前回挙げた「ThinkPad X1 Carbon」キーボードのいいところの続きである。
(1)〜(5)のポイントについては前回を参照願いたい。
では(6)について。ThinkPadシリーズのキートップの工夫は昔から継承されている部分だが「ThinkPad X1 Carbon」をはじめ、新モデル ThinkPad X240s/T440sなどでも採用するアイソレーションタイプの6列プレシジョンキーボードならではのメリットとして、キーの間にゴミやホコリが入り込みにくいことが挙げられる。
平日は1日のほとんどをPCの前で過ごす生活をしていると、これまでの7列キーボードは、数カ月もすればキーボードの間はかなりの量のゴミや髪の毛などが入り込み、清掃には苦労したものだった。エアダスターで吹き飛ばすのはもちろん、キーボード用のハンディ掃除機やスライム状のものを使ってみたりと、メンテナンス方法はいろいろ試みた。時にはキートップを外して掃除しているうちに内部のパンタグラフ部品を壊してしまい、結局新しいキーボードに交換したこともあった。
しかし、アイソレーションタイプだとその必要がほとんどなくなる。小さなゴミが入らないこともないが、エアスプレーで吹き飛ばせばたいていは十分である。これまで筆者がメインで使っていたThinkPadはどの世代でも半年から1年ほどの間隔で必ず新しいキーボードを入手し、換装していたが、このプレシジョンキーボードの仕様ならばその必要もなさそうである。
もう1つ進歩していると感じられるのが、(7)の表面のコーティングについてだ。過去の名機といわれる製品も、使い込むとキーボード表面のしぼが消えてテカってきて、さらに使い込むと文字消えなどが発生していた。これはキーの間のゴミたまりと同様に、キーボードを交換したくなる要因となっていたが、このThinkPad X1 Carbonはすでにかなり使い込んでいるにも関わらずそのテカりがほぼ発生していない。
本機は編集部より借りているマシンだが、それは気にせず数カ月ガリガリと“もう俺のもの”として使用した頻度を考えると以前の仕様ならばテカりが発生してもおかしくはないくらいは使っている。しかもこのマシンは編集部で以前使用していたお下がりのもののため、おそらくは使用開始から1年は軽く経過しているが……そんな印象をまったく受けないのは、このコーティングによるところが大きいと思う。この点はスーパー名機のThinkPad 600シリーズにも勝っている。
このように「個人的」な意見も多々含めつつざっと挙げてきたが、1つ1つ見ていくと、2013年現在のThinkPadキーボードには長年の開発経験やユーザーからのフィードバックによるノウハウの蓄積、技術の進歩、そして現代しかできない要素が多分に取り入れられていることに気がつく。同時に、昔のThinkPadキーボードもそのイメージほど完璧なものではなかったことも思い知った。
筆者がThinkPad 560Eを購入した当時の価格は約40万円だった。対して2013年現在のノートPCは15万円を超えれば高級機と呼ばれる感じだ。この時代の違い、キーボードにかけられるコストの違いは事実としてあるが、だからといってキーボードの品質を諦めていたらここまでのものはできないはずだ。
コストの差を技術や経験で可能な限り補い、さらに上のユーザビリティを追求してきたことが分かる。ThinkPad X1 Carbonのキーボードは少し触っただけでもよいものであると感じたが、こうやってしばらくの間使ってみることで、改めてThinkPadキーボードのよさ再認識した次第である。
ここまでよい点について触れてきたが、もちろん「気に入らないこと」もある。この点やその対策については次回触れよう。
(続く)
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