ケータイは機能が成熟してきたとはいえ、着実に進化を遂げている。2008年のケータイも、堅調にスペックを上げた“正常進化”と、新しい技術やデバイスを採用した“革新的な進化”を遂げた機種が多かった。
正常進化は3インチ/ワイドVGA以上の大型/高解像度ディスプレイや、5Mピクセル以上の高画素カメラを搭載した機種が増えたこと、革新的な進化はiPhone 3Gをはじめとするタッチパネルを搭載した機種が増えたこと――などが挙げられる。
一方で、“ウェルネスケータイ”「SH706iw」や、パーツを丸ごと交換できる「フルチェンケータイ re」、超小型の音楽ケータイ「Walkman Phone, Xmini」、「インターネットマシン 922SH」など、ほかの機種にはない“変化球”を用いた機種も多かったように思える。
以上を踏まえて、特に印象に残った3機種を選んだ。
2008年は、ここ数年は頭打ちの感があったケータイカメラが大きく進化したのが印象的だった。NTTドコモは「Cyber-shotケータイ SO905iCS」「SH-01A」「SH-03A」、auは「Cyber-shotケータイ W61S」「EXILIMケータイ W63CA」、ソフトバンクモバイルは「930SH」といった、カメラ機能に注力した機種を投入した。カメラの画素数は、SH-01A、SH-03A、W63CA、930SHが8Mピクセルに達した。
そんな中で特に注目したのがW61Sだ。W61Sは2008年5月に発売した機種で、511万画素のCMOSカメラを備える。比較的スリムなW63CAや、高感度な800万画素CCDカメラを備えるSH-01A、SH-03A、930SHと比べると発売時期が半年ほど早いので、本体サイズやスペックで譲るところはあるが、決め手となったのは「フォトビューアー」だ。
カメラに注力したケータイは、撮影機能はデジカメに迫るほどに進化しつつあるが、写真の閲覧機能はいまひとつという印象だった。だがW61Sは、専用のフォトビューアーを搭載しており、サイドキーから簡単に「最後に撮影した写真」と「写真のサムネイル」にアクセスできる。
このサムネイル表示が非常にスムーズで、スクロールするたびにざざーっとサムネイルが次々に表示される快適さには感心した。モーションセンサーを使い、撮影した向きによって画像の縦表示と横表示を自動で判別してくれる機能も、発売当時はW61Sしか対応しておらず画期的だった。
ケータイに限らず、カメラは「撮る」よりも「見る」ほうが多いのではないだろうか。この「見る」機能に着目して快適なフォトビューアーを採用したW61Sを高く評価したい。2009年もカメラに注力した機種が出るかもしれないが、ぜひ「ビューアー機能」にも力を入れてほしいと思う。
また、W61Sは「男でもピンクを持っていいかな」と思わせてくれた機種でもある。筆者はW61Sを購入するとき、普段選ぶ「シルバー」や「ブルー」系の色がW61Sにはなかったことと、小栗旬さん効果も手伝って、スペクトラムピンクを選んだ。まさか自分がピンク色のケータイを使うとは――そういう意味でもW61Sは驚きを与えてくれたモデルだ。
VGA液晶を搭載した「904SH」、初の“AQUOSケータイ”「AQUOSケータイ 905SH」、5Mピクセルカメラを搭載した「910SH」など、J-フォンやボーダフォン時代も含め、ソフトバンクモバイルのシャープ製端末には最新の技術やデバイスがいち早く搭載されることが多い。
2008年の秋冬モデルとしてソフトバンクモバイルが発表した「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」もシャープの“本気度”が伝わるモデルで、ほぼすべての操作ができるタッチパネルと、ケータイでは世界初となるハーフXGAサイズ(480×1024ピクセル)の3.8インチ液晶を搭載した。
「iPhone 3G」をはじめ、2008年は全面タッチパネルを搭載したケータイが多数登場したが、「意外と操作しやすい」という声は聞いても「すごく操作しやすい」という声はほとんど聞かない。それもそのはず、文字入力は使うキーが多く、タッチパネルでは向かないからだ。
「タッチで操作できること」自体は画期的だが、これまでケータイが培ってきた操作性を損なってしまっては意味がない。931SHはその点もしっかり考え、物理キーも搭載し、文字入力は物理キーで、スクロールやショートカット起動はタッチ操作で――という使い分けができるようにした。
こうした優れた操作性はもちろんだが、931SHは久しぶりに「使ってわくわくするケータイ」だと感じた。待受画面からアイコンをタップして機能を呼び出したり、画像のサムネイルを高速でスクロールしたり……といったタッチ操作が楽しい。しばらくは931SHに“タッチしまくる”日々になりそうだ。
携帯電話の販売方式が変わり、1台の機種を2年間使い続けなければならない“2年縛り”が選択肢に加わったため、最近は「長く使うこと」を意識した機種が増えたように思える。特にNTTドコモの90xiシリーズやPRIMEシリーズは、トレンド機能やサービスを網羅した“全部入り”が多く、長く使ってほしいというキャリアの意気が感じられる。
そんな中、KDDIが投入したのが「フルチェンケータイ re」だ。この機種には“全部入り”とは違ったアプローチで、長く使ってもらうための工夫が凝らされている。
フルチェンケータイ reはいわゆる着せ替え端末だが、背面パネル、キーパネル、カメラ周辺部、バッテリーカバーの4つのパーツを交換できるのが大きな特徴。グラフィックやUI(ユーザーインタフェース)を大幅に変更できる「ナカチェン」にも対応した。背面パネルを交換できる機種はこれまでも数多くあったが、ここまで本格的な着せ替えができるのはフルチェンケータイ reが初めてだろう。
新品同様に外装を着せ替えられるフルチェンケータイ reなら、ユーザーに長期間飽きずに使ってもらえることが期待できる。筆者も同じ機種を使うのはせいぜい1年。それ以上長く使う気にならないのは、やはり「デザインに飽きてしまう」ことが大きい。フルチェンケータイ reのような機種なら、2年くらいは飽きずに使えそうだ。
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