ユーザー獲得競争、求められる高度な接客、人材不足――悲鳴を上げるキャリアショップワイヤレスジャパン2014(4/4 ページ)

» 2014年05月30日 20時33分 公開
[房野麻子,ITmedia]
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課題解決には会社を超えた取り組みが必要

 「スマートフォンやタブレットは本来、10万円を超すような高額な製品なので、ユーザーも2〜3万円程度の負担はしてほしい。MNPキャッシュバックは1万円程度、契約解除手数料くらいに抑える。月々の割引については、実質負担金0円ではなくて、2年間使ったら2〜3万円程度という世界に縮減してほしいと考えている」(北氏)

photo 北氏が提案した私案

 これらが行われると「iPhone 5sが売れてiPhone 5cが在庫の山という話がなくなる」(北氏)。現在は、実質負担が5s、5cとも0円になってしまうので、5sを買う人が多くなる。5sの実質負担金が4万円、5cが2万円になれば、自分は5cにしておこうかな、という人が出てくるはず――という考えだ。

 「こうすることで、携帯電話を無料で入手してキャッシュバックまでもらえるという状態から抜け出せる。携帯電話はハイテクノロジーの塊なので、こういうデバイスに対するリスペクトを持ち、大事に使って壊れたら修理する、本当は新品が欲しいけれど高額だから中古を買おう、という端末の修理再生の流れ、あるいは中古端末市場が成立する可能性がある。私は成立してほしいと思っている」(北氏)

 SIMロックについては、「キャリアから販売される最初の状態はロックをかけていてもいいが、一定の条件を満たせばロックを解除する方向になってほしい」と北氏は自身の考えを述べた。法律で規制したり、一定期間を過ぎるとロックを解除したりしている諸外国の例を紹介し、「端末販売奨励金を付けて買った人は、その奨励金分をキャリアが回収し終わるまではロックを解除できないというのは合理的。だから、一律に奨励金がなくなるというわけではないかもしれない。ともかくSIMロックと奨励金との関係は非常に密接」(北氏)

 ライトユーザー向けプランのバリエーションを提案してビジネスチャンスを見出したMVNOについては「大変期待している」(北氏)と述べ、「キャッシュバックや月々の割引のお金を、ぜひ長期利用者への優遇や低利用者向けのデータ通信プラン、欧米で主流になっているデータシェアプランを作る方に使ってほしいと提案したら、まるで下打ち合わせしたようにドコモから新料金プランが発表された」(北氏)

 また北氏は、野村総研が発表した日本の携帯電話料金についてのレポートを紹介。「総務省が毎年、内外価格調査を出しているが、通信料金だけを比べているので正しい比較になっていない」と北氏は指摘する。「グローバルでも端末と回線は一体的に動いており、ユーザーにとっての負担は、回線使用料と端末価格を合わせた形で見る必要がある」(北氏)とする。

 各国のナンバーワンキャリアの料金プランで、iPhone 5sの16Gバイトモデルを買った場合のユーザーの負担を比較すると、「どの断面で切るかによって、順位はめまぐるしく変わる」(北氏)。日本の携帯電話料金は、ある条件では高く、別の条件では安い。

 「野村総研の主張は、日本の携帯電話料金は高くも安くもないということ。だから、国際的に見て日本の携帯電話料金が高いとか安いという話は、もうやめましょうと言いたい。ちなみに、海外では今回のドコモの“パケあえる”が主流。やっとデータシェアプランで比べることができた。比べてみると、こんなものかなと。高い、安いという世界ではない」(北氏)

photophoto 野村総研が発表した日本の携帯電話料金についての自主研究レポート。「野村総研の主張は、日本の携帯電話料金は高くも安くもないということ」(北氏)

 また、業界に対する不信感が高まっていることを示すデータとして、各県の消費者センターに集まってくる苦情相談をデータベース化し、分析したものを紹介。携帯電話サービスについては年間約1万件の相談があり、一向に減っていないという。

 「これを減らしなさいと、ずっと消費者庁から言われ続けてきているが、減るどころか増えている。これに消費者委員会が怒り、2012年12月に法制度の改正を含めてちゃんと対応するようにという要請が総務省に来た。今、その対応に追われている」(北氏)

 総務省で議論されている問題で、販売代理店に大きく影響を与えそうなのが、クーリングオフだ。もっとも悪質だとされているのは光ファイバーの電話勧誘と訪問販売。詐欺まがいの方法で販売されていることも多いとし、クーリングオフの導入が検討されている。「この電話勧誘と訪問販売については(クーリングオフ導入に)キャリアも納得しているが、問題は店頭販売だ」と北氏は指摘する。

 「本来、店頭で対面販売した商品をクーリングオフするということはない。情報通信や電気通信サービスのトラブルがあまりにもひどいので、電気通信サービスに関しては店頭販売においてもクーリングオフを入れるべきであるという議論をしている」(北氏)

 例えば、家電量販店に冷蔵庫を買いに行ったのに、インターネットのプロバイダ契約が付いてきて大幅な割り引きが行われている例がある。

 「10万円も割り引かれるんだったら入ろうか、と勢いで契約したものの、頭を冷やして考えたら、やっぱり必要ないので解約したいと。そこで、違約金が発生するほか、割り引き額を返してくださいということでトラブルになる。通常、クーリングオフの対象になるのは、突然電話が掛かってくるとか、突然家に訪問されるという不意打ちで、心の準備ができていないまま契約してしまうもの。電気通信サービスでは、店頭でも不意打ちをくらうというレッテルを貼られてしまっている」(北氏)

 先ほども例に挙がった「アプリの抱き合わせ販売」などが“不意打ち”と見られているようだ。「これらの販売方法が今の規制強化の流れにつながっている」と北氏は話す。

photophoto 消費者センターに集まってくる苦情相談に関するデータ(写真=左)。携帯電話の場合、アプリやフォトフレームなどの抱き合せ販売が“不意打ち性”があると問題視されている(写真=右)

 北氏は「これまでの価格競争から価値競争へと転換せざるを得ない状況に追い込まれている」とし、「主体的に価格競争から離脱し、価値競争に入っていかなくてはならない」と提言する。

 KDDIのau Walletやドコモの新領域のサービスなどの取り組みはあるが、差異化が進むには時間が掛かる。北氏は、現時点の差異化要素として「顧客接点力がますます高まっている」とし、「販売を支えているスタッフこそが業界を支えている。通信事業者の競争力の源泉。人財である」(北氏)と語る。

photophoto 「価格競争から価値競争への転換」(北氏)が必要だと提言(写真=左)。キャリアの差異化要素として「顧客接点力」の重要性が高まる(写真=右)

 「販売代理店のスタッフがいきいきとやりがいを持って働ける職場環境作りが必要だが、ショップ側は人材の確保が難しく、各社ごとの取り組みでは手に負えない状況。会社を超えた取り組みが必要だ」と、北氏は業界全体が抱える課題を述べた。

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