andronavi本格展開――Android向けマーケットで「変革」目指すビッグローブ

» 2010年08月24日 19時39分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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 「プロバイダとしての生き残りをかけたビジネスモデルの本格的な変革」――NEC ビッグローブは8月24日、Webサイトおよび専用アプリとしてトライアル展開してきたAndroid向けアプリマーケット「andronavi(アンドロナビ)」をグランドオープンした。アプリやコンテンツの拡充、使いやすさの向上、グローバル展開を今後の強化点に掲げ、サービスの普及を目指す。

 オープンに伴い検索機能を改善したほか、今後は電子書籍、ゲーム、エンターテインメント、ツールなどの各分野のアプリを拡充し、9月末までに約250本のアプリを追加。ラインアップを650本に増やす見通し。英語版のWebサイトもオープンし、12月には計200本の英語版アプリを展開する。中国語やフランス語など多言語対応も順次進める。

 中期目標として2012年度末には15万本のコンテンツをそろえる方針で、取扱高100億円の達成を“手堅い目標”として掲げる。また、同時期には250万人の有料アプリ利用者を見込み、ユーザー比率が国内2割、海外8割というグローバルなマーケットを目指すことも強調。インターネットの利用シーンが従来のPCからスマートフォンなど多様なデバイスに拡大する中、ISP事業などの中核事業に替わる“事業の主軸”として、アプリマーケット事業やコンテンツ配信事業を育てていく考えだ。

オープンなAndroidに期待し、オープンを売りにするandronavi

photo 飯塚久夫社長

 「昨今、KindleやiPhoneなどが出てきたが、私が驚いたのは製品の出来の良さといったことよりも、端末を買った途端にインターネットにつながるところ。昔はまずはプロバイダの契約が必要だった」――同社代表取締役執行役員社長 飯塚久夫氏の言葉からは、ISP事業者が直面する時代の変化がにじみ出る。無線ネットワークを使ったモバイル環境でのインターネット利用が拡大する現在、プロバイダを選択して自宅に回線を引き、PCをつないでインターネットを楽しむスタイルは、インターネット利用の選択肢の1つでしかない。

 こうした中、同社は生き残りをかけたビジネスモデルの転換を図るべくパーソナルクラウドサービスの提供に注力し、これまで培ってきたコンテンツ提供のノウハウを生かしながらandronaviの取り組みを加速させる考えだ。2012年度末の事業目標として取扱高100億円の達成を掲げるが、事業の柱として「なんとしても数年で数百億円規模に延ばしたい」というのが飯塚氏の本心だ。


photo andronaviのPC向けWebサイト

 andronaviは1月にアプリのレビューサイトとしてオープン。2月には無料アプリ、5月には有料アプリの配信を開始し、Androidアプリ紹介サイト兼マーケットとなった。日本Android端末事業の収益源は、アプリ販売のレベニューシェアや広告など。アプリ開発者は簡単な契約を結ぶことで、同社の提供する課金システムやアクティベーションによる不正利用防止機能を利用しながらマーケットにアプリを配信できる。アプリの販売手数料は契約内容にもよるが、アプリ価格の2割〜3割程度が目安という。andronaviの対応端末は国内のAndroidスマートフォン。11月に提供を予定するNEC製「LifeTouch」をベースにした端末をはじめ、タブレット端末への対応も進めるほか、海外端末にも順次対応していく。

 iPhone向けにアプリを開発・配信するなど、同社はAndroidに限らず幅広いデバイスに向けて新たな事業を展開する考えだが、とりわけAndroidのオープンなアプリ市場には大きなビジネスチャンスがあるとみる。Androidのアプリ市場はまだ成熟しておらず、Googleが提供する標準アプリマーケット「Android Market」も、目的のアプリが探しにくかったり、課金の仕組みが整っていないなど不便な点が指摘されている。同社はこうした状況も「チャンス」ととらえ、ユーザーや開発者の不満を解消するマーケットの構築を目指す。

 グランドオープンに伴い、注力するのがマーケットの品揃えの強化だ。電子書籍サービス「MAGASTORE」や往年の人気ゲーム「スペースインベーダー」、IPサイマルラジオが楽しめる「radiko」、PCの遠隔操作アプリ「LogMeIn」など、幅広いジャンルのアプリを順位追加する。Twitterクライアント「ついっぷる」など、ビッグローブが持つ有力サービスのアプリ化にも力を入れ、同社のオリジナルアニメ「ゆとりちゃん」などもAndroid向けに配信。andronaviでしか手に入らないアプリも出てくるという。2010年度中には4000本のアプリをラインアップする予定だ。

photo 人気アプリやコンテンツを抱えるさまざまなメジャー企業とアライアンスを組み、マーケットの拡充を目指す
photophotophoto 追加が予定されているアプリやコンテンツの紹介

 アプリの検索性の改善も図り、従来8個あった検索ジャンルは、6個のメインカテゴリーと24個のサブカテゴリーに細分化し、機種別に対応するアプリを検索できるようにもした。決済機能にはPayPal、BIGLOBEの決済システムを採用し、2011年にはアプリ内課金や、月額課金などの期間限定利用課金を開始する予定。課金手法を使い分けることで、ゲームのアイテム課金やレンタルビデオサービスなど、さまざまなアプリビジネスが可能になるとしている。10月には、アプリ登録・管理の一元化やコンテンツの翻訳対応、ダイレクトメール配信などのプロモーション支援を行う開発者向けサービス「andronavi Developer Service(仮称)」も提供する。

photo 古関義幸常務

 サービスの海外展開にも着手し、英語版webサイトをグランドオープンに合わせて開設。12月には英語版アプリを200本追加する。ユーザー比率は2012年度末に国内2割、海外8割になると同社は予想。こうした大幅なグローバル化を見込むのは、同社がiPhone向けにオリジナルアプリを出した際の手応えがあってのことだ。「『うでたて道場』というアプリは、海外向けマーケティングを全くせずに売れた」と、取締役執行役員常務の古関義幸氏は話す。同アプリの売上の5割は海外から。「当初は日本でほとんど売れず、まずイギリスで売れ、アメリカに飛び火した。そのあと日本に逆輸入されるようにメディアに取り上げてもらい、ヒットした。国内の4倍を見込むのはこうした経験から」(古関氏)。

 また、海外展開においては「特に営業面でパートナーが必要」(飯塚氏)とし、キャリアやプロバイダーなど、現地の企業とアライアンスを組む構想もあるようだ。「いずれ具体的な発表ができると思っている」(飯塚氏)


photo Android端末に最適化された英語版andronavi

 Androidのアプリマーケット事業は通信キャリアも参入するなど競争の激化が予想される。古関氏は、キャリアのマーケットがキャリアユーザーの利便性を高めることを目的としているのに対し、andronaviは端末の対応キャリアに関係なく利用できる「オープン性」が強みになると話す。また、パートナー企業とのタイアップやきめ細かなマーケティングサービスも、同社サービスの特色として訴求していく考えだ。2012年には国内シェア20%、海外シェア10%を狙うという。

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