JR東海グループが仕掛ける催事戦略 東京ラーメンストリートに行列絶えぬ理由第3弾は栃木県「麺屋ようすけ」(4/5 ページ)

» 2022年02月24日 18時43分 公開
[河嶌太郎ITmedia]

「仕事で食べに行けていいよね」に反論

――第7弾まで、もうお店は決めているのですか。

 ラーメンストリートに出店いただいている「せたが屋」の前島司代表とも相談して進めています。どういうメンバーでどういう構成でいこうという大枠は決まっています。第何弾はこういうラーメンでいこうというコンセプトまでは出来上がっているのですが、具体的にどこの店舗さんに出店いただけるかまでは、全てが確定しているわけではないですね。

――実際にお店を決める際に、笠井さんはお店に足を運んで実際に食べて、そのおもてなしや佇(たたず)まいも見ながら決めるそうですね。

 東京ラーメンストリートだけでなく、ラーメン以外の東京駅一番街の飲食店街である「にっぽん、グルメ街道」の店舗決めにも僕は携わっているのですが、コンサル会社さんに入ってもらって提案された店から選ぶ形はとっていません。自分たちの足で各地の名店を訪ねて、直接交渉するスタイルなのです。どれも、東京駅を訪れるお客さまにとって、触れたことがなかったり、新しい出会いになったりするお店選びを意識していますね。

――どういった基準でお店を決めているのでしょうか。

 東京駅という特別な場所で商業施設を営んでいるので、どこの商業施設にも入っているようなお店があってもあまり魅力がないと考えています。例えば広島のお好み焼きのお店を入れたいと思ったら、広島に行く前に事前に5〜6店舗に候補を絞り込んでおきます。

 その候補に1日2日の滞在期間で出張を組んで足を運びます。現地に行ったら、お店で身分を明かさずに実際に食べたり、お店の様子を見たりするだけでなく、タクシーの運転手や街の人など、地元の人の評判も聞きながら、候補を絞り込んでいきます。

――2日間で6食同じものを食べるとなると、3食同じものを2日間食べ続けるわけですよね。

 「仕事で食べに行けていいよね」みたいなことを周りから言われるのですが、実際は大変ですよ(笑)。これは「にっぽん、グルメ街道」のお店を決めた時の話なのですが、1回の取材で鹿児島の黒豚を使ったとんかつと、博多のもつ鍋、そして広島のお好み焼きの3店を「にっぽん、グルメ街道」に入れたいと思い、一度に取材しに行ったことがありました。

 その時は初日に鹿児島に行ってとんかつを3軒4軒食べたあと、その日の夜に福岡に入ってもつ鍋を食べて、その日は一泊。次の日の朝はホテルの朝食を抜きつつ、ランチでもつ鍋を提供しているお店で食べて、その足で広島入り。現地に着いたら広島のお好み焼き店を4軒回って、それで4時間かけて新幹線で東京に帰ってきました。

――すると、1日で5〜6食は食べている計算になりますね。どういった点を見ながら食事をしているのでしょうか。

 一番考えるのは、東京駅一番街としてどんなお客さまが来てくれて、どんなお客さまが喜びそうかなという点ですね。料理そのもののおいしさはもちろんなんですけど、記憶に残るものかどうかも見ています。

 食べてただおいしかっただけでなく、思い出に残るようなところですね。これは、そのお店のおもてなしも含めてになります。

 東京駅一番街ですと、もしかしたら地方から出てきて最初に会う人がそのお店の店員かもしれないわけです。そういうところで料理や接客で記憶に残るところがあれば、そのお客さまにとって生涯忘れられない思い出になるかもしれません。このように何か食べるだけではなくて、付加価値がついて思い出に残るかどうかも意識しています。

「せたが屋」の前島司代表

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