大手ニュースサイトの注目を集めるようになったのが「プロ野球Freak」だった。ロプロスさんの趣味が野球観戦だったので元々は「自分で使うために作った」という。最近は野球選手もブログを始めているが、球団ごとにまとめてそれらのブログを見られるサイトがなかった。そこで選手のブログやスポーツニュースなどを好きな球団ごとに見られるサイトを作ったらファンの人に見てもらえるのではないか、と考えたのだ。その目論見は見事に当たり、シーズン中はYahoo!ニュースでも取り上げられるほどになった。
さらに姉妹サイトとして作った「プロ野球データFreak」ではさらに突っ込んだデータも見られるようにした。「プロ野球の世界ではセイバーメトリクスという考え方があって、データをもとにプロ野球を楽しもう、という人がたくさんいます。しかしそうしたマニアックなデータ指標をまとめて見られるサイトがなかったのです」。サイト開発の経緯をロプロスさんはそう話す。こちらも「プロ野球Freak」と併せて野球ファンからのアクセスを多く獲得している。
「ただ、データとにらめっこしながら緻密なサイトを作っていたら息抜きをしたくなってきました」というロプロスさんが続いて手がけたサービスが「※ただイケ」だ。これは投稿された文章に「※ただしイケメンに限る」を追加するだけのシンプルなサービスだった。息抜きで作ったというだけあって、土日のみで作り上げたという。
「偉人の名言や気になる女性の思わせぶりな言葉も、たった1文付け加えることで絶妙な絶望感が味わえる」というコンセプトがウケて、彼の作ったサービスの中で初めて「はてなブックマーク」のホットエントリーの首位まで上り詰めた。またITmedia Newsの「ねとらぼ」をはじめ、各種ニュースサイトも取り上げ、1日10万ページビューを超えるアクセスも記録した。「くだらないけど面白い」といった声が多く届いた。たくさんの人が楽しんでくれているという実感を糧に、ロプロスさんはさらに開発にのめりこんでいくのである。
「旅が趣味」というロプロスさん。4カ月かけて日本全国をバイクでまわったこともあるという。そのロプロスさんが2009年春ごろにはまり始めたのがTwitterだった。旅行中に「〜なう」とつぶやくだけで友達に近況を伝えられ、旅行がいっそう楽しくなったのだ。ただ、そうした楽しかった旅のつぶやき記録を旅行後にうまくまとめて見る方法がなかった。
そこでロプロスさんが考えたのが、Twitterのログをブログ風にまとめ、その日に何をしたかをざっと見渡せるツールだ。これなら旅の記録を振り返るのにも便利だ。しかしそのコンセプトをもうちょっと広げてみたらさらに良いのでは、と思いつく。「これだ! と思って最初は『たびったー』という名前まで考えたのですが、もっと汎用的にしたらいろいろな用途に使ってもらえるのではと考えたのです」。そこでできたのが「Twilog」だ。
「そろそろ新しいことを勉強したい」と思っていたロプロスさんは、Twilogをそれまで使っていたPHPではなくて、Rubyで作ることに決めた。「何かモテそうかな、と思ってRubyにしました(笑)」と軽い気持ちで選んだのだが、やはり最初は大変だったという。「PHPならすぐに書けるのに、Rubyだとどうやるんだ!? と悩むことも多かったです」。しかしPHPに“逆戻り”しては新しいことにチャレンジした意味がない。「なかば意地になって」勉強し続けたら何とか分かるようになってきた。
「今振り返ると勉強してよかったです。これから作るWebサービスもRubyで作ります。やっぱり純粋なオブジェクト指向がすばらしいというか、PHPで数行かかるところも1行で書けてしまったり、かゆいところに手が届く言語ですね」。「よく言われることですが」と前置きしつつ「やっぱりRubyは書いていて楽しい」という。
そうして作り上げたTwilogはまたしてもはてなブックマークでホットエントリーの首位に。またTwitterのリプライやRTを通じても広まり、ロプロスさんのTwitterアカウントにも「便利ですね!」「ありがとう!」といったたくさんの声が直接届いたという。Twitterの力をまざまざと感じた経験だった。「普通Webサービスの運営者にメールしようとは思わないですよね。でもTwitterは違います。つぶやくだけなので気軽に気持ちを伝えることができます」。
現在は数万人のユーザーを抱えるTwilog。ロプロスさんも「作った当初は1年かけて1000人が目標だったのですが、一晩で達成できました」とうれしそう。現在もメンテナンスやバージョンアップに熱中している。「ほっといたら朝から晩までコードを書いているかもしれませんね」
個人で開発しつつも、次々とヒットを飛ばすロプロスさん。今では1日のほとんどをWebサービスの開発に費やし、アルバイトもあまりしていない。サイトに貼り付けた広告の収入で生活費をまかなうことができつつあるからだ。「僕みたいに学歴もなくて、アルバイトを転々としてきた人でもこうしてWebサービスを作って生活できています。こんな僕でもできたのだから、インターネットってやっぱりすごいですよね……」。僕がやってきたことがほかの人の励みに少しでもなればうれしいです――。ロプロスさんはそう言って、インタビューを締めくくった。
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