G'zOne W42CAを航海で使いやすいようにカスタマイズしたところで、実際に海で使ってみる。「僻地に弱い」というイメージのWIN端末であるが、実際のところどうなのだろうか。KDDIのWebサイトでチェックしてみると意外にもそのサービスエリアは広がっている。以前は使えなかった伊豆諸島の島内でも主要な港や中心部がWIN端末の勢力内になっている。
TYPE-Rは北部伊豆諸島でテストを行ったが、G'zOne W42CAは先ほども述べたように、瀬戸内海の小豆島から播磨灘、鳴門海峡、紀伊水道、潮岬を経て紀伊勝浦港に至る航海と、紀伊勝浦港から遠州灘を経て西伊豆安良里港に至る航海で利用状況を検証する。小豆島から紀伊勝浦港に至る航海ではほぼ沿岸にそった航路を進んでいるが、遠州灘の航海では「パールレース」や、伊豆半島と志摩半島を行き来する巡航航路よりも陸地から離れた航路を採っている。
利用状況の検証は(1)アンテナの本数と(2)EZ Webのトップメニューからすぐアクセスできる天気予報が利用できるか、の2本立てで行っている。天気予報サービスではGPSで判明した現在位置の天気予報データが取得できるようになっているので、GPS機能の利用エリアも把握できると思われる。
なお、今回検証用に使ったG'zOne W42CAは試作機でEZアプリのチューニングが完全でない状態であったため、前回のTYPE-Rで行ったEZナビの検証は行っていない。また、原則として検証作業は毎時00分に行うことにしていたが、今回の航海では筆者も操船担当者として当直のローテーションに参加していたため、検証時間は1時間おきとなっていない(オーバーナイト航海では「寝る」のも職務のうちなのです)。
延べ2日間、総航程290海里、49時間に及ぶ航海で“WIN”なG'zOneは以下のような状況で利用できた。
| W42CA | mova | |||
| 時間 | 天気(EZweb) | アンテナ | 天気(i-mode) | アンテナ |
| 6月27日0900 | ok | III | ok | III |
| 1000 | ok | II | ok | III |
| 1120 | ok | III | ok | III |
| 1200 | ok | III | ok | III |
| 1300 | ok | III | ok | III |
| 1400 | ok | III | ok | III |
| 1500 | ok | III | ok | III |
| 1600 | ok | III | ok | III |
| 1800 | ok | III | ok | III |
| 1900 | ok | III | ok | III |
| 2100 | ok | III | ok | III |
| 2300 | ok | III | ok | III |
| 6月28日0200 | ok | III | ok | III |
| 0400 | ok | III | ok | III |
| W42CA | mova | |||
| 時間 | 天気(EZweb) | アンテナ | 天気(i-mode) | アンテナ |
| 6月29日0300 | ok | III | ok | III |
| 0500 | ok | III | ok | III |
| 0700 | ok | III | ok | III |
| 1000 | non | non | ok | III |
| 1100 | non | 0 | ok | III |
| 1200 | non | 0 | ok | III |
| 1300 | non | 0 | ok | I |
| 1400 | non | non | non | 0 |
| 1500 | non | 0 | ok | I |
| 1600 | non | non | non | non |
| 1800 | non | non | non | non |
| 1900 | non | non | non | non |
| 2000 | non | non | non | non |
| 6月30日0000 | non | non | non | non |
| 0100 | ok | II | ok | III |
| 0300 | ok | II | ok | III |
| 0500 | ok | III | ok | III |

検証航海におけるG'zOne W42CAとドコモのPDC端末「N505i」の利用状況。“non”はその機能が使えなかったことを示す。アンテナにおける表記はローマ数字がアンテナの本数を示し、“0”がかろうじて1本、“non”は圏外を示す。下にあるのは実際の航路をプロットした海図。左が小豆島から紀伊勝浦港に至る第1レグ。右が紀伊勝浦港から遠州灘を経て西伊豆に至る第2レグ。航跡にプロットされている「■」は1時間ごとの位置。旗つきマークは圏内、黄色い「!」はかろうじて1本、赤い「?」は圏外であったところを示す。第2レグでアイコンが2段あるのは上段がW42CAを、下段がN505iの状況を表している岸ベタで航海した第1レグでG'zOne W42CAはすべての航程において圏内に入っている。比較的陸から離れていた播磨灘や紀伊水道でもアンテナは立ち、GPSの位置情報を取得できている。しかし、第2レグの遠州灘では出航してから6時間まで(志摩半島の真南に到達するまで)はなんとか圏内でいたものの、その先は御前崎にいたる「直前」まで圏外のままとなった。比較対照として筆者所有のムーバ「N505i」(これまた古いっ)でも測定してみたが、こちらは出航後12時間後までアンテナが立ち、かつ、iモードサービスにアクセスできている。ただし、N505iもその後は圏外となり、G'zOne W42CAと同様に御前崎の直前まで利用できなかった。
WIN(もしくはCDMA 1X)端末としてのG'zONE W42CAとムーバ端末としてのN505iの利用エリアの違いは、設置された基地局の場所と数が大きく影響する。基地局が影響するということは、運用実績が長く、設置されている基地局の数が多いムーバが有利になるのはやむを得ないところである。しかし、対応基地局の数が増えて、かつ、そのアンテナが海をカバーするようになったとき、「海に強い」「僻地に強い」といわれているムーバとの差が縮まる可能性は十分にありえる。
ガッチリとしたいかにもアウトドアで使ってくれぃ、という外見をしていたG'zOne TYPE-Rから、スマートな街使いケータイに変身したG'zOne W42CAであったが、二昼夜に及ぶ航海において、電子コンパスにGPS、そして優れた耐衝撃性能と防水性能を有するその中身はTYPE-Rと同じタフネスケータイであることを示してくれた。しかも、外部データストレージ用にmicroSDカードスロットを設けたことによって、数少ない「JIS IPX7対応の防水カメラ」としても評価できるようになった(AFが遅いとかいろいろと意見も出ているようだが、波しぶきを受けても使えるデジカメというだけですでに貴重な存在なのだ)。
G'zOne W42CAのアウトドア関連機能はG'zOne TYPE-Rそのままなので、「気象の移り変わりを予測できる気圧計」が欲しかったとか、充電中でも電子コンパスとGPSは使えるようにして欲しいとか、「エクステンションモード」で使える機能はユーザーに選ばせて欲しい、などなどTYPE-Rで感じた問題点は残念ながらW42CAでも残されている。
まったくもって私見ではあるが、G'zOneを選ぶユーザーには「タフネス」というキーワードに反応する場合が多いと思う。だから、どうせならばスマートでお洒落なテイストという方向性よりも、アウトドアで役に立つ機能をこれまでかっ!と唸るほどに組み込んだ、その代わりその姿はモリモリでガッチリとした頑丈な「アウトドアギア」を極めてもいいのでは? と偏執的な志向を期待するユーザーとしては考えてしまったりもする。
携帯電話のビジネスの規模を考えると、そういうニッチなユーザーを意識した商品企画というのはなかなか成り立たないとも聞くが(たからG'zOneはTYPE-RではなくW42CAとなったのだろう)、「G'zOneならアウトドアを極めてくれぃ!」(せめて気圧計だけでも)という声があることも、ぜひぜひ知っていただきたいものだなぁ、と無事母港にたどり着いた船上で思うのであった。
G'zOne W42CAで撮影する(オリジナルは解像度1280×960ドット)。船の針路上に見えるのは鳴門大橋。あいにく海上に“もや”がかかっていたためすっきりとしないが、それでも船のデッキを見るとロープがくっきりと映っている
「タフネス」というキーワードをG'zOneに求めるユーザーにはW42CAのスタイルが物足りなく映るかもしれない。しかし、自分が使いやすいようにカスタマイズすることで自ずとそのスタイルにも“凄み”がでてくる……、と思うのは欲目だろうか
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