10月11日までに4社からの申請が出そろった2.5GHz帯を利用する特定基地局の開設計画の認定申請。総務省は最大30MHzの帯域を、2つの法人もしくは団体に対して割り当てる方針なので、今後はオープンワイヤレスネットワーク、ワイヤレスブロードバンド企画、アッカ・ワイヤレス、ウィルコムの4社の提案を比較検討の上、免許交付にふさわしいものを選ぶことになる。
この4社のうち、モバイルWiMAX陣営の3社は、総務省が3G携帯電話事業者が3分の1以上の議決権を持つ企業を選定の対象外とする方針を決めたことから、さまざまな企業の連合体となっているのは既報の通りだ。オープンワイヤレスネットワークは8社、ワイヤレスブロードバンド企画は6社、アッカ・ワイヤレスは16社が出資している。
この出資者の面々をよく見てみると、実は複数の陣営に顔を出している企業がいくつもある。直接出資していなくても、出資会社に出資している場合などもあり、免許を取得する陣営がどこになるかで、さらなる合従連衡が起こりそうな複雑な利害関係が見て取れる。
オープンワイヤレスネットワーク | ワイヤレスブロードバンド企画 | アッカ・ワイヤレス | |
---|---|---|---|
出資企業 | イー・アクセス ソフトバンク ゴールドマン・サックス テマセク・ホールディングス NECビッグローブ ソネットエンタテインメント ニフティ フリービット |
KDDI インテル キャピタル JR東日本 京セラ 大和証券グループ本社 三菱東京UFJ銀行 |
アッカ・ネットワークス NTTドコモ JPモルガン証券 Ignite Group Doll Capital Management アイテック阪急阪神 京浜急行電鉄 朝日ネット NECビッグローブ ソネットエンタテインメント ニフティ フリービット YRP事業開発研究所 |
インターネットサービスプロバイダー(ISP)各社は、モバイルWiMAXの活用に積極的で、特にNECビッグローブ、ソネットエンタテインメント、ニフティ、フリービットの4社は、オープンワイヤレスネットワークとアッカ・ワイヤレスの両方に出資する形で関わっているのが目に付く。
フリービット代表取締役副社長 CFOの田中伸明氏はアッカ・ワイヤレスの会見で「我々IPSはADSLなどと同様に、インフラ部分の直接の事業展開をしていないので、モバイルWiMAXというすばらしい可能性を秘めたサービスに全力で協力したいと思っているから」だと複数陣営に参加する理由を説明。NECビッグローブやソネットエンタテインメント、ニフティも「光やADSLでいろいろな事業者と提携してきたように、WiMAXでも提携をしたい」(NECビッグローブ執行役員の古関義幸氏)、「MVNOをやることが目的。なんとしても免許を取得してほしいから」(ソネットエンタテインメント代表取締役社長の吉田憲一郎氏)、「ユーザーの利便性が最優先。チャンスがある限りあらゆる選択肢を模索する」(ニフティ取締役常務執行役員の小栗清剛氏)などと説明した。
ちなみに朝日ネットはアッカ・ワイヤレス陣営にのみ参加しており、出資比率・金額も他のISPよりも多い。逆にワイヤレスブロードバンド企画にはISPが名を連ねていないが、10月11日の免許申請後、報道陣の質問に答えた代表取締役社長の田中孝司氏が「ISP各社からはオープンでやるので、排他ではないと聞いている」と話しており、ワイヤレスブロードバンド企画が免許を取得すれば、こちらとも協業することになるようだ。
ISP | オープンワイヤレスネットワーク | ワイヤレスブロードバンド企画 | アッカ・ワイヤレス |
---|---|---|---|
朝日ネット | − | − | 5億円 |
NECビッグローブ | 5000万円 | − | 5000万円 |
ソネットエンタテインメント | 5000万円 | − | 5000万円 |
ニフティ | 5000万円 | − | 5000万円 |
フリービット | 5000万円 | − | 5000万円 |
比較的分かりやすいISPのほかにも、じつは複数陣営に関与している企業がある。特にアッカ・ネットワークスには、多くの企業が出資していることもあって、アッカ・ワイヤレスの陣容はとてもフクザツだ。
社名 | 持ち株比率 |
---|---|
NTTコミュニケーションズ | 14.7% |
イー・アクセス | 10.42% |
三井物産 | 10.3% |
イグナイトBB投資事業有限責任組合 | 5.0% |
大和証券グループ本社 | 3.82% |
IT2000投資事業有限責任組合 | 3.16% |
ノーザン トラスト カンパニー エイブイエフシー リ フィデリティ ファンズ | 2.14% |
日本電気 | 1.24% |
富士通 | 1.24% |
まず1つ興味深いのがイー・アクセスだ。同社はアッカ・ネットワークスの10.89%の株式を持つ第2位株主なのである。イー・アクセスは、もともとアッカ・ネットワークスの株式を4.24%保有する第3位株主だったが、「純投資目的」で2006年8月に追加取得している。10%以上の株式を持つイー・アクセスには、アッカ・ネットワークスの帳簿閲覧権があるほか、株主総会開催請求、取締役解任請求もできるわけだ。
また大和証券グループ本社も、同じ名前をワイヤレスブロードバンド企画の出資会社の中に見ることができる。とはいえ金融機関は投資という目的があるので、細かなところまで洗い出すとキリがないだろう。
ちなみにアッカ・ワイヤレスに出資しているTBSや三井物産は、イー・アクセスの子会社、イー・モバイルに資本参加していたりする。直接の影響はないが、両社が無線通信事業に強い関心を持っていることは間違いない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.