人口カバー率100%のNTTドコモ網を、手軽なプリペイド方式で使える日本通信のデータ通信サービス「Doccica」(ドッチーカ)。前回は手始めに製品の概要やセットアップの様子を取り上げた。
今回は、データ通信サービスとしては最も重要な通信速度の実力に迫ってみた。前回も触れたが、DoccicaのサービスはドコモのFOMAネットーワークを日本通信が借り受け、独自に負荷分散をすることで効率的な通信サービスを提供している。できるだけ多くのユーザーを効率よく収容するため、通信速度はドコモが提供する通信サービスよりも低くなりがちだが、その分安く手軽に使えるのが特徴だ。
DoccicaのZTE製USB端末はHSUPAにも対応しており、仕様上は下り最大7.2Mbps、上り最大1.4Mbpsでの通信が可能だ。しかし、ドコモはHSUPAサービスをまだ提供していないため、当然ながら上りの速度は最大でも384kbpsにとどまる。また、前述のとおり日本通信が帯域管理を行っているため、下りも7.2Mbpsに迫る通信速度は出ない。これは前回も触れたが、日本通信はDoccicaやb-mobile3Gの最大通信速度をうたっていない。最大通信速度と実測値は別もので、実際の利用シーンに即していないという考えのためだ。
以上を踏まえた上で、その計測値をイー・モバイルの「D12LC」(Longcheer製)と比較して見ていこう。D12LCを選んだのは、編集部にあったデータ端末のなかで、一番Doccicaの端末と利用形態が近いと考えたため。なお測定サイトは前回同様「Radish Network Speed Testing」を利用し、3回測った平均を出している。念のため、1度測定したら切断して数分後に再接続して次の測定を行った。
まずは、平日の昼休み時間(12〜13時)の平均速度を比較してみる。測定はJR中央線荻窪駅の駅前で行った。Doccicaの平均値は下り183.1kbps/上り370.8kbps、イー・モバイルは下り1.051Mbps/上り362.9kbpsと、特に下りで大きな差が出た。Doccicaはかろうじて上り速度がイー・モバイルを上回ったが、5倍以上の速度差はちょっと気になるところだ。
次に+D Mobile編集部(千代田区丸の内のビル8階)で平日夕方(18時前後)に平均速度を調べてみた。ここではDoccicaの平均値は下り542.5kbps/上り354.5kbps、イー・モバイルは下り1.098Mbps/上り360.7kbpsとなった。下り速度が500kbps以上になり、たいていのWebサイトが快適に見られる速度に落ち着いた。しかし、上り速度は昼間と比べてわずかに遅くなった。
続いて平日夜(23時前後)の平均値を見てみよう。数値は前回測定したものと同じだが、Doccicaが下り317.3kbps/上り368.1kbps、イー・モバイルが下り1.504Mbps/上り322.4kbpsと昼休み時間並みの差が出た。最後に深夜(午前1〜2時)の杉並区住宅地で計測してみたところ、Doccicaは下り1.033Mbps/上り369.1kbps、イー・モバイルは下り1.127Mbps/上り364.1kbpsと、いい勝負になった。
全体を通してみると、Doccicaの下り速度は183.1kbps〜1.033Mbpsまで大きく変動するが、日中は良くて500kbps止まり。上り速度はかなり安定していて、コンスタントに360kbps前後を記録している。
平均 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | |||||
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モデル名 | 下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り |
平日昼(荻窪駅前) | ||||||||
ドッチーカ | 183.1kbps | 370.9kbps | 140.4kbps | 370.4kbps | 199.5kbps | 370.9kbps | 209.5kbps | 371.3kbps |
イー・モバイル「D12LC」 | 1051kbps | 362.9kbps | 1122kbps | 360.8kbps | 1015kbps | 365.2kbps | 1017kbps | 362.7kbps |
平日夕方(国際ビル8階 屋内) | ||||||||
ドッチーカ | 542.5kbps | 354.5kbps | 578.5kbps | 368.9kbps | 511.3kbps | 369kbps | 537.8kbps | 325.7kbps |
イー・モバイル「D12LC」 | 1098kbps | 360.7kbps | 1149kbps | 353.9kbps | 1062kbps | 361.6kbps | 1083kbps | 366.5kbps |
平日夜(国際ビル8階 屋内) | ||||||||
ドッチーカ | 317.4kbps | 368.1kbps | 283.5kbps | 368.7kbps | 265.5kbps | 367.1kbps | 403.1kbps | 368.5kbps |
イー・モバイル「D12LC」 | 1505kbps | 322.5kbps | 1486kbps | 251.2kbps | 1503kbps | 357.9kbps | 1525kbps | 358.3kbps |
平日深夜(杉並区住宅地) | ||||||||
ドッチーカ | 1033kbps | 369.1kbps | 907.6kbps | 369.5kbps | 1123kbps | 368.3kbps | 1069kbps | 369.4kbps |
イー・モバイル「D12LC」 | 1127kbps | 364.1kbps | 1189kbps | 363kbps | 1325kbps | 364.4kbps | 867kbps | 364.8kbps |
速度ではなかなか勝てないが、エリアとなるとDoccicaの圧勝だ。イー・モバイルのサービスエリアも日々拡大しており、課題だった地下鉄や地下街などでもだいぶ使えるようになってきた。しかし、高層ビルや建物の奥まった部屋、地下駐車場などではまだまだ圏外も多く、地方のカバー範囲も人口密集地に限られる。一方のDoccicaは、人口カバー率100%のドコモ網を使うことができる。
最近取材で訪れた千代田区にある高層ビルの会議室(33階)は、イー・モバイルが圏外(アンテナが1本立つが接続しない)だったが、ドコモはしっかりつながるという場所だった。当然Doccicaも使えるので速度を計測してみると、平均速度は下り439.8kbps/上り369.1kbpsとなった。また編集部のあるビルの地下4階駐車場もイー・モバイルは入らず、ドコモが使えるエリア。ここでの平均測定値は下り498.1kbps/上り369.1kbpsになった。
どちらも1Mバイトを超える速度は出なかったが、500kbps弱のスピードがあれば大抵のWebサービスは不都合なく利用できる。外回りが多い仕事をしている人であれば、訪問先の会議室や駐車場の営業車からデータ通信する機会も多いだろう。こうしたエリアの“深い”部分でも、安く安定的に使えるのがDoccicaの良いところだ。
平均 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | |||||
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場所 | 下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り | 下り | 上り |
高層ビル33階の会議室(霞が関) | 439.8kbps | 369.1kbps | 402.6kbps | 368.4kbps | 444kbps | 369.7kbps | 472.9kbps | 369.1kbps |
地下4階の駐車場(国際ビル) | 498.1kbps | 368.1kbps | 550.9kbps | 367.8kbps | 487.8kbps | 368.6kbps | 455.7kbps | 368.8kbps |
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