“不退転”の決意で全てを見直した「Galaxy S6/S6 edge」――サムスン石井専務インタビュー原点回帰(2/2 ページ)

» 2015年04月07日 11時30分 公開
[石野純也ITmedia]
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―― 今回はプロセッサをはじめとして、各部品も最先端にこだわっています。こちらについてのメリットはいかがでしょうか。

石井氏 オクタコアのプロセッサを使うことで、処理の住み分けがより細かくなり、無駄がなくなっています。その結果、実使用感でバッテリーの持ちが非常によくなっています。それ以外にもこのプロセッサを入れた影響は、いろいろなところに出ています。それはボディの薄さであったり、バッテリーの持ちであったり、デュアルコイル(2つの非接触充電を実現するコイル)の搭載であったりです。今、非接触充電が少なくなっているのは、熱の問題が多いのですが、それをクリアしてこれだけ薄くできたのは、処理能力と省電力性が高いプロセッサのおかげです。

photo スリム化と同時に非接触充電にも対応した「Galaxy S6/S6 edge」

 プロセッサは14ナノメートルプロセスで製造されています。これを世界で初めて採用できたのは自社チップだからです。うちだけが実現できたのは、安全で確実な自社部品を用意できたから。チップがほかのメーカーと一緒だと、急所を握られているのと同じです。あくまで仮の話ですが、プロセッサに熱の問題が起きた場合、複数メーカーの端末で同じ問題が起こってしまいます。またチップの需要が供給を上回ると、モノがないと言われてしまい、発売日が延びてしまいます。実際、「GALAXY S III」のときは、チップの供給量が制限され、端末の売り上げが決まってしまった面もありました。

photo 14ナノメートルプロセスルールで製造されたプロセッサを採用。パフォーマンスと省電力性、低発熱性が向上した

 もちろん、他のメーカーのものを使わないわけではなく、そのとき一番進んでいるもの、先をにらんで継続性のあるものを選んだら結果として自社チップになった――ということです。一般論ですが、どのメーカーも社内で調達した部材・部品が一番高いですからね。開発費をそこで吸収してから、外に出す(外販する)と言われていますから。

 また、曲面ディスプレイを実現するフレキシブルディスプレイも今後、いろいろな新しい素材を試していかなければならない。そのためには、何千万台という数で実績を作る必要があります。

 スマホが今のようになるまで5年ほどしかかかっていませんが、そう考えると東京五輪のころはスマホとしての形は残っていないかもしれない。たとえば、ポケットからフィルムを取り出したらそこに情報が表示されたりしている可能性だってあります。そういう将来のことに挑戦する意味での、スタート地点になるものを全部入れたのが、Galaxy S6/S6 edgeなのです。

―― 先を見据えた技術という点では、「Samsung Pay」には驚きました。まさかLoopPayの買収がここで生きてくるとは、と感じました。

石井氏 店頭には、まだまだNFC化されていないリーダー/ライターが多く残っています。その意味で、北米と韓国でスタートするものは実用性が高く、汎用性も広いものです。仕組み上、既存の磁気カードはすべて取り込めますから、小さなスマホの中にカードを入れて持ち歩くのと一緒ですね。

photo 「Samsung Pay」での決済イメージ

―― 日本だと、ドコモのDCMXやKDDIのau WALLETなど、キャリアがクレジットカードビジネスを手がけていますから、そことの相性もよさそうですね。おサイフケータイ版がないau WALLETを登録しておけると、とても便利だと思いました。

石井氏 日本でSamsung Payをどう展開するかは、キャリアさんのビジネスをよく考えながら進めていきたいと思っています。決済に関するいろいろなビジネスが考えられますが、既存のビジネスに影響が出ないよう、どう持ち込んだらいいのか検討しているところです。

―― お話をうかがっていると、危機感が非常に強かったようにも聞こえますが、GALAXY S5の反省のようなものもあるのでしょうか。

石井氏 Galaxy S6/S6 edgeは、ちょうどGALAXY S5が発売されるちょっと前にプロジェクトがスタートしました。GALAXY S5もその前のGALAXY S4もいい商品ではあり、トップに立たせていただきました。ただ、その進化の度合いが過去からの延長線上であることが否めないのではないか? という危機感を抱き始めたのが、GALAXY S5が完成に近づいたころです。良いものですが、次の時代を切り開く提案型の商品になっていなかったんですね。

photo

 市場でトップに立ち、振り向く相手がいなくなったとき、新しいイノベーションにはどんどん挑戦していかなければいけない。ゼロから見直して、新しい挑戦のスタートにしなければいけないと素直に考えたのがGalaxy S6/S6 edgeです。これがGALAXY S5の発売後に作り始めていたなら、もう少しのんびりしていたかもしれません。GALAXY S5のデビュー前にピンときて開発をスタートできたのはよかったですね。

 韓国で途中経過のものを見たときも、今までの製品と込められた思いがまったく違うと感じました。それまで、動くものを半年以上前に作ることなんてなかったのですが、そのくらい切羽詰っていいものを作ろうと思っていたということです。J・K・シンCEOが少年のように、端末を手のひらに乗せて見せてくれたのを覚えています。

Galaxy S6/S6 edgeで原点回帰なるか?

 Androidの中で圧倒的な高性能を売りにしていたサムスン電子のGalaxyシリーズだが、代を経るごとにその特徴が薄くなっていた印象を受ける。他社端末の性能が相対的に上がり、サムスン自身も、ユーザーの利用シーンにいかに寄り添うかばかりを強調し始めていった。同社の発表会である「Unpacked」にはできる限り参加しているが、イベント内容がどんどん“演劇化”していったのも、その頃からだ。

 もちろん、グローバルで見ればサムスンがトップメーカーであることに変わりはないが、以前より同社のGalaxyシリーズを選ぶ必然性が薄くなっていた。こうした状況にかんがみ、原点回帰を果たそうとしているのがGalaxy S6/S6 edgeだ。両機種とも冒頭述べたように「かっこよくて、機能も最先端」という明快な売りがあり、まさにフラッグシップの王道とも呼べる1台に仕上がっている。

 そんなS6/S6 edgeに賭けるサムスン電子の意気込みが、石井氏のインタビューからも伝わってきた。日本での発表まであとわずか。その時が今から楽しみだ。

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