ユーザー獲得競争、求められる高度な接客、人材不足――悲鳴を上げるキャリアショップワイヤレスジャパン2014(3/4 ページ)

» 2014年05月30日 20時33分 公開
[房野麻子,ITmedia]

「価格競争」から「価値競争」への転換が必要

photo 野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 上席コンサルタント 北俊一氏

 最後に、野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部 北俊一氏が、「携帯電話販売チャネルの現状と今後の在り方」と題する講演を行った。

 北氏は冒頭、「これから冷や汗の出るような話をする」とし、総務省で携帯電話の競争や消費者保護に関するルールの見直しが行われていることや、それらが販売代理店に与える影響について説明した。

 まずは、現在の携帯電話市場について。「3キャリアからiPhoneが出そろい、OTTというキャリアフリーのプレイヤーが登場するなど、ネットワークが均質化している。その中で、キャリア間の差異化要素が希薄化し、同質化している」と北氏は話す。それにより、さまざまな「不健全な販売」が横行し、「行き過ぎた販売」が増えていると現状を分析する。


photo 携帯電話市場の現状と問題点。北氏は「健全な競争環境のために、価格競争から価値競争にならなくてはいけない」と指摘する

 総務省では現在の状態を「大手3社の協調的寡占状態」とみている。携帯電話業界を健全化していくには、「価格競争」から「価値競争」に変えていかなくてはいけないと北氏は提言する。

 「2013年のエリア偽装に始まり、各社が『一番通信速度が速い』、『エリアが一番広い』と言い合っている現状がある。また、アプリやフォトフレーム、みまもりケータイ、体重計など、ほとんどユーザーが使わない商品の押し付け販売も横行している。そして、高額なキャッシュバック。3月は過去最高である140万件のMNPがあった。4月1日でいったん沈静化したが、ゴールデンウィーク前から関西や九州で復活している。こうした行き過ぎた販売が業界への不信感を高め、今回の規制強化の動きにつながった」(北氏)

photo 「さまざまな『不健全な販売』が業界への不信感を高め、規制強化の流れにつながっている」と北氏は指摘する

 現在、総務省では大きく2つの部会で議論が行われており、最終的には2020-ICT基盤特別部会に収れんされ、情報通信審議会に答申される。また、ICTサービス安心・安全研究会もあり、こちらは販売代理店のビジネスにストレートに影響してくる事柄について議論されている。

photo 総務省で通信市場における競争ルールや消費者保護ルールの見直しが議論されている

 「通信業界は『激動の』という言葉がふさわしい業界。2007年の『モバイルビジネス研究会』で販売モデルの見直しが議論され『分離プラン』という結果になった。それに前後して、当時は奇想天外だった『割賦販売+スーパーボーナス』が出た。そのときはウルトラCの料金プランだったが、今や全社同じプランになった。その間、Android、iPhoneが普及、OTTが登場することによって、キャリアの均質化、土管化が劇的に進んだ7年間だった」(北氏)

photo 過去7年間の動きでキャリアの「土管化」「同質化」が進んだと指摘

 MNPも劇的に増え、2013年のMNP数は658万件。MNPは2006年10月26日にスタートしたが、2007年は約274万件、2008年は約200万件と落ち着いていた。しかし2009年から増え始める。「だが、2009年から2011年までは、そんなに不健全ではなかった」と北氏は振り返る。

 MNPが急激に増えたのは2012年から。OTTのコミュニケーションツールが浸透し、キャリアメールは使わないというユーザーが増えたため、よりMNPをしやすくなったことが予測されるが、「2012年、2013年の数は異常。キャッシュバック目当てでキャリアを変えるような人がたくさん登場した」と北氏は説明する。

 北氏は総務省のワーキンググループで、キャッシュバックに対する規制が必要だと述べたことを明言。「キャッシュバックは、キャリアの差異化要素がなくなった状況で、なんとか契約者を相手から引き剥がすために出てきた手法。差異化要素が作り込まれない限り、いずれキャッシュバックは復活すると言ったが、早くも復活している」(北氏)

photo 総務省のワーキンググループで、キャッシュバックに対して規制が必要だと提言

 北氏は「私自身、規制には反対。自主的に(行き過ぎた販売を)やめてもらいたいのが本音。しかし収まらないようなので、規制することになりそう」と述べ、その方法として「SIMロックの解除」の方向に向かっていると説明した。

 SIMロックの解除を可能にすると、キャッシュバックを含む奨励金をキャリアが回収できないまま、ユーザーがMVNOなどの他社に移動してしまうこともありえる。つまり、SIMロック解除を可能にすることで、過度な販売奨励金を防ぐことができる。

 「微妙なのは『月月割』『毎月割』『月々サポート』といった、2年間使うことを条件に実質端末負担金が0円になる、というようなプラン。これについては、SIMロック解除になったところで、割賦を組んで購入している人の端末の残債は残るし、契約を解除した時点で月々の割引の契約が切れるので、キャリアが端末代金を負担することにはならないはず。だから、月々の割引は残ると予想している」(北氏)

 一方で北氏が危惧しているのは、販売代理店スタッフの精神的な負担だ。

 「最近はキャッシュバックの影響で、販売店に行くと札束を抱えたスタッフがお客さんに現金を渡すようなこともある。また、使うか使わないか分からないアプリをお試しで契約させ、ユーザーが解約を忘れて料金が発生するということもある。そういう売り方を、数字を達成させるためにスタッフにやらせている。自分はなぜこんなことをしているのか、こんなことをするために販売代理店スタッフになったわけじゃない、こんなつもりじゃなかったと、ピュアなスタッフほど苦痛を感じる。ドコモさんの話にもあったが、はっきりいって携帯電話の販売職は不人気職種というレッテルが貼られている」(北氏)

 「携帯電話業界を健全な姿に戻さなくてはならないが、複雑なエコシステムになっているために、1つの問題を解決すると、また新たな問題が発生する状況になっている」と北氏は話す。

 「例えば、MNPキャッシュバックが落ちついたことで、反社会的勢力が再び携帯電話ショップを急襲するという事件が増えてきている。MNPキャッシュバックがあった時代は、合法的にお金が稼げたので事件は減っていた」(北氏)

 こうした現状を一通り説明したあと、北氏は総務省の委員会で提案した私案を紹介した。

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