ユーザーに「UIの自由と選択肢」を――急成長するミドルウェア企業、アクロディアの挑戦 (前編)神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2007年11月28日 18時40分 公開
[神尾寿,ITmedia]
前のページへ 1|2       

携帯電話の「理想的なUI」はお客様が決めるべき

 今年は携帯電話のUIが見直された年だ。そのセンセーショナルなきっかけはアップルの「iPhone」であり、もっと実利的な面ではドコモの「らくらくホン」シリーズの根強い販売実績である。そして今年の秋冬商戦モデルでは、VIVID UIを全キャリアが採用。それぞれのアプローチで、UIの要素を商品力に結びつける取り組みが行われた。

Photo UIに工夫を凝らしたAppleの「iPhone」(左)とドコモの「らくらくホン」(富士通製)

 アクロディアは“UIのルネサンス”とも言うべき今の状況を、どのように見ているのだろうか。

 「先日の(ドコモ執行役員プロダクト&サービス本部プロダクト部長の)永田部長のインタビューにもありましたけれども、『携帯電話のUIはユーザーにあわせて最適なものを提供する』という考えが正しいと、我々も考えています。

 例えば、アップルのiPhoneはかっこいいですし、私自身アップルユーザーなので大好きなのですけれど、iPhoneのUIだけですべてのユーザーのリテラシーがカバーできるわけじゃない。いろいろなリテラシーや趣向を持つお客様に、ひとつのUI体系をもって『これが最適だ』と打ち出すのは無理なんです」(堤氏)

 iPhoneのUIに多くのユーザーと業界関係者が衝撃を受け、感嘆したのは、iPhoneがアップルの美学に基づいて“統一された世界観”を築いていたからだ。だが、堤氏はその裏にある「切り捨て」の存在を指摘する。

 「欧米系の技術というのは、そもそも切り捨ての文化なんです。その点では、アップルとマイクロソフトは同じ(姿勢)で、『このUIが理解する人は使ってください、理解できない人は使わなくてもいいです』となる。マイクロソフトなどは特にこの傾向が強くて、『(マイクロソフトの)Windows系のUIが使いこなせれば仕事ができる人になれますよ。使いこなせなければ、そのまま(仕事ができない人)でいいです』となっている。UIで見ると、すごく切り捨てなんです。

 しかし、こういった切り捨ての発想は日本市場には合わない。日本の携帯電話の考え方は、幅広いユーザー層に多くのサービスを使っていただくというものなのです。そこでは(ユーザーの)ライフスタイルやリテラシーにあわせて、それぞれ最適なUIを提供できる環境や体制が重要になる」(堤氏)

 周知の通り、日本で携帯電話ビジネスが大きく発展したのは、キャリアが中心となってインターネットの仕組みやサービスを分かりやすく“ケータイ流にデフォルメ”し、多くの人が使いやすいようにリテラシーの敷居を下げたからだ。ユーザーに「学べ・理解しろ」と突き放すのではなく、理解してもらえるように歩み寄る。そこが欧米流の考え方と異なる。日本文化の特徴ともいえる、「おもてなし」や「察しと思いやり」の心にも通じる部分だ。

Photo

 「このユーザーに合わせる、という時に重要になるのが『UIが切り替えられる仕組み』なのです。UIが切り替えられれば、ユーザー自身が自分で使いやすいように切り替えることもできますし、周りの誰かがその人に合ったUIにしてあげることもできる。(ドコモショップなど)キャリアショップでお客様と対話しながら、そのお客様にあったものをお勧めするともできます。UIはキャリアやメーカーが画一的に決めるのではなく、お客様が決められるようにすべきなのです。

 この考えの下にアクロディアが目指したのが、(携帯電話をはじめとする)さまざまな機械のUIを抽象化することです。UIをハードウェアから分離し、抽象化することで、UIデザインを多くのクリエーターが創れるようにする。このコンセプトをキャリア各社にご評価いただき、VIVID UIが広く採用されたのです」(堤氏)

 むろん、携帯電話メーカーの中には、クルマのエクステリアとインテリアの関係のように、ハードウェアとUIは対になるべきという意見もある。そのような考えに対して堤氏は、「メーカーのUIも、ユーザーによる評価と選択を仰ぐべき」だと話す。

 「時々誤解をされるのですけれど、アクロディアは『このUIがいい』という提案をするわけではありません。我々はUIの部分を抽象化・自由化するだけですから、メーカーがその上に自身のUIを作ってもいいわけです。しかし、ユーザーがメーカー製のUIを使いにくいと感じた場合は、別のUIに載せ替えられるようにしておく。そうすることでユーザーの選択肢が広がりますし、メーカー以外の企業がUIデザインという新たな市場に参入することができます」(堤氏)

 UIにおいて、誰もが満足して使いやすい「万人向けの模範解答」はない。そう強調する堤氏の持論は、VIVID UIという形を取り、その正しさが市場で評価されようとしている。そして同社のヴィジョンやビジネスにおいても、今はまだ道半ばなのだ。

(後編へ続く)

携帯業界のトレンドを知りたいと思ったら→+D Mobile「業界動向」へ
  • 各キャリアの発表会リポート
  • 国内外の携帯市場動向
  • 通信業界のキーパーソンインタビュー
  • 携帯事業者別シェア/携帯出荷台数
  • 携帯関連の調査リポート記事

携帯業界のトレンドや今後を把握するのに必要な記事だけを集めたのが“+D Mobile 業界動向”。記事はトピックや連載ごとにアーカイブされ、必要なときにまとめてチェックできます。
今すぐアクセス!


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年05月15日 更新
  1. サイゼリヤは“折りたたみスマホお断り”なのか? セルフ注文画面が話題、真偽を実機で確かめた (2026年05月13日)
  2. 大幅刷新の「iAEON」「AEON Pay」アプリは何が変わった? 使い分け方や便利な機能を解説 (2026年05月12日)
  3. KDDI松田社長「povoを楽天モバイルの副回線に」――自らアイデア例示 ローミングは26年9月で一区切り (2026年05月13日)
  4. スマホ“最大規模の値上げ”はいつまで続く? 「1円スマホ」が存続危機、一方で影響を免れる中国メーカーも (2026年05月14日)
  5. なぜ? マクドナルド「巨大セルフ注文端末」に批判殺到の理由 UI/UXに価格表示まで……直面している課題とは (2026年05月14日)
  6. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  7. 「Xperia 1 VIII」発表 背面デザイン刷新で望遠カメラ強化 約23.6万〜30万円前後 (2026年05月13日)
  8. わずか3タップで残高が消える? PayPay「送金詐欺」に要注意、送金は補償の対象外で取り戻せず (2026年05月12日)
  9. 「駅のQRコードが読み取れない」――ネットに落胆の声 なぜ“デジタル時刻表”が裏目に? (2025年12月25日)
  10. 「auでんち」提供 蓄電池を置くと電気代から毎月最大3000円を割引 (2026年05月13日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年