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» 2012年01月25日 11時30分 公開

説明書を書く悩み解決相談室:動機のない研修なんてムダだよね (2/2)

[開米瑞浩,Business Media 誠]
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研修屋さんはその「タイミング合わせ」に苦労する

 もしかしたらこの「必要と感じるタイミングを合わせる」のは、1カ所に集まって行う集合研修を成功させる最大の難関かもしれません。このために、研修講師は象徴的エピソードをよく使います。要は、誰もが「そういえばそんな問題があった」と思えるような象徴的なエピソードを1つ用意しておいて、最初にその話をして各自の実体験を思い出してもらい、問題解決の必要性を認識させたところで、解決の方法論を語るという手法です。

 これはこれで集合研修をする上で有益なノウハウなのですが、実際にうまくやるのはなかなか大変です。象徴的エピソードの選択がまずいと「あ、そういうことあるある」と思ってもらえませんし、各自の「体験」から時間がたつと「よく覚えてない」となりがちです。

 そこで、研修講師はこの壁をクリアするために四苦八苦するのですが、逆にスキルを学ぼうとする現場の人間の立場で考えてみましょう。

 もし上図中の「Aさん」の立場だったとします。Aさん自身が何らかの困った体験をしたことがあって、それを解決するためのスキルを集合研修の場で学べるとします。

 研修ってそういうもの……と思ってしまいそうですが、でも本当にそれでいいのでしょうか? 図では時間軸上に「発生時」と「研修時」と2点のタイミングを書きましたが、研修時まで待つ必要はあるのでしょうか。困った体験の発生時にその場で学べれば、その方が理想的なのではありませんか?

 そんなの無理だよ、と思うかもしれません。大抵の場合はAさんやBさんがそれぞれ個別に遭遇する「困った……」の現場には、教えてくれる先生がいません。先輩や上司が教えられる分野だったらともかく、そうでないテーマについては「適当なタイミングで先生を呼んできて集合研修をやろう。それまで、待ってて」ということになりがちです。

 でも本当にそれで間に合いますか? 研修の機会があればともかく、実際には自助努力になってしまう職場も多いですし、たとえ集合研修があったとしてもタイミングのずれ問題はどうしてもつきまといます。研修プログラムそのものが良かったとしても、それがAさんの役に立つとは限らないのです。

 かくいう私はその集合研修を仕事にしているので、何やら自己否定するようなことを書いてしまってますね。でも、本当の話です。もちろん、講師をするに当たってはタイミングのずれを埋めるために心血を注いでいますが、どうしても埋めきれない部分は残ります。今回はその「研修屋さんの工夫では埋めきれない部分」について書いています。

 「学び」というのは、基本的には日常業務を通じて得ていくもの。

 「困った」体験はその場でリアルタイムに解決策を探り、自分自身で教訓化していくべきもの。

 これが基本だと私は思います。「発生時」にまず自分で考えるのが大事で、集合研修はそれを補完する、補助的な役割ぐらいに思った方がいいんですね。

気を楽にして「自分で考えて」みませんか

 まあ、言うだけなら簡単でも実行するのは大変なのが世の常で「まずは自分で考えてみる」のもそれはそれで難しいのは確かです。ここで、この連載のテーマである「分かりやすい説明書」の話に戻りますが、テクニカルライターでもない普通の職種の人が「これ一体どう書けば分かりやすいんだろう?」と悩む場面に遭遇して、まずは自分で考えてみようとしても、自力では解決策を見つけられない、という場合は多いと思います。

 でもそこで、「やっぱり分からない……。ああ、がっくり……」なんて気を落とさないでくださいね。

 実は今回言いたいのは、その一言です。

 取りあえず知っておいてほしいのは「自分で考えてみても、分からない」のはごく普通のことだということです。最初は誰でもそうなんです。でも、それでも少しずつ、分かる範囲で小さな解決を積み重ねていくことで、だんだんとできるようになっていくものです。なので、その「分かる範囲で少しずつ」の「やる気」を保つのが肝心です。

 今回はそんな「やる気を保つ」ために効果的な幾つかの気配りについて書く予定でしたが、長くなりましたので稿を分けます。

  • 数人程度のチームの1人として仕事をしている
  • 説明書を書くのは苦手だけれど、少しでも上達したい
  • でも、1人でコツコツと地道な努力を続けられる自信はない

 そんな人を想定して、この状況にピッタリの「分かりやすい説明書を書く力を伸ばす努力を続けるためのやる気の保ち方」について、次回書きますのでどうぞご期待ください。


 当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」というご相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」という例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp)。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。

 なお、当記事についてのご意見ご感想ご質問等は「twitter:@kmic67」宛でも受け付けております。中には記事では書ききれない情報もあります。物足りなく思った時はぜひ「twitter:@kmic67」宛に質問を飛ばしてみてください。

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 著者・開米瑞浩氏が講師となって「アイデア・思考を見える化」をテーマとするセミナーを開催します。

筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』『図解 大人の「説明力!」』、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』


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