“海外”と“LIFE”に集中して取り組む――新社長 出澤氏が語るLINEの新戦略佐野正弘のスマホビジネス文化論(2/2 ページ)

» 2015年04月06日 07時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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LINE Payは決済より送金に注目

 そして、出澤氏の体制となったLINEの今後を見据える上で重要となるのが、ライフプラットフォームの拡大だ。LINEは2014年、「LIFE」をキーワードに、生活に根差したさまざまなサービスの提供を進める、ライフプラットフォーム構想を発表している。

 出澤氏はこの構想を打ち出した理由について「スマートフォンは高性能なパソコンを24時間、手元に持つという、非連続の大革命を起こしている。パソコンでは届かなかったリアルビジネスやペイメント、O2Oなどの分野に入り込めるようになっており、いろいろなネットサービスがリアルに近づいていく」と話しており、ライフプラットフォームの可能性に大きな期待を寄せている。

 ライフプラットフォームの軸となるサービスの1つが「LINE Pay」である。LINE Payは2014年12月にスタートしたが、当初は個人間の送金と、LINEのサービス上での決済手段としてしか利用できなかった。だが2015年3月に、「ZOZOTOWN」「HMV ONLINE」「SHOPLIST.COM」などのECサービスの決済手段としても利用できるようになったことから、テレビCMを展開するなどして積極的なプロモーションを実施している。

 LINE Payは、どちらかといえば決済の分野で注目されることが多いが、出澤氏は「これまで送金に対する新しい提案が出てこなかった。送金がシームレスにできるのはとても便利で革命的であり、非常に大きな手応えを感じている」と話している。決済よりもむしろ、送金の分野に大きな可能性を感じているようだ。

 LINEは若年層に強いサービスであることから、送金に関しても、若年層に向けた利用拡大が大きな鍵を握るのではないかと、筆者は感じている。この点について出澤氏は「サービスの年代を絞るわけではない」としたものの、例えば親から離れた所に住む子供へ仕送りを送金するなど、若年層を切り口としてLINEのソーシャルグラフを生かす形で、浸透する可能性もあるとしている。

photo LINE Payの送金スキーム。出澤氏は決済よりも、手軽な操作で利用できる送金に大きな可能性を見出しているようだ

LINE@の解放は公式アカウントに影響を及ぼすか?

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 そしてもう1つの軸となるのが「LINE@」だ。LINE@は従来、店舗を持つ事業者やメディアなどに対してのみ提供されていた、無料でも利用できるアカウント「LINE@」を、2015年2月に個人向けにも開放。これによって、個人でもLINEを通じた情報発信が簡単にできるようになった。

 取材時点(2015年3月下旬)において、LINE@の解放後に増えたアカウント数は20万くらいとのこと。「ハンドメイドの消しゴム判子屋さんが、LINE@を使って見積り依頼をするなどして人気となっているなどの事例も生まれている」(出澤氏)そうで、今後LINE Payとの組み合わせで、決済もLINE上で完結できるようになれば、新しいビジネススタイルが確立できるのではないかと出澤氏は考えているようだ。

 だが一方で、LINE@を解放すると、公式アカウントからより安価なLINE@へと流れ、広告事業が影響を受ける可能性もあるのでは? という懸念もある。この点について出澤氏は「大手企業はスタンプなどを提供できるメリットから公式アカウントを使用するし、LINE@はやはりローカルでの使われ方が主。使い分けが進んでいるのではないか」と答え、現在のところ影響がないとの見解を示している。

 今後のライフプラットフォームに関する取り組みとして、出澤氏は「LINEのコミュニケーションをキーとし、LINEらしさを提案することで価値が出る事業を積極的にやっていきたい」と話している。今後はゲームに続き、ライフプラットフォームに関連する事業に向けてもファンドを設立し、投資も進めるなどして、取り組みを積極化していく方針のようだ。

 「まずは海外でシェアを取ることと、ライフプラットフォームを成功させることに集中する」と話す出澤氏。それだけに、目標とする2つの取り組みの成否が、出澤氏による新体制となったLINEを評価する上での、大きなポイントになるといえそうだ。

photo LINE@の専用アプリの画面イメージ。LINE@が個人にも開放されたことで、LINEが情報発信手段として利用しやすくなった
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