ケータイインターネットの登場から10年、携帯電話業界は大きな転換期を迎えている。
コンテンツへのアクセスは、これまで主流だったキャリアポータルを経由する方法から、検索やブックマークを経由する方法へと移行しており、通信速度の高速化がPCサービスのケータイ化を加速させている。
3.9Gの次世代高速通信規格として携帯キャリア各社が導入を予定しているLTEについても、この6月に総務省が各社の基地局開設計画を認定し、各社の周波数帯も決定。キャリアは、LTEや4G時代を見据えたプラットフォーム作りが必要になる。
日本Androidの会が主催したイベント「Android Bazaar and Conference 2009 Spring」の講演に登壇したKDDI研究所 開発センター執行役員 フロンティア開発部門担当の堀内浩規氏は、Androidの魅力は“変化に対応する能力”を持ち合わせている点だと説明。市場のニーズやトレンドがめまぐるしく変わる中、変化する外部環境に柔軟に対応できるプラットフォームが必要になっているとし、Androidがその役割を担えると期待を寄せた。
Androidケータイの市場投入については、KDDI 社長兼会長の小野寺正氏が“発売は来年(2010年)以降”とコメントしており、“日本のユーザーが喜んで使うオープンプラットフォーム端末”に関心がある開発者を募集するなど、着々と準備を進めている。
KDDIがこれまで提供してきた端末やサービスは、キャリアが決めた仕様に沿ってメーカーやコンテンツプロバイダが開発するという、クローズドな世界で展開されていた。端末やコンテンツは、キャリアがチェックを行った上でユーザーに提供されるため、品質や安全性が保証される半面、アプリで実現できることに制限があるなどの不自由さもあった。
オープンアプリは、全世界の人に開発の門戸が開かれていることから、世界から無数のアプリが集まってくる。アプリの開発には、キャリアが仕様を決めるような制限はなく、さまざまなWebサービスのAPIを組み合わせたアプリも開発できるなど、自由度が高い。一方でその品質は玉石混交であり、使う側には一定のリテラシーが求められることになる。
堀内氏は今後の方向性について「オープンとクローズの両方を、バランスを取りながら導入していく」と説明。キャリアの介入は最低限にしつつ、オープンにする部分とクローズにする部分を見極めて、併存させる考えだ。
堀内氏はAndroidに期待することとして、組み込み機器分野での普及を挙げる。
この3月、Androidを組み込みシステムで活用するための普及促進団体「OESF」が発足し、6月にはMIPS TechnoliogiesがMIPSアーキテクチャのAndroidプラットフォームをサポートすると発表するなど、組み込み機器への適用が始まりつつある。組み込み機器分野の製品は、車や家電など多岐にわたり、こうした製品への普及が進めば、Androidが業界を横断するプラットフォームにもなりうる。
そしてAndroidがさまざまな機器に搭載されれば、「携帯電話をハブとした組み込み機器同士の連携が容易になり、携帯電話を軸としたアプリの横展開も可能になる」(堀内氏)というわけだ。
こうした柔軟な連携を実現するためにも、アプリ内課金や通信料金との合算請求といった課金方式への対応、組み込み機器に適用しやすいUI、セキュリティの強化などを期待すると堀内氏。今後起こりうる変化をオープンな携帯でキャッチアップし、コンテンツを自由に流通できる世界を目指したいとした。
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