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» 2021年10月04日 13時50分 公開

経済安全保障の重要性を早くから指摘 気鋭の経済ジャーナリストに「米中経済戦争」による日本企業への影響を聞いたサイバースパイが日本を破壊する【前編】(3/4 ページ)

[田中圭太郎,ITmedia]

楽天、LINEをめぐる問題

 米中対立が深まる中で、21年になって日本で問題になったのが中国のITジャイアントであるテンセント子会社による楽天グループへの出資と、LINEが中国の会社にシステム開発を委託していたことだ。本書ではこれらの問題について詳細に言及している。

 テンセント子会社による楽天への出資は、21年3月12日、第三者割当増資による資本増強の発表で明らかになった。増資に応じたのは日本郵政が約1500億円、テンセント子会社が657億円、米流通大手のウォルマートが166億円だった。

 問題点は2つある。1つはテンセント子会社からの出資が、20年6月に改正された外国為替及び外国貿易法(外為法)に抵触するのではないかという点だ。改正外為法では日本企業が外国企業から出資を受ける場合、事前審査の対象となる出資比率が10%以上から1%以上に厳格化された。さらに防衛やサイバーセキュリティ、電力など「コア業種」の518社を重点審査の対象とし、その中に楽天も含まれていたのだ。

 井上氏は、外為法の改正は米国による中国対策の影響を受けたものだと解説する。米国では中国企業によるインフラや不動産関係の企業の買収を避けるため、外資による投資が規制強化された。その後EUでも規制が強化され、先進7カ国(G7)の要請で日本も外為法の改正に至った。

 そこでもう1つの問題点がある。楽天が19年に通信ネットワーク技術に強い米国のアルティオスター・ネットワークス(RTO)に出資していたことだ。にもかかわらず、楽天がテンセント子会社から出資を受けたことに「米国側が非常に怒っている」と井上氏は指摘する。

 「楽天がRTOに出資する際、米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の審査を受けました。楽天は中国の匂いがしないということで出資が認められました。それなのに中国企業から出資を受け、戦略的な関係を結ぼうとしていることに、米国側は非常に怒っています。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は今後米国の監視対象になり、携帯電話は米国の中央情報局(CIA)に盗聴されると思った方がいいというのが政府関係者の見解です」

日本郵政の増田寛也社長(左)と、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長(会見より)

 一方、LINEの問題は3月に朝日新聞朝刊がスクープとして報じた。LINEが中国の会社にシステム開発を委託し、中国人エンジニアが日本にあるサーバにアクセスして、個人情報に触れられる状況にあるとしたのだ。

 中国では17年に施行された国家情報法によって、当局が命じた場合は企業が情報収集の義務を負うことになった。データを盗んでいる証拠はないものの、盗まれる可能性は否定できない。

 さらに6月になって、親会社のZホールディングスが設置した第三者委員会によって新たな問題が明らかになる。LINEは利用者が通信アプリでやりとりした画像や動画を韓国のサーバに保管しているのに、政府に「データは日本に閉じている」と虚偽説明をしていたのだ。井上氏は独自の取材から、LINEや親会社のガバナンスに注目している。

 「私は状況的にはLINEは意図的にうそをついた可能性が高いとみています。LINEは主要役員12人のうち、6人が韓国人です。親会社のZホールディングスは日本の上場企業ですが、さらにその上には、ソフトバンクと韓国NAVERが50:50で出資するAホールディングスがあります。

 50:50の出資比率を彼らは対等な精神だと言っていますが、何かあったときに重要な事項を決定できません。根底にあるのはZホールディングスのガバナンスの問題であり、ソフトバンクがNAVERを日本のルールに従わせるのかどうかの問題だと思っています」

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