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» 2012年07月18日 17時10分 公開

説明書を書く悩み解決相談室:コジツケでもいい、自分で考えることに意義がある (3/3)

[開米瑞浩,Business Media 誠]
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記憶に残る思考スタイルは?

 もう一度3つの思考スタイルを掲示しますが、

  1. 自分の思い付く範囲で、適当な名前を付けてしまう(コジツケ型)
  2. 出題文に登場する植物に関する情報を調べに行く(リサーチ型)
  3. 講師が「考え方」を解説してくれるのを待つ(オシエテ型)

 オシエテ型だと、エピソード記憶が生まれません。エピソードというのは「体験と感情をともなう記憶」であり、自分自身で対象物に接してあれこれ試してみる、遊んでみる中から生まれてきます。

 オシエテ型は受動的すぎて「ワクワクドキドキ」とか「へええーー!!」という感情が生まれにくいわけです。

 それに対して、コジツケ型とリサーチ型はいずれも能動的なので「おお! なるほど、やっぱり!」のような感情を喚起しやすいですね。

 ただし、コジツケはどうしても不十分な知識でコジツケるわけですから失敗しやすいです。知らないことを自覚して調べに行こうとするリサーチ型に比べるとどうしても間違いが多くなります。

 ところが、間違いは人間が成長するためには不可欠なものなんです。今回例に挙げた「甘酸っぱい果物科」というコジツケにしても、それで満足して終わっていたら成長しませんが、「いやいや、まさかこんな冗談みたいな分類じゃないだろうから、まじめに調べるか」とそこでリサーチを始めればいいわけです。コジツケは失敗することが多いのですが、失敗があるからこそ、その後の成功が感情をともなう記憶になり、忘れにくくなります。

 ちなみに、甘酸っぱい果物科というコジツケにしても、こういうコジツケをすることで「待てよ? 果物の甘みと酸味ってどうして決まるんだろう?」と疑問が生まれ、それが新たなリサーチの出発点になることがよくあります。これらのメリットを考えると、自分の思い付く範囲で適当な名前を付けてしまうコジツケもなかなかばかにできない、重要なことなんですね。

 こういうコジツケがよく必要になるのが、抽象化をするときです。「イチゴとリンゴとナシとサクラ」をまとめて「バラ科」とするのも抽象化だし、「ボーダーコリーとコーギーとシェトランド・シープドッグはいずれも牧羊犬」とするのも抽象化です。

 抽象化は、複数のものに共通する性質に注目し、それを一言で表すことです。これによって、複数のものをグループ化して覚えやすくしたり、共通の性質を強く印象付けたり、因果関係の分析を単純化して考えやすい形で行えるという効果があります。

 単に抽象化と言うと、何か特別なことのように見えるかもしれませんが、要は共通の性質に注目して名前を付けるだけのことで、決して特別に難しいことではありません。しかも、コジツケから始めても構わないわけです。コジツケも、人が考えるための大事なステップです。大いにコジツケをしてみてください。


 当連載では、「分かりにくい説明書を改善したい」相談を歓迎しております。「改善案のヒントがほしい」例文があれば遠慮無く開米へお送りください(ask@ideacraft.jp )。今回のような連載での紹介は、許諾をいただいた場合のみ、必要に応じて内容を適宜編集したうえで行います。

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筆者:開米瑞浩(かいまい みずひろ)

 IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』『図解 大人の「説明力!」』、『頭のいい「教え方」 すごいコツ!』


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