11月3日は午前8時から、Twitterに喜びを伝える投稿がちらほら始まりました。そう、「iPhone X」が発売されたのです。
米Appleは発売に先立つ11月1日に「iPhone Xについてのレビュアーの評判」というブログを公開しました。発売前の製品についてこんなことをするのは、これまでになかったことです。9月に発売したばかりの「iPhone 8」でもしていません。
iPhone Xが10周年記念という特別なモデルだからなのか、ホームボタンの廃止など大きく仕様が変わったことで戸惑っているユーザーの不安を拭い去るためか、その真意は分かりません。
もっとも、Appleはこれまでも「ここはOK」と“認定”している主要メディアやジャーナリストに、発売前の製品を貸し出してきました。そしてAppleが指定した解禁日に新製品のファーストインプレッション記事が一斉に出るという流れは、恒例行事になっています。
本拠地の米国で言えば、先日引退したウォルト・モスバーグ氏やスティーブン・レヴィ氏が、Apple製品を発売前にレビューするジャーナリストの常連です。
しかし、Appleの意に染まないリーク記事を書いたりしていると、MacRumorsのように老舗メディアでもこの特権を失います。
Appleは今回、こうしたiPhone Xの先行レビューからピックアップした褒め言葉をまとめて紹介していて、それが異例ということです。
異例なのは紹介の仕方だけではありません。レビューのための試用時間が非常に短かったと報じられています。
Wall Street Journalによると、今回は1週間前から貸してもらえたのはレヴィ御大を含むごく少数で、ほとんどのメディアとジャーナリストはレビュー公開前の24時間しかiPhone Xの実機に触れなかったそうです。
そのWall Street Journalも24時間しか使わせてもらわなかったということで、Appleは「熱狂的なレビューがほしいから、マスコミ戦略を変えたんだろう」と書いています。
さらに前例がないのは、常連ではない、普段はApple以外の製品レビューもしているYouTuberにも発売前に貸し出したことです。Recodeによると、Appleは数人のYouTuberをニューヨークのペントハウスに招待して、iPhone Xを24時間限定で貸し出したそうです。
このYouTuberの選び方が不思議で、中にはチャンネル登録数が18万人弱しかいないところもあります。過去の動画のラインアップを見ると、Apple製品に特化せずに、多様な新製品を好意的にレビューしているものが多い感じです。例えば、17.7万人が登録するチャンネル「Highsnobiety」は、普段はナイキのスニーカーとかおしゃれスポットを紹介しています。
新しい層を開拓したかったんでしょうか。こういうYouTuberさんたちなら批判的なレビューはしないことも分かっているし。でも今のところ、少なくとも4つの動画を見たんですが、再生回数は多くて85万回(Booredatwork.comの動画)と、Appleの新製品にしてはあまり効果的でもなかったような気がします。
ちなみに、Appleの公式YouTubeチャンネルでは9月12日の発表に合わせてiPhone Xの動画を3本公開しましたが、最も少ないものでも700万回、多いもので2800万回再生されています。
そもそも、そんなに宣伝しても手に入らないようでは困るので、しっかり増産してほしいものです。
11月3日にはAppleの決算発表もあったのですが、発表後の電話会見で「iPhone Xが入手困難なのは需要が高すぎるからなのか、供給が不足しているのか」と質問されたティム・クックCEOは「正直言って分からん」と答えました。
その後、CNBCのインタビューでは生産が難しいことを認めたうえで、「ホリデーシーズン(米国では11月第4木曜の感謝祭から始まる年末商戦)に欲しい人が多いことは分かっているので、期待に応えるよう努力している」と答えています。
また、「iPhone Xがチャレンジングな製品になることは分かっていた。あまりにも先進的だし、向こう10年のAppleのロードマップを設定する製品だからだ」と前置きしつつ、けれども「これまでの経験から、順調に行っていると思っている」とクックさんは語りました。
何しろずっとAppleのサプライチェーンを管理してきた人の言うことですから、発売日にゲットできなかった人も、期待していいでしょう。
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