しかし、ITを導入したからといって、すべての業務がデバイス上で完結されるわけではありません。内田さんは「Paddy Watchやデバイスはあくまでサポート。実際の判断をするのは人間です」と語ります。
水田ならではの難しさもあるそうです。「田んぼは場所によって水の状態が異なり、水口(みずくち)か水じりによっても変わります。そのためPaddy Watchの水田センサーを立てる場所によって数値が変わることがあります。今は55ヘクタールの地に5本のセンサーを立てていますが、理想は1筆(ひつ)ごとに1本ずつ。でも収穫時期にはセンサーを全部抜かなければいけないから面倒ですよね」とセンサーでの情報収集の課題点を挙げます。
また、現段階ではセンサーでデータを確認することしかできません。内田農場以外の企業でも、ボタン1つで水門まで制御できるようになってほしいという要望は挙げられているそうです。
内田さんはそのほかにも、水路にきちんと水が来ているか分かる水路センサーの開発や、田んぼに水撒きをしてくれるルンバなどのアイデアを楽しそうに語ってくれました。Paddy Watchで害虫発生注意報や病気の予防ができたり、「地温」項目の追加なども挙げています。農業をIT化することで改善できる項目はまだまだありそうです。
内田さんは「『農業を守れ』という言葉がありますが、農業を“守って”もしょうがない。水田は日本の財産だから“生かさ”ないといけないんです」と農業の進化の重要性を語りました。
ずっと先まで広がる田園風景の中で、iPhoneやApple Watchがコメを作るために活用されている――そう考えると、あなたがいま食べているおいしいお米も、少しだけテクノロジーの味がしてきませんか?
今回取材を受けてくれた内田農場の自信作「阿蘇かたる米 うち田」は道の駅阿蘇のほか、ネットショップ「ASOMO」でも購入可能。阿蘇の山々が育む天然水で育てたお米はツヤツヤもっちり!
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