「反対意見」は、言葉になっていない部分を吟味する発想をカタチにする技術

せっかく作り上げたものを否定されると、自分の正しさを証明したくなりがちです。しかしそれでは良くなるものも良くなりません。反対意見に対して腹を立てず、それを取り込むヒントをご紹介します。

» 2014年03月06日 11時00分 公開
[吉田照幸,Business Media 誠]

集中連載『発想をカタチにする技術』について

 本連載は、2013年11月14日に発売した吉田照幸著『発想をカタチにする技術 新しさを生みだす“ありきたり”の壊し方』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

 どんな会社でも、面白いことは始められる! あの「サラリーマンNEO」を生み出し、「あまちゃん」を担当した異色のNHKディレクターの仕事術!

 面白いアイデアを思い付いても、それを伝えて思惑通りに実現していくのはなかなか難しいもの。ともすると「前例がない!」「そんなのできない!」という声にかきけされてしまいます。

 そんな中で、会社からも多くの人からも認められるものを作るには「きちんと人に伝えること」「自分の意思を通すこと」でも「独りよがりにならないこと」が大事です。

 さらに、そのアイデア自体が画期的であれば、一番です。本書では、30代まで芽が出ず退職を考えていたという、異色のNHKディレクター吉田照幸氏(2013年9月よりNHKエンタープライズ)の番組制作での経験を交えながら、尖っているのに愛される企画の作り方や通し方、アイデアの発想法などを紹介します。


 番組を作る上で、重要な工程に編集作業があります。ドラマやコントの編集って、台本通りつなげればいいんでしょうと思うかもしれませんが、違うんです。シーンの頭をどんな画ではじめるかでも全然違いますし、アップにするかルーズショット(主となる被写体とその背景も充分入れて撮影すること)にするかでも、伝わるニュアンスは変わってきます。編集には無数の選択肢があります。なので非常に時間のかかる作業です。当然見る人によって見方も大きく変わります。

 編集したものをプロデューサーが見るのが試写です。撮影したものを良くしようとして試写しているのですから、必然的に意見はほとんど否定的なものです。

 「分からない」「面白くない」「伝わらない」

 自分としてはいいものを作ったと思って見せるわけですから、この否定的な意見は、自分に対してのダメ出し、反対意見なわけです。すごい労力をかけてきた分、反抗したくなります。でも僕は、試写では絶対に自分の意見を言わないと決めています。ともかく、腹が立っても(←最近は立ちませんが)、聞く、聞く、聞く。試写に多くの人がいる場合は、その人ごとに項目を分け、それぞれの意見を、メモする、メモする、メモする、を繰り返します。

人の意見を聞くときのメモ

 相手に反抗したくなるのは、「どっちが正しいのか」「自分の方が正しい」というエゴの戦いです。これだと「番組を良くする」から離れてしまいます。だから無益な戦いはしません。

 そしてもっと大事なことがあります。

相手の否定的意見を、そのまま受け取らない。

 あるシーンが面白くないと言われた。じゃあ、そこを直せば面白くなるか。原因はそれ以前のシーンにあるかもしれない。

 企画書でも、ある部分が全然分からないと言われると、そこを直そうと必死に考えませんか?実際はそれ以前のページに、流れをロストさせる余計な情報や文言があったりするわけです。

 だから相手から意見をもらったら、文言通りに受け取らず、何がそうさせているかを、一度自分の中に取り込みます。

 多人数の場合は、メモを見て、共通項を見つけます。そして検討します。本当の病巣は何か。

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 あまちゃんの第11週でのことです。家に引き込もっていた友達を元気づけるため、主人公がライブを企画します。主人公は友達を無理やり会場に連れていきます。友達は、ライブに出ることを決意します。心境が変化する大事なシーンなのに、試写での意見は、「なんか簡単に変化したように見える」でした。

 「簡単」という言葉をよく吟味する。そう彼女の心境は複雑なはずなのに、簡単に変わったように見える。ならば複雑に見せるためには……。

 解決したのは編集マン(映像の編集をする人)のアイデアでした。この回の最初の台本にはない、友達がふさぎ込むシーンを入れました。すると、全然見え方が違ってきます。彼女が苦悩した時間を、見る人が意識するようになったのです。

 さらにこのシーンでは、友達にとても影響力を持つ人物とのシーンを回想で挟み込みました。すると彼女の戸惑い悩む気持ちがより深くなりました。

 反論は、より良くするヒントです。

 でも、ただ真に受けて対処すると、おかしな方向に進みます。真摯に受け止めて、その原因を探り、解決することです。

 人の行動は習慣で決まります。「相手に批評される場では、絶対に反論しない」と決めておけば、だんだん腹も立たなくなります。

今回のPOINT

反論の真のポイントを突き止める


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