iPadと同様、自炊データを快適に読めるか否かは、どのアプリを選ぶかによっても大きく変わってくる。ここでは自炊データのビュワーとして使えるiPhoneアプリの中から、「ComicGlass」と「GoodReader」、そして最近登場した伏兵の「ZumoCast」の計3本を紹介しよう。
iPhone向けのビュワーアプリとしては、長らく「iComic」が定番の地位を占めていたが、最近になって人気を集めているのがこの「ComicGlass」。名前の通りマンガの閲覧を目的としたアプリで、ページめくりのアニメーションはもちろん、既読位置保存、左右綴じの切り替え、タップおよびスワイプの両対応など、読書ビュワーとしての機能を豊富に取りそろえている。ZIP圧縮したJPGのほかPDFの閲覧にも対応する。
データの転送方法についてはいくつかの方法が用意されているが、なかでも専用のクライアントソフトをPC側で起動しておくことで、いつでもローカルストレージからデータを取り込める機能は秀逸。読みたいデータをiPhone側からの操作だけでコピーでき、表示することができる。

PC側でクライアントソフトを起動しておけば、ComicGlassからの操作でデータをiPhone側にコピーすることが可能。もちろんPCはつねに起動状態にあることが前提。また原則LAN内での利用に限られる。クライアントソフトの画面。上記の設定では、Uドライブの「_book」というフォルダ内にあるZIP圧縮ファイルやPDFファイルを、ComicGlassでIPアドレスを指定して呼び出し、iPhone側にコピーすることができるiPad編でも紹介した、ファイラーとして定評のある115円の有料アプリ。ビュワーとしての機能を豊富に備えており、PDFのビュワーとして愛用者も多い。
このアプリの優れた機能の1つにトリミング機能がある。ページの上下左右を省いて表示できるので、余白部分の大きなページであっても、本文個所を限りなく拡大表示できるというわけだ。画面が小さなiPhoneでこそ生きる機能と言ってよいだろう。
また、データの転送方法が多彩である点もメリットだ。なかでもDropboxによるデータの転送は、さまざまなデータを取っかえ引っかえ閲覧したい場合に重宝する。もっともDropboxの同期対象PCで軒並みデータを同期してしまうのは善し悪しだと言える。
難点としては、もともと本のビュワーとして作られているわけではなく、ドキュメントのビュワーとしての性格が強いため、ページめくりやスライドなど、専用ビュワーのようなエフェクトに欠けることだろうか。またZIP圧縮のJPGには対応しないので(普通に解凍してしまう)自炊データのビュワーとしてはPDF専用ということになる。

「GoodReader」の起動画面。余談だがアプリ名は半角スペースを含まず「Good」と「Reader」を続けて書くのが正しい。「GoodReader」でページを表示したところ。これはツールバー類が表示された状態だが、タップすれば画像のみが全画面に表示された状態になる。デフォルトのページ送りは上下フリックとなる最近になって登場した伏兵が「ZumoCast」だ。もともとDropboxやSugarSyncといったファイル同期サービスに近いのだが、クラウド上にストレージを持たず、リクエストが発生するたびにローカルのストレージからデータを転送するのが特徴だ。「Cast」という単語がサービス名に入っていることからも分かるように、ストリーミングで転送してくれるのである。
Windows/Mac OS用のクライアントソフトのほかiPhone/iPad向けのアプリが用意されており、本来は動画や音楽のストリーミング再生を目的としているのだが、このソフトを使えばローカルストレージ内にあるJPGデータをiPhoneでストリーミング表示できてしまう。
つまり前述のGoodReaderやComicGlassでは成し得なかった「いちいちiPhoneにコピーせずにデータをそのまま表示」というのができてしまうのである。実際にやってみると分かるが、これはちょっとしたカルチャーショックだ。
しかも元来がストリーミングソフトであることから、Wi-Fiはもちろん3G回線にも対応する。つまり自宅LAN上はもちろん、外出先からiPhoneを経由して自宅PC上にあるJPGデータを表示できてしまうのだ。
読み込み時にさすがに一瞬は待たされるものの、実用には困らない。わざわざファイルをiPhoneに転送しなくて済むというメリットと相殺してじゅうぶんにお釣りが来るレベルだ。自宅PCのHDD内にある自炊データ中から好きなものを自由に選び、iPhoneにコピーすることなく外出先から読めるというのは、ほかのアプリでは味わえない感覚だ。
読書ビュワー専用のアプリではないため、ComicGlassなどの専用ビュワーに比べると読書機能は劣る。具体的には、既読位置を保存できなかったり、左右綴じの切り替えができないといった点だ。言うまでもないが、通信回線がつながらないとデータが取得できないので、地下鉄など電波状況の悪いところでは利用できない。また、ローカルのPCをつねに起動し、クライアントソフトを起動しておく必要もある。こうした特性を理解した上で使うべきだろう。
対応するファイル形式は「非圧縮のJPG」となる。つまりZIP圧縮したJPGデータをそのまま読むことはできず、フォルダを作ってそれらを解凍しておく必要がある。PDFも表示可能なのだが、ペラペラめくるという動きには程遠いので、もしPDFのデータを読みたいというのであれば、Acrobatの「書き出し」→「画像」→「JPG」の機能を使い、JPGデータをフォルダに書き出しておこう。

ページを表示した状態。これはツールバーが表示された状態だが、タップすれば画像のみが全画面に表示された状態になる。左右フリックでページ送りが行えるなど、操作感はカメラロールに入れた写真をペラペラめくっている状態に近い
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