“ネットの声”を位置とジャンルで分類、新ビジネス創出へ――riporaのビジネスモデル

» 2011年08月29日 16時42分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo riporaについて説明するmaqs COOの木村潤氏

 消費者が投稿するレビューやリポートは今や、商品・サービスを選ぶのに役立つ指標の1つになっている。Amazonや価格.com、楽天市場、食べログなどの大手サイトでも活用が進み、人々の製品選びに一役買っている。

 そして、こうしたデータの活用を後押ししているのが携帯電話やスマートフォンなどのモバイル端末だ。大きな画面と高性能なカメラ、GPS機能を備えた端末の普及により、誰もが思い立ったその場でリポートを投稿できるようになり、情報の閲覧も時間や場所を選ばず行えるようになった。

 この、新たな情報源として注目が集まる消費者リポートを生かしてエリアやテーマごとのランキングを生成し、新たなビジネスの創出につなげようという取り組みを始めたのがmaqsだ。

 同社は9月1日から、リポートの投稿や閲覧、評価に対応し、リポートを集計した各種のランキングを提供する情報サービス「ripora」をオープン。グルメ情報を皮切りに、順次アートやショッピング、ライフ、エンタメ、レジャーなどのカテゴリーを追加する計画だ。

 riporaとはどんなサービスなのか、riporaプラットフォームを運営するmaqsは、ユーザーが投稿するリポートをどんなかたちで収益に結びつけようとしているのか――。サービスの概要と事業モデルを見ていこう。

情報サービスとしての「ripora」

 立ち上げ当初のriporaは、フィーチャーフォンやスマートフォン、PCなどのデバイスから利用できるユーザー投稿型のグルメ情報サービスだ。

 大きな特徴は、位置情報付きの投稿リポートが、テーマごとのランキングとして表示される点にある。テーマは「オススメアキバ飯!」「ディープグルメ中央線」「赤坂限定大人のBAR」などのエリアを限定したものから、ジャンルで分けた「魅惑のエスニック料理」「異国の檄辛カレー」などといったものまでさまざま。テーマが並ぶ画面はさながら、ミニグルメガイドの本棚といった様相だ。

 riporaのユーザーは、“今いる場所の近くにある店”という探し方だけでなく、テーマやリポート、リポーターのランク順などのさまざまな検索手法で、自分に合ったグルメ情報を探すことができる。

Photo 場所やジャンルごとにさまざまなテーマが用意されるのが特徴(画面=左)。タップすると各テーマのグルメリポートが評価の高い順に並ぶ(画面=中)。リポートはTwitterやFacebookでシェアできる(画面=右)
Photo グルメリポートは、今いる場所から探したり、キーワードの入力で探したりもできる。リポーターやテーマ、リポートのランキングから探すことも

 グルメ情報の投稿は、riporaに登録したユーザーなら誰でも行え、最初は「ルーキーリポーター」からスタート。リポートの投稿数や評価に応じて独自ポイントの「リポイント」が付与され、規定のポイントに達するとランクが上がる仕組みだ。ランクはルーキー、ベテラン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、殿堂入りの6段階。投稿者への特典は、懸賞やキャンペーンへの応募、ripora事業への関与、出版事業への参画などが用意される。

Photo マイページで自分のリポートを確認できる(画面=左)。ブログなどのメディアを持っている場合は、リポートに表示することも可能(画面=中)。右は投稿画面。個別の料理を評価するスタイルだ(画面=右)

 riporaの特徴であるテーマは、運営会社が提示する「公式テーマ」のほかに、ripora会員が作成できる「公募テーマ」を用意。テーマを公募することで、より細分化されたテーマやニッチなテーマを集めるのが狙いだ。テーマの発案者は、テーマオーナーとしてランキングの結果を元にしたコミュニティを運営でき、集まったデータを利用した収益化の道も用意されている。

 なお、CGMサービスは情報が集まらないと成り立たないことから、運営会社のmaqsは約7000人の会員を擁する日本フードアナリスト協会と提携。食に対する関心が高い会員たちのリポートをベースに、投稿のすそ野を広げていく考えだ。

riporaプラットフォームの事業モデルとは

 riporaプラットフォーム上には、さまざまなビジネスの可能性がある――。riporaを運営するmaqsでCOOを務める木村潤氏は胸を張る。

 1つは広告やアフィリエイト、通販連動などのビジネスだ。リポートの投稿が増え、それに伴って閲覧者やインプレッションが増えれば広告ビジネスが成り立つ。また、アートやショッピング、エンタメなどのジャンルが立ち上げれば、ランク入りした商品に通販サイトへの導線をひくことで、アフィリエイトなどのビジネスが可能になる。すでにネット通販大手の楽天と連携することが決まっており、他の通販ビジネスとの連携も進める考えだ。

 2つ目はランキングデータやアンケートデータの販売。ripora上で生成される多種多様なランキングデータを、必要とする企業や団体に販売するビジネスだ。アンケートについても、「10の商品を提示し、気に入った順にランク付けするような」(木村氏)ランキングベースのアンケートなら、riporaの仕組みを使って容易に作成できるという。

 3つ目は、ランキングのコンテンツを活用した出版ビジネス。riporaプラットフォームの特徴であるテーマごとのランキングの中から、人気があるものを選んで電子書籍化するという取り組みだ。riporaプラットフォーム上では、会員なら誰でもオリジナルのテーマを作成するチャンスがあり、作成したテーマをもとにしたコミュニティを作れる。このコミュニティに集まった情報をベースに、電子書籍を作成しようという取り組みだ。maqsは電子書籍化向けて、すでに廣済堂の協力を取り付けるなど、準備を進めている。

 4つ目は、riporaの仕組みを応用したキャンペーンやプロモーションの提供だ。企業はripora上で、新製品をからめたアンケートを実施したり、PR用途のテーマを設定することが可能だと木村氏。自社の会員やripora会員に商品を訴求できるのはもちろん、Twitterなどを介したバイラル効果も期待できるという。

 5つ目は、riporaを通じたリアル店舗への送客ビジネス。“肌にいい温泉ランキング”など、ひきがあるテーマを設定することで旅館やホテルへの送客につなげられるという。

 さらに同社では、親会社であるオーリックのアクセス解析技術を生かしたサービスも提供する計画だ。riporaプラットフォーム上では、常に会員のログに基づいたデータ解析を行っており、すでに会員組織を持つ企業がriporaと提携した場合には、その企業会員の行動結果から得られたマーケティングデータをフィードバックするという。

 木村氏はriporaプラットフォームについて、さまざまな企業や団体との結びつきを強めながら“相互誘導、相乗効果が発揮できる”プラットフォームに育てたいと話し、特にタウン誌やフリーペーパー、地方のテレビ、ラジオ局のように、特定の地域に顧客を持ち、情報を介在させてビジネスを展開する業種に向いているという。「各地のプレーヤーが集まり、投稿情報やデータの利用で提携することで、全国ネットワークになればいいと考えている」(木村氏)

 riporaはプラットフォームの利用自体には料金がかからず、個人/企業にかかわらず任意のテーマを無料で作成できる。運営会社のmaqsは、プラットフォームを通じて創出されたビジネスについてレベニューシェアすることを基本方針としており、企業は初期投資の必要なく、新たなビジネスの可能性を探れることになる。

 ネットにあふれる消費者の声をエリアとジャンルでキュレーションし、新たなビジネスの創出につなげようという、riporaプラットフォームの今後に注目したい。

photo ripora
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