ドコモのiPhone発売で中小ベンダーに勝機? 日本のアプリマーケットが迎える“第3幕”とは佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)

» 2013年12月16日 12時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]
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ビジネスモデルが3局化、収益機会は広がりを見せる

 だがファン獲得を主体としたビジネスを展開できるのは、エンターテインメント系など、ある程度ファンを育てやすいジャンルのアプリに限定されやすく、種類を選んでしまうのもまた事実だろう。では、どちらかというとファン獲得にはつなげにくい、実用系ツールなどの場合は、どうしたビジネスを展開する必要があるのだろうか。

 水野氏はそうしたアプリは今後ほぼ無料に近づくと見ている。その理由として、「大手企業がプロモーションやブランディング、あるいは顧客との接点を持つために、自社ブランドを用いた良質なアプリを、無料で提供する流れが強まっていくため」と話す。

 もしそうした動きが主流になると、実用系アプリの開発者は収益化の道が閉ざされてしまうようにも感じるが、水野氏は「今後そうしたアプリのビジネスは、B2CではなくB2BやB2B2Cが主体になっていくだろう」と予測している。ユーザーからの直接的な収益化が困難になることから、企業をスポンサーに付け、受託によるアプリ開発でのビジネスが主体になっていくと見ているようだ。

 これまでの話を総合すると、アプリマーケットの第3幕では、開発やプロモーションに多額の資金を投入し、莫大な売上を上げるゲームを主体とした“ハリウッド型”、ファンを獲得して継続的に利用してもらい、地道に収益を上げる“アーティスト型”、そして他の企業をスポンサーに付け、B2BまたはB2B2Cのビジネスを主体とする“受託型”と、ビジネススタイルが3つに広がり、多様化してきているといえそうだ。

 また「どのようなビジネスを展開するにしても、アプリを作った後の運用が大切」と、水野氏は忠告する。アプリはリリースするまでの企画や開発には熱心に取り組むが、その後のことを考えていない場合が多いという。確実な収益につなげるためには、アプリをリリースした後どうやって盛り上げていくかが最も重要であり、運用をするための予算をしっかり確保しておくことが重要だと、水野氏は話している。

日本と海外で異なるiPhoneの普及率、海外展開への影響は?

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 iPhoneが国内で主流となる可能性が高いことが、アプリマーケットの第3幕につながるというのは先に触れた通りだが、ではそうした状況が、果たしていつまで続くのだろうか。これについては水野氏も「分からない」と答えている。

 現在iPhoneの利用が拡大しているのは、単にドコモが取り扱いを開始しただけでなく、周囲にiPhoneを持っている人が多いという安心感や同調圧力が少なからず影響している。それゆえ“大画面”“カメラ”など明確な目的を持つ人がAndroid端末を購入することはあるものの、一般ユーザーにとって現状、iPhone以外の端末を選ぶ理由に乏しいことから、「何らかの新機軸が登場しない限り、この状況が続くのではないか」と水野氏は考えている。

 その一方、海外では安価なAndroidスマートフォンが急速に広まっており、日本とは逆にAndroidの方が主流を占める状況となっている。それゆえiPhoneが主流を占める日本が、いわゆる“ガラパゴス化”するのではないかという懸念の声も、最近では聞かれるようになってきた。

 その懸念はアプリシーンにおいても同様だ。現在はiOSのシェアが高い日本と米国がアプリマーケットのけん引役となっているが、最近では韓国のように、Androidが主流を占める国が台頭しつつある。今後端末のシェア通りにアプリの売上が高まっていけば、Androidが世界のアプリマーケットで主流を占める可能性も、あり得ない話ではない。

 そうした場合、国内の主流はiOS、海外での主流はAndroidという逆転現象が生じ、特に海外進出を目指す開発者にとっては厳しい環境になる可能性があると、水野氏は話す。しかしだからといって、水野氏は安易に海外のマーケットを目指すことにも異を唱えている。

 最近では日本市場は成長に限界があるとして、当初より海外進出を目指すアプリベンダーも見られる。だが水野氏は「そもそも海外のマーケットはその国のベンダーにとって有利な環境。そこをあえて切り開いていくには、日本でアプリを開発・提供するのと比べ何倍もの資金が求められる」と話しており、資金力のないベンダーが無理に海外進出を目指すべきではないとしている。

 さらに水野氏は、「海外からは、日本のアプリマーケットが“ゴールドラッシュ”に見られている」とも話している。日本のアプリベンダーは、成長の限界や少子化傾向などから“日本より海外”という発想になりがちだが、海外のベンダーは逆に日本の市場性の大きさに注目しており、積極進出をはかっている状況なのだ。それゆえ水野氏は、海外進出よりも日本市場でしっかり稼ぐことを、まずは考えるべきではないかとも指摘する。

 iPhone向けのApp Storeが始まって5年。すでに“第3幕”を迎えると評価されていることから分かるように、アプリマーケットはこの数年、常に大きな変化の波にさらされてきた。だが変化を迎えるにつれ、アプリマーケットに収益化の機会が増えてビジネスチャンスも広がっており、成功を収める企業が増加しているのも確かだ。それだけにアプリ開発者には、マーケットの動向を読み、変化を捉える力が求められているともいえそうだ。

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