フィンランドのNokiaは9月7日、ヘルシンキにある本社で記者向けにカンファレンスを開催、自社戦略や携帯電話業界の今後について語った。
世界の携帯電話ユーザーは年内に20億人に達すると見込まれている。携帯電話メーカーのシェアだが、現在Nokiaが32.2%で首位につけており、以下、米Motorola(18%)、韓国Samsung(12.9%)、韓国LG(6.4%)、英SonyEricsson(6.3%)と続いている(米IDC調べ)。1位と2位を合わせたシェアが5割を超えた一方、独Siemensや英Sendoが撤退するなど市場は淘汰に向かっている。
「大手はますます大きくなり、その差は開く一方だ。プレイヤーの数は少なくなり、新規参入はますます難しくなっている」と同社コーポレート・ストラテジー・バイス・プレジデントのアンティ・バサラ氏。最大手のNokiaが目指すのは、シェア40%の達成だ。開発国で新規ユーザーを獲得しつつ、成熟市場では市場を拡大するという、ボリュームとバリューの2本立てで挑む。
市場のトレンドとして、バサラ氏は、(1)シンプルさ、明確なメリットというユーザーのニーズ(2)市場拡大による多様化(3)オペレータの地位向上、他分野サービスプロバイダの参入(4)新しい無線技術、ソフトウェア、ユーザーエクスペリエンス技術の登場(5)競争激化 の5つを挙げた。
このようなトレンドを受けて、各種モバイルサービス売上比率も当然変わってくる。2004年時点で85%を占める音声通話は、2009年には72%に縮小、代わりにエンタテインメント・メディアが5%から11%に倍増するなどデータ収入の確実な増加が予想できるという。市場自体も、2004年は4300億ドルから6650億ドルに拡大すると見ている。
こうした中、Nokiaは「Life Goes Mobile!」戦略を継続する。「音声をモバイル化したのと同じように、マルチメディアを、エンタープライズをモバイル化する」(バサラ氏)。マルチメディアでは、今年4月にスタートした新ブランド「Nseries」がある。エンタープライズでも、2年前にエンタープライズ事業部を発足させている。
今後の具体的な取り組み事項としてバサラ氏が掲げたのが、(1)製品(2)顧客満足度の向上(3)サプライチェーン改善(4)研究開発の効率化(5)パートナー戦略 の5つだ。
例えば製品では、全市場、全セグメントに対応する幅広い製品ラインナップを揃える。共通の技術的コンセプトは、“ヒューマンテクノロジー”。見た目のよさ、手に取ったときのしっくり感、使いやすさ、さらには、“使うことで得られる喜び”を実現しようというもの。
最近のヒット製品としては、アールデコ調のファッション端末「Nokia 7260」(2004年9月の記事参照)や「Nokia 8800」(4月8日の記事参照)などがある。「Nokia 7260」は発表当時酷評されたが、中国ではベストセラー製品なのだという。シンプルさと材質を極めた「Nokia 8800」は欧州で人気。また折りたたみ式では出遅れた同社だが、「Nokia 6101」も好調だという。
ソフトウェア技術プラットフォームは、Series 30、Series 40、Series 60、Series 80がある(2003年6月の記事参照)。中核となるSeries 60は2005年5月末時で累計2500万台を出荷、最大のスマートフォン技術(シェア69%)となっている。なお今年に入ってオープンソース戦略も打ち出している。これについてはコミュニティという特性から、検証済み技術をすばやく導入できるメリットを評価していると説明した。
無線技術では、移動体では3G、HSDPA/HSUPA(5月11日の記事参照)、3.9G、放送ではDVB-H(6月15日の記事参照)、短距離通信ではBluetooth、RFID/NFC(3月18日の記事参照)、UWB(2月26日の記事参照)、IPベースの高速データ通信ではWLAN、WiMAX(6月28日の記事参照)と、さまざまな無線技術を取り込むマルチラジオ戦略をとる。
バサラ氏はまた、ブランドとしてのNokiaの強さも強調した。Nokiaブランドは現在、世界ランキング第6位。1位のCoca-Colaをはじめ、IT企業のMicrosoft、IBMなど上位10社は9位のトヨタとNokiaを除いて米国企業が占めている。またアジアでは、ソニーに次いで堂々の第2位だという。Nokiaが現在の地位を獲得するまでには15年かかったとバサラ氏。使いやすく、顧客満足度の高い製品を提供したことが、現在のNokiaブランドにつながったと分析している。
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