ソフトバンク、イー・アクセス/ウィルコムとの通話も無料に 株主総会で孫氏が「やりましょう」

» 2013年06月21日 14時19分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏(5月7日撮影)

 ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は6月21日、同社の株主総会において、ソフトバンクモバイルとイー・アクセス、ウィルコムの3社間で無料通話を提供する考えを示した。

 株主から「グループ3社のシナジー効果を高めるため、3社間の無料通話を提供してはどうか。この場で“やりましょう”と言っていただきたい」という質問に対し、やや間を置いて「やりましょう」と回答。「今のでかなりお金がかかったなぁ……」と続けて会場の笑いを誘った。提供時期や方法などは未定。

 次世代の高速通信規格「LTE-Advanced」への取り組みについては、「LTE-Advancedは当然準備中。非常に優れた技術の進展が控えている」としたが、提供時期などは明らかにしなかった。関連して設備投資が2012年度と2013年度がピークになる点については、「設備投資で一番お金がかかるのは自前で鉄塔を建てること。これが来年度の半ばでほぼ作り終わる。あとはネットワーク機器の積み増し・入れ替えになるが、金額的にはそれほどではない。技術的には進化していくが、プラチナバンドや数多い基地局を使って、世界で最も進んだネットワークを作っていきたい」と説明した。

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 そのほか、「他社乗り換えサービス(MNP)の獲得数はKDDIがずっと1位だが、巻き返し策はあるのか」という指摘に対しては、「MNPは重要な項目の1つだが、それだけではない。MNPをしてもらうために価格競争をしているが、これをどこまでやればいいのか。乗り換え以外のユーザーや既存客も多くいるので、MNPだけの極端なサービスはアンフェアになる。その程度を見極めながら、我々なりにやっていきたい。特定の時期だけに突出したサービスを行って、バランスを崩すのはいかがなものかと思う」と述べた。

米Sprint買収は大詰め

 株主総会では2012年10月に表明した米Sprint Nextelの買収計画についても時間が割かれた。孫氏は「多くの株主から寄せられた質問の1つ」として、米国に進出する理由を改めて説明した。

 「米国市場は人口が日本の2.5倍、GDPは2.6倍、ケータイのユーザー数も2.5倍ある。世界で最もリッチで、進んでいる国が米国だ。その国で挑戦したい。進出の背景には、米国と日本では一番売れている端末がiPhoneとAndroidで共通していることや、通信方式がLTEで共通化した点も挙げられる。かつては日本だけが独自技術を使っていたが、現在はまったく同じ技術を使っている」(孫氏)

 そのSprint買収には、米国当局の認可が4つ(証券取引委員会、対米外国投資員会、司法省、米連邦通信委員(FCC))必要だが、「現在は3つまで許可が下り、あとはFCCの審査を待つだけ。今後も粛々と進める」(孫氏)と順調に進んでいると報告。

 また米衛星放送会社のDISH NetworkもSprint買収に名乗りを上げていたが、DISHは18日にSprintへの新しい買収案の提案を断念。一時はDISHの買収を支持していたSprint傘下のClearwireも20日に方針を撤回してソフトバンク支持に切り替えており、孫氏は「これで形勢は逆転した。順調に進めば7月上旬に買収は完了する」と語った。

 なお孫氏は、Sprint買収に失敗した場合に備え「プランBとして全米シェア4位のT-Mobile US買収も相当真剣に検討していた」と明かし、一部で報道されていた内容を認めた。

気になるSprint買収後 米国事業は成功するのか

 株主からは米国での事業は成功するのか? という質問もあり、孫氏は「ボーダフォンジャパンを買収した時よりは楽。だと思う」と回答した。

 その理由として、「(買収した2005年当時)ボーダフォンは契約数が完全に横ばいで、ユーザーごとの売り上げも真っ逆さまに落ちている状態だった。あと数年そのままなら、赤字に陥っていたと思う。しかしSprintはユーザーが増加傾向で、これを伸ばすのは楽かもしれない。またボーダフォンの業績は底だったが、Sprintはすでに底を打って反転している。リバウンド直後はさまざまな手を打ちやすい」と説明。

 さらに、「ボーダフォンの当時の端末は分厚くてアマガエルみたいだった。また日本でプラチナバンドを手にするまで6年かかった。しかしSprintは、iPhoneやGALAXY、HTC、Motorolaとすばらしい、魅力的な端末をすでに売っている。そして850MHz帯というプラチナバンドも持っていて、これも7月からサービスを始められる」と当時を振り返り、日本で培ったノウハウが生かせると自信をみせた。

 ソフトバンクがSprintの買収に成功すれば、ソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・アクセスと合計してグループの契約者数は9710万回線となり、全世界で第3位の携帯電話通信事業者になる。そのスケールメリットを生かし、コストの削減と設備投資の効率化も行えると補足した。

 「Sprintはユーザー数が(米国シェア1位と2位の)Verizon WirelessとAT&Tに比べて約半分。そのままでは端末の調達力も弱いまま。しかしソフトバンクが買収して日米3位になれば端末購入の購買力が上がる。また設備投資額は世界2位になり、インフラメーカーとの交渉力もアップする。最先端の設備を安く、速く仕入れられる。インフラ、ITコスト、解約率の削減、顧客サービスなど、営業費用も削減でき、その合計は年間で2〜3000億円になるだろう。これらはそのまま利益になる」(孫氏)

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