大解説! Tegra 4シリーズの「性能密度」に迫るMobile World Congress 2013(1/4 ページ)

» 2013年02月26日 12時30分 公開
[本間文,ITmedia]

Tegra 4シリーズが可能にする“未来カメラ”

 NVIDIAは、2013年2月25日からスペインのバルセロナで開催中のモバイル機器関連見本市「Mobile World Congress 2013」において、同社の最新モバイルプロセッサ「Tegra 4」に関する技術仕様を公開するとともに、スマートフォンやタブレットデバイスを使った新しい写真やビデオ表現を実現する“コンピュテーショナル・フォトグラフィー”技術「Chimera」(キメラ:英語読みはカイメラ)を発表した。

 コンピュテーショナル・フォトグラフィーとは、コンピュータ処理による写真撮影のことで、スマートフォンやタブレットデバイスの頭脳となるモバイルプロセッサの演算能力を積極的に活用することで、人が認識する階調に近い「ハイ・ダイナミックレンジ写真」を実現したり、被写体を液晶画面でタップ指定するだけで、自動的にピント合わせをしてくれるようになるというものだ。

 HDR写真とも呼ばれる、ハイ・ダイナミックレンジ写真は、iPhoneシリーズでもサポートしているので、すでに聞いたことがあるユーザーもも多いだろう。現在のデジタルカメラは、一定の明暗差しか表現できないため、明暗差が大きなシーンでは、メインとなる被写体の明るさにあわせて撮影をすると、その背景が真っ白になってしまうことがある。そこで、iPhoneやiPadでは、露出設定(明るさの設定)の異なる複数の写真を合成して、人間が普段知覚している階調に近い写真表現を実現する。

 しかし、現在、スマートフォンやタブレットデバイスで実現しているHDR写真技術では、露出設定の異なる2枚の写真を撮るのに一定の時間を要し、動きのある被写体では、輪郭が二重になってしまうなど、不自然な写真になってしまうことがある。

現在、iPhoneなどでサポートしているHDR写真技術では、動きのある被写体は輪郭が2重になってしまうことがある(写真=左)。現在、一般的なスマートフォンやタブレットデバイスのHDR写真処理の流れ。2枚の写真を1枚のHDR写真に合成するのに2秒以上のタイムラグが生じ、このことが不自然な写真を生んでしまう

Tegra 4が実装するChimeraがユーザーにもたらすメリットとは?

 そこで、NVIDIAがTegra 4で新たにサポートする「Chimera」技術では、モバイルプロセッサに統合した強力なグラフィックス機能を活用し、1秒間に最大30枚(フレーム)の写真をさまざまな設定で撮影し、そのうちの2枚の写真をリアルタイムで合成処理できるようになる。これにより、より自然なHDR写真撮影ができるようになるだけでなく、ハイダイナミックレンジのビデオを1080pで撮影できるようにもなるとNVIDIAは説明する。

Tegra 4でサポートする「Chimera」技術では、同モバイルプロセッサに統合されたCPUとグラフィックス機能(図ではGPU)、イメージ処理プロセッサ(図ではISP)をフル活用することで、0.2秒でHDR写真を合成できるようにする

 単に、撮影設定の異なる写真を高速連写するだけなら、コンパクトデジカメで撮影した複数の写真を、あとからソフトウェアで合成する手法を採ることもできる。だからといって、Chimera技術が実現するHDR写真機能は、単に「より手軽にHDR写真撮影ができる」というだけではない。“コンピュテーショナル”を訴求するだけあってデジタルカメラに搭載しているコントローラとは比較にならないほどパワフルなモバイルプロセッサの演算能力を使って、よりインテリジェントな写真合成処理を行なっている。

 NVIDIAで、この技術の開発を統括するコンピュテーショナルイメージング担当副社長のブライアン・カブラル氏は、「HDR写真の合成は、単純に2枚の写真を合成するのではなく、メインとなる被写体(ピントの対象となった部分)の輪郭を検出し、位置合わせをすることで、不自然な写真にならないようにしている」と説明する。

 このChimera技術を利用することで、Tegra 4プラットフォームではHDR写真・ビデオ撮影だけでなく「HDRによるパノラマ写真撮影」「HDRによる連続写真(コマ送り写真)撮影」「HDRによるストロボ写真合成」などの機能を将来的に追加サポートする予定で、Tegra 4を搭載したスマートフォンやタブレットデバイスでは、ソフトウェアアップデートで、これらの機能を有効にできるという。

Chimera技術の詳細を説明するブライアン・カブラル氏(写真=左)。NVIDIA本社の研究・開発部門で公開したHDR写真・ビデオ撮影のデモ。極端に明暗差がある風景でも、より自然な写真表現が可能になる(写真=右)

HDRによるパノラマ写真撮影のデモ(写真=左)。ChimeraのHDR技術を利用することで、より豊かな写真・ビデオ表現が可能になる(写真=右)

 さらに、Chimera技術では、HDR写真撮影機能で利用したグラフィックスコアを被写体の輪郭検知・位置合わせの演算処理でも応用する形で、液晶ディスプレイに表示した画像上で被写体をタップ指定すれば、カメラを動かしたり、被写体が動いたりしても、その被写体を認識してピントや露出をあわせてくれる「タップ&トレース」機能もサポートする。この機能は、「被写体の輪郭を記憶し、カメラのフレーム内のどこに、その被写体があるかを検知することで、自動追尾、ピントあわせを行なう」(カブラル氏)というもので、現時点では、同じ形のものがいくつもある状況や、角度によって見えかたが大きく異なってくる被写体では、精度が落ちてしまうようだが、「サッカーの試合などでは、プレイヤーではなく、ボールを被写体に指定すれば、手軽にスポーツ写真を撮影できるようになるはずだ」と、そのメリットをアピールする。

タップ&トレース機能による、被写体の自動認識デモ。壁にある消火器を被写体設定しておけば、いったんフレームから外れても、再度、その消火器がフレームに入れば、自動的に被写体として認識し、ピントや露出あわせを行う

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