これで「Edge」を使う気になる? 目玉の拡張機能は間もなく提供へ鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/2 ページ)

» 2016年02月08日 06時00分 公開
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Edgeの拡張機能はセキュリティを重視して投入へ

 Windows 10に導入された新しい標準Webブラウザの「Microsoft Edge」。2015年末に『Windows 10標準ブラウザ「Edge」は2016年から本気を出す?』とのタイトルで記事をまとめたように、Microsoftは「2016年がEdge飛躍の年」と考えているようだ。

 Edge本来の目的であった「Internet Explorer(IE)固有機能の分離」と「Web標準へのさらなる準拠」は2015年である程度一段落し、2016年の開発目標として「Extensions」など、より“攻め”に近い新機能の実装を進めている。その最初のバージョンがもう間もなくWindows 10 Insider Preview(IP)で配信されるという。

 これは2月3日(米国時間)にMicrosoft Edge Dev Blogで予告されている。「2016 priorities for EdgeHTML」の項目で真っ先に挙げられているのがExtensionsの実装であり、実際にユーザーからの要望が最も高い機能とのことだ。

Microsoft Edge Windows 10で採用された新たな標準Webブラウザ「Microsoft Edge」

 Extensionsはブラウザを拡張する仕組みであり、従来まであったようなネイティブコードによるプラグインではなく、HTMLやJavaScriptなどWebの標準技術を使ってWebブラウザにさまざまな補助機能を施すことができる。プラットフォーム依存やセキュリティ上の問題を抱えるプラグインとは異なり、プラットフォームを横断してWebブラウザをカスタマイズしたり、あるいは手軽に操作性を向上させたりできるため、Chromeをはじめとする最近のモダンなブラウザでは必須の機能だ。

 ただし、2015年4月にEdgeが初めて一般公開された際に「Extensions対応」をうたっておきながら、その実装は現在もまだ行われていない。恐らくは、2016年3月末までに配信されるWindows 10 Insider Previewのいずれかのビルドで実装が行われ、同時期に開催されるMicrosoftの開発者会議「Build 2016」でプレビューを行いつつ、拡張機能開発者向けの情報提供がなされるとみられる。

 そして実際に一般ユーザー向けに提供されるのは、「Redstone」の開発コード名で呼ばれるWindows 10の次期大型アップデート配信のタイミングになるだろう。Redstoneの配信は2016年6月前後と予想される。

 Extensions for Edgeは以前からの報道にもあるように、基本的にはChromeなどの競合ブラウザとほぼ同じ仕様に沿っており、Edge向けの拡張が若干行われる程度にとどまるとみられる。ゆえに、既にExtensionsの開発実績を持つデベロッパーであれば、仕様公開後すぐにEdge向けの拡張機能がリリース可能になるだろう。

 しかし、MicrosoftではExtensions for Edgeがマルウェア配布の温床になることを警戒しており、公開にあたっては審査を必要としているようだ。そのため、全てのExtensionsはWindowsストアを経由しての配布となり、Microsoftの管理下に入る。

Adblock Plus Extensionsで最もメジャーなサービスの1つが広告ブロッカーの「Adblock Plus」だが、既にEdge向けの提供が予告されている

EdgeのシェアはWindows 10に比べてもまだ低い

 旧IEのサポート終了についての解説でも触れたが、デスクトップ向けWebブラウザ全体におけるEdgeの利用シェアは、2バージョン(12と13)を合わせてもわずかに2〜3%にとどまる。Windows 10のデスクトップOSシェアが1割前後あることと照らし合わせると、非常に低い水準で推移していると言わざるを得ない。

Edgeの利用シェア Net Market Shareによるデスクトップブラウザのシェア(2016年1月)。調査会社によってかなり傾向が異なり、Net Market ShareはIEのシェアがかなり高く出やすい。Edge 12は1.57%、Edge 13は1.51%と低く、グラフではOtherの中に含まれており、存在感を示せていない状況だ
Windows 10の利用シェア Net Market ShareによるデスクトップOSのシェア(2016年1月)。Windows 10は11.85%まで伸びてきたが、まだWindows 7の52.47%には遠い

 なお、Edgeのバージョン番号はブラウザの本体である「EdgeHTML.dll」のバージョン番号を意味している。Edge 12は初デビューとなった2015年4月時点からのもので、現行のEdge 13は2015年11月に公開されたWindows 10初の大型アップデートである「TH2」こと「November Update(1511)」以降のバージョンとなる。

 もっとも、このシェアの低さは「Extensions機能がサポートされないので、従来のブラウザから移れない」というのが理由なだけではないだろう。IEを使い続けるユーザーは「企業内のWebアプリケーションがIEの特定バージョンに限定されている」「使いたいWebサービスがEdgeに対応していない」といった理由が大きい。

 また、競合ブラウザのユーザーは現状で「Edgeをあえて使うメリットがない」と判断している。Edgeには、Webページの任意の場所へ手書きでコメント可能な「Webノート」、音声対応パーソナルアシスタント「Cortana」との連動など、特徴的な機能はあるものの、使い慣れた他ブラウザの環境から乗り換えるまでには至らないのだろう。

 長い道のりではあるが、Microsoftは地道にEdgeのユーザー体験を改善して、「Edgeでいいじゃん」というユーザーを少しずつ増やしていくしかない。

Extensionsサポート以外の重点目標

 冒頭で挙げたMicrosoft Edge Dev Blogの予告において、MicrosoftはExtensionsなど機能拡張のほか、次の項目をEdgeにおける2016年の重点目標として掲げている。

  • JavaScriptベンチマークのパフォーマンスで業界をリード
  • さまざまな観点からのセキュリティの向上
  • キーボードによるスクロールのパフォーマンスや追従性
  • Adobe Flashをブラウザの実行プロセスから独立させ、不要なコンテンツを停止可能に
  • Windowsネイティブのグラフィックス処理を通してGPU活用推進
  • バックグラウンドにまわった「タブ」の停止やタイマー、処理の改善

 どれもWebブラウザの改善とさらなる進化には重要で、今後Edgeの競争力が上がるかどうかは、これら目標の達成度によっても変わってくるだろう。

 この他、筆者は「FIDO 2.0サポートによるWindows Helloとの連携」という記述にも注目した。FIDO Allianceが提唱するパスワードを使わない認証方式の標準規格「FIDO 2.0」はまだ正式にリリースされていないため、将来的なサポートとなるが、今後対応するWebサイトは増えるとみられる。Windows 10のバイオメトリクス(生体)認証機能「Windows Hello」を使った簡単でより安全なWebサイトへのアクセスが可能になるだろう。

 Windows Hello、FIDO 2.0といったキーワードの意味と仕組みについては、過去の連載記事を参照のこと。

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