連載
» 2013年05月23日 09時32分 公開

FacebookとWindows Phoneの微妙な距離感ななふぉ ITmedia支店(1/2 ページ)

Windows Phoneの主要なコンセプトの1つが「人を中心にする」だ。2010年にMicrosoftが掲げたこの概念を、Facebookが「Facebook Home」で打ち出してきた。

[山口健太,ITmedia]

先にいったもん勝ち……、とはならないこの世界

 Microsoftが2010年にWindows Phone 7を発表したとき、ほかのスマートフォンと差別化する機能として紹介したのが「Peopleハブ」だった。Windows Phone OSの標準機能として用意したPeopleハブは、携帯電話の必須機能ともいえる「連絡先」に、ソーシャルネットワークを統合したことで、オフラインとオンラインの人間関係をシームレスに接続できる。この機能は、多くのユーザーからも評価を受けていた。

 人間関係に注目したPeopleハブを採用したWindows Phoneが掲げる「人を中心にする」というコンセプトも、いまとなっては珍しいものではない。むしろ、スマートフォン業界全体のトレンドになりつつある。例えば、2013年4月4日(米国時間)にFacebookが発表したAndroid用のホーム画面アプリ「Facebook Home」でも同様のコンセプトを掲げている。

Windows Phoneの最も有名な標準機能の1つ「Peopleハブ」

そして、Android用ホーム画面アプリ「Facebook Home」

 Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、Facebook Homeの背景説明として、既存のiOSやAndroidがアプリを中心した利用方法を提案しているのに対し、今後は人(People)がスマートフォンの中心になると語っている。この「人を中心にする」というコンセプトを、あたかもFacebookが考案したかのように発表したザッカーバーグ氏に反論したのが、米Microsoftコーポレート・コミュニケーション部門 コーポレート・バイスプレジデントのフランク・X・ショウ氏だ。

Facebookのプレスイベント動画より。Windows Phoneもわずかに登場したが、積極的に言及することはなかった

 ショウ氏は、Microsoftの公式ブログに投稿した「People祭りへようこそ」という記事において、「人を中心にする」というコンセプトが2011年のWindows Phone 7.5のローンチにおいて使用した“Put people first”に酷似している点を指摘する。「Facebook Homeの発表イベントの最中、カレンダーで何度も日付を確認しなければならなかった」(ショウ氏)

 確かにWindows Phone 7.5では、ロゴに添えられるタグラインとして“Put people first”を用いており、Windows Phoneユーザーなら1度は目にしているはずだ。

Windows Phoneの「コンセプト」は正しかった

 ショウ氏は、Microsoftの企業PRを担当する部門の責任者であり、記事を投稿したのがMicrosoftの公式ブログであったことから、その内容はMicrosoftの公式な発言と考えていい。しかし、それだけに、この「正しすぎる」指摘に虚しい響きを覚えてしまう。先にWindows Phoneのローンチイベントで掲げていたにもかかわらず、Facebook Homeのコンセプトに対するShaw氏の公式ブログ投稿が話題となったことで、ようやくWindows Phoneは「人を中心にした」OSであることを多くの関係者は知ることができたからだ。

 少なくとも、Windows Phoneのコンセプトが発表当時から広く知られていたならば、Facebook Homeのコンセプトは、“類似品”という印象に過ぎなかったはずだ。Facebookとしても、もっと異なる内容でFacebook Homeを発表しただろう。

 一般に、「我々はそのコンセプトをすでに提唱していた」と発案者自身が反論するのは得策ではない。その製品とコンセプトがユーザーに支持されていないことを、自ら強調してしまうからだ。どんなに優れたアイデアやコンセプトも、それだけでは大きな価値を持たない。それよりも重要なのは、アイデアやコンセプトを具現化し、世の中に普及させ、サポートやアップデートを持続的に提供していくことだ。

 結果的にショウ氏の反論は多くの関係者から非難を受けることになった。ショウ氏の肩書きも相まって、スマートフォンで苦戦するMicrosoftによる失言といった印象を業界全体に与えてしまったのは、非常に残念だ。

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