ソフトバンクモバイルが3月5日、スマートフォンのアプリを活用した募金プラットフォーム「かざして募金」の提供を開始した。アプリはGoogle Playからダウンロードできる。利用料金は無料だが、ダウンロード料や募金サイトへのアクセスには別途通信料が発生する。
対象機種はAndroidスマートフォンで、ソフトバンク以外のスマートフォンでも利用できる。ソフトバンクのスマートフォンで利用すれば、毎月の携帯料金と合わせて支払えるので、クレジットカード番号の入力などは不要。他キャリアのスマートフォンでは、クレジットカードでのみ決済できる。なお、iOS向けアプリは2014年夏ごろから提供する予定。
参加する非営利団体が登録したロゴ、文字、ポスターなどを、アプリから起動したスマートフォンのカメラで読み取ると、各団体の募金サイトへアクセスでき、寄付ができる。ソフトバンクモバイルが開発した画像認識技術によって実現している。ポスターにNFCタグを埋め込んで、スマホをかざすだけでアプリが起動するといった仕組みは現時点では採用していないが、「お客様の要望を聞いてサービスを進化させていきたい」(ソフトバンク担当者)とのこと。
同社は、カメラをかざす→寄付金額を選択するだけの2ステップで寄付ができる仕組みを提供するのは、日本で初めての事例としている。寄付金額は100円、500円、1000円、3000円、5000円、1万円から選択でき、毎月継続して寄付することも可能だ。
ソフトバンクモバイル代表取締役社長 兼 CEOの孫正義氏は「支援をするのが少し面倒、煩わしい、どうすればいいのか分からないと思う人に対して、簡単、気軽、継続的に寄付ができるプラットフォームを開発した。(サイトにアクセスしてから)2タップで継続的に募金ができる仕組みは日本で初めて」と胸を張る。
3月5日時点で、かざして募金に参加している非営利団体は、あしなが育英会、日本ユニセフ協会、スペシャルオリンピックス日本、東日本震災復興支援財団など37団体。このほかの非営利団体についても参加を受け付けている。事前審査に通過した非営利団体は、ロゴ、文字、ポスターなどの画像を登録して募金活動ができる。
団体側の利用料金は月額1980円(税別)と募金額×1.8%(税別)だが、2014年8月末までに登録をすると、6カ月間は無料で運用できる。ソフトバンクモバイル 総務本部 CSR企画部 部長の池田昌人氏によると、これらの利用料金は、かざして募金の運用にかかる実費として使われ、「ソフトバンクモバイルは一切の利益を生み出さない形でサービスを展開していく」とのこと。孫氏も「実費用以外に余ったお金が出たら、すべて非営利団体に寄付をしたい。我々がもうけるためにやるわけではない」と補足する。
非営利団体を支援している企業ロゴや商品名なども登録可能だ。ケンタッキーフライドチキンの商品にスマホをかざすと、スペシャルオリンピックス日本の募金サイトにアクセス可能になるという連携も予定している。「非営利団体と企業の新しいコラボレーションがどんどん広がってもらえればと考えている」(池田氏)
ソフトバンクモバイルは、ユーザーとソフトバンクモバイルで10円ずつ(計20円)を東日本大震災の復旧支援活動に毎月寄付する「チャリティホワイト」を実施している。チャリティホワイトの加入数は2014年2月で185万件で、寄付額は4.3億円以上(毎月3700万円以上)に上る。「20円という少額であっても、皆さんの気持ちがあれば、支援の輪を大きくできることを改めて痛感した」と池田氏は話す。
一方で、復興支援以外にも少子高齢化、エネルギー、環境、人種などに関する課題がまだ残っている。そこでソフトバンクグループは、携帯電話の「いつも持ち歩いている」「いつでも通信できる」「1人1人を認識している」という3つの特徴を生かして、かざして募金のプラットフォームを開発した。
「現在の寄付活動は、団体のWebサイトを検索したり、クレジットカードの情報を入力したりという手間があり、寄付まで行き着かないことが多数あると聞いている」と池田氏。「画像認識で寄付」「携帯料金一括払い」「毎月の継続寄付(ソフトバンクスマホのみ)」「多くの団体が参加可能」というメリットを持つかざして募金なら、寄付へのハードルを下げられるというわけだ。
発表会には、公益財団法人東日本大震災復興支援財団 発起人の王貞治さんと、SMAP 中居正広さんが登場。王さんは「何かしたいと思っている人はたくさんいると思うけど、かざして募金は思いを伝えやすいサービス」と感想を話した。中居さんは「(東日本大震災で)被災されていて、まだもとの生活に戻ることができない方々が8万人くらいいらっしゃると聞いている。微力かもしれないけど、関心を持つことが大事。呼びかけて、かざして募金を利用していただいて、利用した方も輪を広めていただきたい」と話した。
かざして募金に参加している4団体からは、有森裕子さん(公益財団法人スペシャルオリンピックス日本理事長)、鵜尾雅隆さん(日本ファンドレイジング協会 代表理事)、齋藤英彦さん(公益財団法人日本骨髄バンク 理事長)、藤村修さん(あしなが育英会 副会長)も会場に集まり、活動内容やかざして募金の感想を語った。
「(スペシャルオリンピックス日本で支援している)知的障害者のことを知るには時間がかかる。『公に(寄付をすること)は……』という気持ちの方々も、率先して寄付できる流れができていくことに期待をしたい」(有森さん)
「日本の個人の年間寄付額はだいたい5000億くらいだが、アメリカは年間25兆円。(それでも)日本人の3人に約1人は、毎年何らかの寄付をされているし、東日本大震災のときは、77%くらいの方が寄付をした。さまざまな調査でも、7割くらいの方が『社会のために何かをしたい』と答えている。そこをつなげることが、これからとても大事になる」(鵜尾さん)
「あしなが育英会への2012年度の寄付金額は57億円くらいだが、申し込みをして、引き落としの口座を申請するなど、寄付をするにはなかなか手間がかかる。これ(かざして募金)でパッと継続寄付ができることには驚いた。大変素晴らしいサービスだと思っている」(藤村さん)
「日本骨髄バンクの年間の運営資金は10億円くらいで、約8%が寄付に依存している。若い人が寄付していただく機会が増えるので、大変ありがたく思っている」(齋藤さん)
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