「次は何をするのだろう?」と思ってしまうほど、機能やデザインが熟成しきった感のある2008年のケータイ。注目のケータイを思い出そうにもなかなか苦労するほど差別化しにくく、キラリと光るケータイがなかったようにも感じられた。
新商品の発表会に行くたびに、どれも“お腹一杯”という大盛り定食のような印象を受け、量は少なくても「これは食べたい」と思えるケータイが少なかったのも正直なところ。そこで、皆さんとは少し違った視点で注目ケータイを挙げてみた。
個人的な話で恐縮だが、初代「G'zOne C303CA」以来、タフネス&防水ケータイの「G'zOne」シリーズを使い続けている筆者をはじめ、根強いG'zOneファンにとって「G'zOne W62CA」は待望の新作だったのではないだろうか。
先代「G'zOne W42CA」は発売から丸2年が経ち、おサイフケータイやワンセグといったイマドキの機能を備えた最新モデルの中ではやや見劣りするスペックになりつつあった。しかしG'zOneの世界観はそれを補って余りあるからこそ、2年前のケータイでも使い続けられるのだ。
とはいったものの、やはりスペックは高い方がいい。G'zOne W42CAを周りに見せて「ふーん、Gショックケータイ。かっこいいね。テレビは見られる?」と聞かれると、「見られない。でもオレはこれでいいんだ」と返答。でも、なんだか自分に言い聞かせているようでもあった。それだけにG'zOne W62CAは、ワンセグをはじめイマドキのケータイに求められるスペックを網羅しており、まさに待望のモデルだったのだ。
最近のケータイのフォルムは、スリムでシャープな印象を与えるデザインが多くの人に好まれているようだ。それは1つの流行であり、「人とは違ったものを持ちたい」「個性的なケータイが欲しい」といったニーズと相反する。G'zOne W62CAは流行なんぞどこ吹く風といわんばかりに、独自のスタンスを確立したケータイだといえる。
誰もが2008年の注目機種に挙げてもおかしくないほどのインパクトを与えた「iPhone 3G」。やはりこの機種だけは筆者も挙げざるを得ない。2007年6月末に初代「iPhone」が発表されてから約1年、どのキャリアが出すのかと話題を集める中、2008年7月11日にソフトバンクモバイルから登場した。
iPodが日本のオーディオ業界を席巻したように、iPhone 3Gはケータイ業界に計り知れないほどのインパクトを与えた。2008年冬モデルでNTTドコモやソフトバンクモバイルの端末が続々とタッチパネルを採用したように、タッチパネルによる操作体系は日本のケータイに新風を吹き込んだ。
ただ、意外だったのは、iPodのようにどっと多くのユーザーがiPhone 3Gを求めたかというと、そうではなかったこと。iPhone 3Gは最新ケータイに目がないガジェット好きな一部のユーザーが持っているのはよく見るが、一般ユーザーが持っている光景はあまり目にしない。
日本のユーザーがケータイに求めているものが違うのか、日本独自のケータイビジネスが障害になっているか、iPodとはトレンドの傾向が違うようだ。
注目ケータイという切り口で3台目を挙げようと、2008年に登場したモデルを見直してみたのだが、正直なところ「コレ!」というのがなかなか見つからない。筆者は最新機能やスペックよりもデザインでケータイを選ぶので、イマドキのケータイは似たり寄ったりで、いまひとつピンと来るものがないのである。
もちろん、大きくてきれいな画面でワンセグが見られたり、お財布代わりに使えるのは便利だが、ケータイは手にしてうっとりとするような、機能もデザインも唯一無比の存在であってほしいと思う。
そんな視点で考えると、ドコモの「NM705i」が思い浮かんだ。NM705iは2007年晩秋に発表されたモデルだが、発売は2008円年の早春なので、2008年の注目ケータイに加えた。コンパクトなボディサイズと、手の中でコロコロと回せる軽さが魅力だ。個性を重んじるヨーロピアンデザインの成せる業かとうならされる。
しかしノキアは日本でのケータイ事業を撤退することが決まった。もうNM705iのようなノキアケータイをこれ以上日本で見られないのは、残念でならない。
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