LTEが開始されて数年が経ち、さまざまな場所に足を運んでも快適な高速通信の恩恵を得られるようになった。一方で、通信キャリアや格安SIMを提供するMVNOの契約には、LTEのデータ通信量は、毎月1Gバイト〜7Gバイト程度の上限が設定されている。その通信量を超えてしまうと、月末まで低速な通信を余儀なくされてしまう。事実上のナローバンド状態だ。
そのナローバンド状態での通信だが、各通信事業者で数値が微妙に違うのはご存知だろうか。例えば、NTTドコモの通信速度制限は128Kbpsだが、MVNOのOCNやIIJは200Kbpsだ。以下のようになるのだ。
この中で1社だけスタンスが異なるのがIIJだ。IIJが提供している「IIJmio高速モバイル/Dサービス」(以下、IIJmio)では「クーポン」という仕組みを採用しており、クーポンを使うときは下り最大150Mbps/上り最大50Mbps、クーポンを使わないときは上下最大200Kbpsとなる。ユーザーが高速/低速を自由に選べるという点で、「速度制限を課す」というドコモやOCN モバイル ONE(およびほかのMVNO)とは考え方が異なる。
今回は、上記のIIJmio、OCN モバイル ONE、ドコモの通信制限環境下のSIMを利用し、実際にどれだけ快適に通信できるのかを検証する。
ナローバンド状態での使い勝手を検証しようと思ったのには理由がある。IIJmioでは、低速通信時では確かに上下最大200Kbpsだが、通信を開始した最初の75Kバイトまでは速度制限をかけない「バースト転送」を許可している。75Kバイトまでのデータ量ならつまり高速通信が可能なのだ(→LINEやTwitterは200Kbpsでも快適?――IIJ佐々木氏が通信品質のこだわりを語る)。しかし、「75Kバイトまで高速通信」と言われてもイマイチピンと来ないので、試してみたくなったのだ。
OCN モバイル ONEを選んだのは、月額900円(税別)の1日あたり50Mバイトプランでは、その日の通信量が50Mバイトを超えると翌日まで200Kbpsに制限されるので、頻繁にナローバンド状態になると考えたため。ドコモを加えたのは、IIJもOCNもドコモのネットワークを利用したMVNOなので比較をしたいのと、やはり契約数の多さから、通信制限状態になる人も多いだろうと考えたため。
単に「ナローバンド状態を試してみた」だけでは主観的な感想になってしまうので、通信が完了するまでの速度を計測した。
計測のためにSIMを入れた端末は、最新モデルの「GALAXY S5 SC-04F」をチョイス。それぞれSIMを入れ替えてテストを行うこととした。
なお、当然だがIIJ mioは高速化クーポンオフ、OCN モバイル ONEはその日の50Mバイトを使いきり、ドコモの回線は月間通信量7Gバイトを超えた状態で計測した(正直、これがいちばんきつかった)。
まずは速度テストを実施した。
速度テストを行うアプリには、「RBB TODAY SPEED TEST」アプリを利用し、それぞれ5回の下り速度、上り速度、ping(数字が小さいほど反応が良い)を計測し、平均値を求めた。テストは5月24日21時頃に、埼玉県東松山市の木造アパート屋内で実施した。
結果は以下のとおり。
ドコモ | IIJ | OCN | |
---|---|---|---|
下り平均速度 | 約94Kbps | 約362 Kbps | 約108 Kbps |
上り平均速度 | 約172 Kbps | 約462 Kbps | 約127 Kbps |
Png(ミリ秒) | 65.6 | 38 | 53.2 |
ドコモとOCNはほぼカタログ値に近いものとなっている。理論上は200Kbpsまで速度が出るが、実際の速度では環境に依存するため、もう少し遅い速度で計測される。
意外だったのは、IIJだ。こちらも理論値は上下最大200Kbpsだが、実際にはその倍近い速度が出た。これは、スピードテスト開始時に最初の75Kバイトまでは高速通信をするため、スループットの平均値を出す通信速度も引き上げられたと思われる。常に400Kbps前後の速度で利用できるわけではないことをご理解いただきたい。
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