大幅リニューアルでサービス強化 富士通のシニア向けSNS「らくらくコミュニティ」とはスマホはもちろんPCやタブレットでも(2/2 ページ)

» 2013年12月12日 15時43分 公開
[房野麻子,ITmedia]
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投稿はすべて有人でチェック 安全・安心を提供

 らくらくコミュニティの投稿は、完全人力で24時間チェックされている。掲示板の投稿は一度プールして、個人情報が含まれていないか、公序良俗に違反していないか、個人に対する誹謗中傷ではないか、そして広告ではないかが、人の目でチェックされる。

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 「シニアの方の中には、名前を教えてくださいとか、連絡先を教えてくださいと掲示板に書かれると、素直に書いてしまう方が多かったのです。個人情報が書かれた投稿はアップせず、『危ないですよ』と戻すオペレーションをしています」(熊沢氏)

 クローズドなサークル内の投稿にもチェックが入る。ただし、こちらのチェックは投稿後だ。掲示板は表示される前にチェックするので、混みあっているときには10〜15分の時差が発生することもあるが、サークルの投稿は、問題になるケースが少ないだろうという想定で、速やかに表示される。「ひどいものは後からチェックして取り下げ、問題のある投稿が多い場合は、注意を促す」というスタンスだ。問題となる投稿は全体の0.03%とごくわずかだ。

 「(問題投稿は)ほとんどない、と言っても良い状況です。しかも、NGとなる投稿の大半は、タレントの写真など明らかにご自身で撮った写真じゃないもの、公の場で使うのはふさわしくない、というものですね。我々が心配していたほどには起きていません。ましてや炎上はまったくないです。逆に、褒め合いすぎて、それがつまらないと思われる方がいるかもしれない(笑)。癒される感じですね」(熊沢氏)

 また、ユーザー自身が発言をチェックする「自治会」も存在する。「ユーザーさんのなかで、『その発言はマズイですよ』と諭すようなことをやられる方もいらっしゃって、自浄作用が働いています」(青山氏)

 自治会は自然発生したもので、運営側とはまったく関係がない。ただ、グレーゾーンの投稿に関して、あくまでセーフティにいくか、コミュニケーションの幅を広げるためにある程度は許可するのか、判断が難しいケースもある。そのときの対応で、自治会からフィードバックをもらうことがあるという。

 「投稿チェックの基準の参考にさせてもらっています。ユーザーさんと一体になって作り上げている感じがありますね」(熊沢氏)

 OKかNGか、あいまいな投稿は、投稿された掲示板や文脈をみて臨機応変に判断する。なお、らくらくコミュニティは、友だち申請をして相手が承認するとダイレクトメッセージを送り合うことができる。このメッセージは第三者によるチェックは行なわれない。

外部の企業と連携して拡大を図る

 らくらくコミュニティでは、外部の企業とコラボレーションするなどシニア層に浸透させていくための取り組みも行っている。富士通内に「らくらくコミュニティ推進室」というバーチャルな組織が設立されており、熊沢氏、青山氏も所属。日々、らくらくコミュニティユーザーのニーズを把握するのはもちろん、NPO団体や趣味のサークル、企業などにアプローチし、サービスの普及拡大に努めている。

 企業とのコラボレーションとしては、落語興行を開催する「人形町らくだ亭」という小学館主催のサークルとの事例がある。富士通はらくらくコミュニティ上に、らくだ亭のクローズドサークルを提供。落語会の会場でらくらくコミュニティのブースを設置し、来場者を勧誘する。会場で登録するともらえる手ぬぐいや、サークルに投稿すると次回公演のチケットが当たるなどの特典を小学館が用意した。富士通は、サークル内でやり取りされたユーザーの声を小学館に提供する。

 「会場でブースを用意したのは、らくらくコミュニティの登録を手伝うためでもあります。らくらくスマートフォンじゃない方が、まだたくさんいらっしゃって、フィーチャーフォンだと空メールの送信が必要だったりと、登録の仕方がちょっと面倒なんです。来場した280人中、40〜50人がらくらくコミュニティに入会しました。サークルも落語好きな人らしいコメントが多く、盛り上がっていました」(熊沢氏)

 東京フィルハーモニー交響楽団とも、らくだ亭と同様のコラボレーションを行った。コンサート会場にブースを設置して、らくらくコミュニティのユーザーを募集。投稿すると、東京フィルが提供するコンサートの招待券が当たる。

 また、前述のオカダヤと日本手芸協会と提携して行った手芸コンテストも、企業コラボの一例だ。オカダヤの店舗に、らくらくコミュニティのチラシを置いてもらったり、ポスターを貼ってもらったりして、来店者にらくらくコミュニティを紹介。らくらくコミュニティでは手芸好きのユーザー向けにコンテストを開催して、オカダヤの認知向上を図った。

 さらに、高齢化が進む地域でスマートフォン教室を開催し、らくらくコミュニティの紹介も行っている。これは地域住民のコミュニケーションの振興にも一役買っている。

 「例えば鎌倉市の今泉台団地は、約2000戸5000人のうち、65歳以上が40%になっています。行政と横浜国立大学、企業が、活性化の取り組みをやっていますが、その切り口の1つとして、スマホ教室やらくらくコミュニティの講習会を実施しました。そのアンケート結果は好感触でした」(熊沢氏)

将来はビジネス展開も期待

 製品だけでなく、らくらくコミュニティというサービスも提供し、企業や団体とコラボレーションしてサービスの拡大を図っている富士通。なぜここまで熱心に取り組んでいるのだろうか。

 「1つは端末の付加価値という意味です。らくらくコミュニティをトリガーとして端末の購入に結び付けたい。サービスによる端末購入促進が理由の1つです。もう1つは、弊社は“らくらくパソコン”のような製品も展開していまして、シニア向けのサービスがあれば、タブレットやPCなどに広がり、買い替え時に弊社のプロダクトを選んでいただける。端末とサービスの垂直統合という考え方ですね」(熊沢氏)

 現時点では端末の付加価値という意味合いが大きいが、将来的にはビジネスが生まれることも期待している。

 「積極的に発言するシニアの方が、5万人、10万人、30万人集まったら、また違ったビジネスが生まれてくると思っています。現時点で具体的な計画はありませんが、マーケティング支援やシニアをターゲットとした企業さんに対するビジネスに発展させたいと思っています」(熊沢氏)

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