徹氏(富士通 パーソナルビジネス本部 第一クライアントプロダクト事業部 第二技術部 シニアプロフェッショナルエンジニア)、安藤賢一氏(富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 パーソナルプロダクト統括部 第一プロダクト部)、岡本浩平氏(富士通デザイン サービス&プロダクトデザイン事業部 システムプロダクトデザイン部 デザイナー)、立神一樹氏(富士通 パーソナルビジネス本部 第一PC事業部 PCデザイン技術部 マネージャー)、松本修一氏(富士通 ユビキタスビジネス戦略本部 パーソナルプロダクト統括部 第一プロダクト部 マネージャー)

“MADE IN JAPAN”が可能にする開発・製造体制

―― UH90/Lの開発はいつからスタートしたのでしょうか?

tm_1308uh_iv1_03.jpg 製品開発を統括した山田徹氏

山田氏 正式なプロジェクトとして製品開発をスタートさせたのは、2012年12月末になります。もちろん、それ以前から製品コンセプトの組み立てや、どういったデザインを目指すのか、といった部分では検討を重ねていましたが、実際の開発期間は半年より短く、かなりタイトでした。振り返ると、自分でもびっくりするくらい短いです(笑)。

立神氏 製品の発売は6月28日ですが、電源が入り装置として評価できる試作機ができたのはゴールデンウィーク前後でした。それまでは各部に分けて、電気的もしくは構造的な評価を行ってきたので、試作機ができてから量産まではあっという間です。今回は第4世代Coreの新しいプラットフォームなので、その評価も同時進行するなど、複合的な要因で全体的に短いスケジュールになりました。

松本氏 日々進化するPCの世界では、どのように他製品と差異化し、先進性を出していくのかが重要です。今回は第4世代Coreが登場する夏商戦のタイミングで、その搭載機を投入するという前提がありました。その限られた期間内で、超高解像度の「IGZO」液晶ディスプレイをいち早く採用してアドバンテージを示すなど、皆でよりよい製品を作るため、関係各所が協力し、ときにせめぎ合いながら、妥協せず最終的な製品に落とし込めたと思います。

―― それほどの短期間で完成度の高い製品を作ることは困難ではないでしょうか?

tm_1308uh_iv1_09.jpg UH90/Lは島根富士通にて製造する“MADE IN JAPAN”モデルだ

山田氏 そこが富士通の強みといえるでしょう。UH90/Lはすべて日本で設計し、島根富士通にて製造する“MADE IN JAPAN”のUltrabookとなります。つまり、試作の段階から、どうやったら製品の完成度を上げつつ、組み立てやすい設計になるのか、工場と密に連携しながら開発が可能です。

 我々設計チームが工場の特性を把握しているので、最初から製造段階まで考慮した設計がしやすく、開発段階で何かトラブルが発生しても島根富士通の技術者で直ちに対応できますし、細かい指示がスムーズに伝わる、といったメリットもあります。

 また、最終製品ではアルミニウムの1枚板でパームレスト面から側面まで成型するところを、初期の試作機では側面を別パーツにして作り、構造評価を先に進めつつ、アルミニウムの加工を細部まで追い込むなど、短納期で効率的に開発を進める工夫もしました。

tm_1308uh_iv1_10.jpgtm_1308uh_iv1_11.jpg アルミニウムの1枚板でパームレスト面から側面までを成型し、美しさと頑丈さを両立している(写真=左)。着色する前の1枚板で構成されたパームレスト面(写真=右)

―― 実際の製造面でも他とは違った工夫をしていますか?

tm_1308uh_iv1_04.jpg 機構設計を担当した立神一樹氏

立神氏 デザインのこだわりと組み立てやすさを両立するため、一部で特殊な製造工程を入れています。UH90/Lは液晶ディスプレイ側面の縁に切れ目がなく、天板全周をぐるりと覆っています。通常は液晶ディスプレイとタッチパネルを合体させるとき、エアーでホコリを払いながら前後に重ねて、後からケーブルを出すといった工程になりますが、UH90/Lではそうはいきません。

 UH90/Lの構造で普通に組み立てようとすると、空中で天板を手に持ったまま、側面に切れ目がないため、ヒンジ部に無理やり作った左右の穴からケーブルを出し、エアーでホコリを払いつつ、最後にカバーをパシャンと閉じなければならず、設計初期の段階で工場から何とかしよう、といわれていました。

 そこで、この組み立て時に本体を保持する治具を用意し、片手がフリーになって、ケーブルをすぐ引き出せるよう、製造ラインに手を加えました。外観に武骨な切れ目を出さないためだけに、製造現場とともに、ここまでの労力を割いています。

山田氏 短いスケジュールの中でのこうした細かい工夫も、日本で製造・設計する、すなわち“MADE IN JAPAN”だから可能なのです。

tm_1308uh_iv1_12.jpgtm_1308uh_iv1_13.jpg 液晶ディスプレイは側面の縁に切れ目がない、すっきりしたデザインだ(写真=左)。液晶ディスプレイ部を分解した様子(写真=右)。このデザインを保つため、特殊な治具を使って組み立てやすくした

富士通 FMV LIFEBOOK UH
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